「嫉妬」「絶望」「悲しみ」「健康」「」「」「」「」
次の日、お義父様からギルドカード発行のために妖精国都市ニンフに到着する。エレメンタル族やエルフ族、妖精族などが集まって隠れ住んでいる場所であり、エルフ族長であるお義父様が治める都市である。森の中にある都市なのだが、石や木などで組まれた森の中であるはずなのに一風変わった建物が立ち並ぶ。そして一番大きい城には傘下の妖精姫ニンフが居る。
傘下の理由は「他の妖精がやりたがらない結果、全てを背負わされた」と言う悲しい話らしく。お義父様が助けている。
故に、お義父様の首都で治世をする姫として君臨しており、留守を護る者である。なお、彼女のいる城は氷城と言い。非常に寒いとのこと。
そんな、都市にある冒険者ギルドに私たちは立ち寄る。周りの建物と比べて、こじんまりしたギルドには受付しか居らず。繁盛しているとは思えなかった。ワン姉様が「小さい、こじんまり、ボロ」と言い。お義母様に頭を叩かれる。私もお義母様と同じように姉様を叱る。ニィ姉様も叱り、シィが治める。
「………早く登録してきなさい」
「「「「はい」」」」
お義母様の催促にいい返事を返す。お義母様は何故、こじんまりしているかの理由を話さなかった。受付にギルドカードを見せると「わかりました、作業に移ります」と言い。魔方陣を描き、私の情報を抜き取りギルドカードに刻む。その手際の良さに私は勘づいた。
ここのギルドが小さい理由は「隠された都市」であること。そのため「冒険者」が少ない事がわかった。また、冒険者の代わりに「互助会」「エルフ族長傘下の軍」などがあり、それが冒険者の代わりを務めているのだろうと考えられる。冒険者のような仕事は全て「独占」しているのだ。
では、何故。冒険者ギルドがあるかと言うと。「外に冒険、交易」するためにギルドカードが必要なのだ。だからこそ、私たちも必要なのである。ギルドカードは他の都市に入るために貴重な通行証にもなる。
「発行できました。いい旅を」
「ありがとうございます」
私は発行手数料を払い、お義母様とお義父様の元へ近寄る。無事に発行出来た事を確認後、お義母様とお義父様は一つ二つアイコンタクトをしておこずかいを渡してくれた。
「出発は明日、それまで準備とします。ご主人様とこれから城へ向かいますので……自由時間です」
「え、いいのか!? ママ」
ワン姉様が笑顔になる。それにお義母様は頷き、お義父様の腕を掴んだ。それに私は察する。「デート」と言う事なのだろう。お義母様に引っ張られてお義父様が連れさらわれた。
「ワン姉さん。おこづかいを無駄にしないでくださいね」
「賭け事だめか?」
「ダメです!!」
エルフ族の賭け場は年齢制限、または大人でない方々は入れない筈である。私はシィを見つめ、暖かそうな手を握る。何も暖かみは感じないがシィは笑みを溢す。
「サン姉ちゃん。何処へ行きたい?」
「花屋ですね」
「え、花好きなんだ」
「はい。好きですよ」
特に明るい色の花が好きだ。何故なら先生の腕の中で「これが花だよ」と教えてもらった記憶がある。まだ、四肢がない時だ。
「ニィ姉様、ワン姉様は何処へ」
「俺は……剣と盾を見に行こうかなぁ」
「武器屋ですね」
「そうそう。ニィは?」
「ワン姉さん。私は槍の穂先が気になります。おこづかいで買えないかもしれないですけど、武器屋と言うより……なんと言いましょうか。古武器屋へ行きたいです」
「うーん、じゃぁ私は魔法書店」
姉妹、別々の目的地である。それに私たちは頷き、別れる事にした。合流は夢で連絡を取り合うつもりである。夢魔として試験中の魔法である。
「それじゃぁ解散。散財するなよ」
ワン姉様の号令とともに私たちは別れた。
*
森の中であるが木にならない花は珍しい。それは平原や花畑など広大な土地が必要だからであり、そういう土地は花ではなく畑などになっており貴重である。なので花屋は種子などがメインで売っている場所である。
建物は思った以上に大きく。倉庫のよいな無骨な建物だった。扉は開けはなたれ、多くの種子が並んでいた。造花などでどんな花が咲くを示したり、果実や実など。色んな種類の種子が大量に売られ、交易の冒険者に大量購入されていた。苗木、若木も売られており。大農園の果実、木の実、作物等々も売られており。私はここが商業区だと言うのがわかった。
そんな商業区を使用人服で歩くと、私は目当ての花を見つける。マリーゴールドと言う花の種子を見つけ、袋に手に取る。金額はそんなに高くなく、おこづかいから難なく買える。しかし、私は苦心する。
「買っても枯れそうです……」
旅に出た瞬間に手入れできないため、私はその種を戻す。変わりに花を買えないかと思うと植木鉢で既に育てている商品があり、私は再度悩んだ。そんな私にエルフの店員は声をかける。
「何かお探しですかな?」
「はい、見つかったんですが。少し……悩んでまして」
「その花がほしいのかい?」
「そうですが、冒険者として首都へ旅をする間に枯らしてしまいます」
「なるほど、冒険者の方ですかそれは確かに枯らしてしまうね」
「はい……すみません」
「………君は冒険者として新参だね」
「ええ、よくお分かりですね?」
「交易品も扱ってるからね。鼻がたつのさ。花だけに」
「………」
「冗談さ。にしても、変わった花が好きだね」
「はい、いただいた花です」
「なるほど、プレゼントしてくれた花なのか。では、意味はなんだろうね?」
「意味ですか?」
「花言葉と言うのがあって……『嫉妬』『絶望』『悲しみ』と言うのが有名かな」
「あまり、明るい花ではないのですね。こんなにも明るい綺麗な色なのに」
「そう、結構ネガティブな意味を持ちそれが目立っているけど。他にもあって『健康』『予言』『逆境を乗り越える』『いつもそばに』など。色や種類によっても違うからねぇ」
「………応援されているんですね。私は」
「そうだろうねぇ。そうだ、これもなにかの縁。首都イヴァリースのギルドにこれを持って言ってくれ」
「なんですか、これは?」
「発注書だ。クエストの依頼だよ。首都からの種子の交易依頼でその内容をギルドで出して欲しいのさ。もちろん、君がやってもいいし。送るだけでもいい。それに前払いとしてこれを渡そう」
私は手紙のような物と金貨一枚を受け取った。相場はわからないが、私はそれを義手義足の入った鞄に入れる。
「それと、これも」
私は種の入った袋を貰う。驚いて店主の顔を見ると笑顔で私に語る。
「本来、もっと信頼が生まれた冒険者に依頼するんだが。何故かその容姿と雰囲気で信用に値すると判断した。よろしく頼むよ。封印種子だから長期保存も出来るし、落ち着いた時に撒くといい」
「あ、ありがとうございます」
「君に幸あれ。そして、気をつけてね。君のその容姿は……目立っているよ」
私はそれを聞き周りを見ると、色んな人の視線とぶつかった。それに対して疑問に思っていると店主は一枚の紙を出す。それは手配書であり、私の容姿に似ている。
「君、ネフィア様ではないだろう?」
「はい」
「しかし、それはわかるのはまだ一部。気をつけな」
「忠告ありがとうございます。もう一度、鏡をみてみます」
「はははは、早く行くといい。狙われる前にね」
私は頷き、お礼を言ってその店を出たのだった。受け取った種子に私は想いを馳せる。綺麗な明るい色の花を期待するように。そして、目立ってしまう事を私は知り、おこづかいを「服を買う」事へ使うことにするのだった。特に「首都でも不思議でない服を」と。




