「嫉妬」「絶望」「悲しみ」「健康」「予言」「愛情」「」「」
私は1人で行動することが多くなった。お義父様の命令で、「責任を持て」と言う事を遂行する。建設途中の都市区画に私は監視員として顔を出していた。
喧嘩の仲裁、喧嘩の善悪判断、処罰。個人的な路上での決闘管理。荒事を解決するために私はよく呼ばれた。
そんな中で、私に質問する青年が現れる。オークの少年だった。
「姐さん」
「なんですか?」
「姐さんはどうしてそんなにも強いんですか? 義手義足だけでは理解できないもんですよ」
「私は強くありません。私を越える強さを今は持っていない方々がただ……揉め事を起こしているだけです」
「難しい言い方じゃなくて……ええっと……なんで俺たちより強いんですか?」
「戦い方、訓練、急所への一撃が上手く行っているだけです」
「俺もそれを学べば強くなれる?」
「思考能力も必要です。全員が強くなれるわけではありません」
「だよね……いやぁ……実は俺、オークの都市から逃げて来てたんだ」
「オークの都市? そういえば……オーク族は……鎖国してますね」
「故郷は断崖絶壁の都市です。鎖国というよりは他者に厳しく……弱いものに厳しい世界なんです。だから嫌がって逃げて来たんですが……この通りです」
「燻ってたのですね。話にはお伺いしてます。強さがオーク族の階級と聞きました。しかし……肉体、武芸のみの偏った思考が多いとききます」
「そうです……」
「ですが……オーク族にも『賢者』と言える方々は居ます。大商人のオークも話してみると変わった意見を持つでしょう」
「あれはすごい。一代で成功なさった」
「オーク族は実は狭い世界なんです。強さには種類があり、きっとあなたにも『強み』が生まれると思います。オススメは建築技術でしょうか。技術というのも『術
』。魔術も『術』。武術も『術』であり。極めると変わった視点を持てますよ。難しいですが……」
「あ、ありがとうございます。助言」
「いえ、では私は見回りに行きます」
私はその場を去り、建設途中の砦を見回る。いつかここが……私達の妹たちの故郷になる事に期待をしながらただただ歩き回る。
*
その日は来た。お義父様が私たち姉妹を連れて首都を去るのだ。それは戦への出立を意味していた。元々はもっと遅くの計画だったが。思いの外、私たちの成長と軍備が整い。新たな連絡手段を確立し、妨害さえなく動けるようになった。首都にはダークエルフ族長が目を見張って魔王の動きを監視しており、私にその情報が入るようになっている。
そう、夢を通じ。遠い所に届けられるようになったのだ。お義母様のお義父様の「浮気監視したい」と言う繋がりが新たな魔術を生んだ。そのために、多くの連絡に要する時間が減った。
その事を皆に説明する私とお義母様。そして、理解した姉と妹たちで首都を先に出発する。先行偵察隊である。そして、出発の日。
「姐さん!!」
「はい?」
私は大きな声に止められ、馬車の荷台から降りる。ゾロゾロと人が私に近付き、一人一人が声をかけてくれる。私は家族に先に「いっておいて、追い付く」と言い先に行ってもらう。
「姐さん!! 頑張って!!」
「姐貴、ここは任せてくれ」
「喧嘩仲裁頑張る」
多くの種族が私を送りでわざわざ集まってくれたようだ。私は一人一人の名前を呼びお礼を言う。そして、最後に全員に聞こえるように言う。
「通り場所でも私は見ています」
何人かは震え、何人かは青ざめ、何人かは喜ぶ。その反応に笑みを溢しながら私は手を振ってその場を後にした。走り、家族に追い付き歩く馬車の荷台に飛び乗る。姉妹、お義母様に「おかえり」と迎えられる。
「ただいまです」
「はぁ、お前だけ残っても良かったんだぜ?」
「姉さん、不安そうな顔でしたけどね」
「ばっか、言うなよ。ニィ」
「私はサン姉ちゃんは帰ってくるのはわかってたけど……姉ちゃんたちは焦ってた」
「そうなんですね。安心してください」
「安心したから、笑うなサン」
私は頬に手を当てる。だが、私は笑っていなかった。
「私、笑ってませんが?」
「爆笑だったぞ。お前、表情に出にくいけど……雰囲気はわかる」
「そうですか。ワン姉様」
私は素直に笑った事が姉様にバレる。どんな表情しようと私の家族には筒抜けなのだろう。
「にしても……サンは本当に突拍子無いことするよな」
「そうですか?」
「そうだぞ、一人で何でもしそうだな。本当に」
私はどうやら。いけない子のようです、先生。
*
砦の高台で遠くを見つめる悪魔の男に私は声をかけた。最近になって見つけた彼を俺は黙って会っている。
「先生は顔を見せてあげないのか?」
「あげない事を知って聞く質問に意味はないですよ。エルフ族長」
「義娘は……お前を待っている」
「…………」
「お前に読んで貰うために宛先のない手紙を何通も用意してる」
「…………」
「いつも、目の宝石を撫でて忘れないようにしてる」
「………黙ってください」
「もしも、重要人物並びに協力者じゃなかったら殴っていた」
「………殴ってくれてもいいですよ。それでも会えません。殴った方が気持ちが楽になりますよ?」
「………なぜだ?」
悪魔の男はフードを被り、高台を降りようとする。
「『なぜだ』と言っている。お前は……あの子を大切にしてたから……今、ここで見てるんじゃないのか?」
「……私には眩しい」
それだけを言い残し、彼は高台から降りた。私はそれに対して何も言わず。ただ、ただ娘たちの無事を祈る。無事にこの場所に帰って来ることを強く願うのだった。




