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私たちは姉妹⑥


 私は気落ちしていた。次の日はお義父様がギルドへ向かい、外出出来るようにしてくれる筈なのに私は気が重くなる。嬉しい事があったのに、それをお返し出来ない事が大きい大きいプレッシャーとなってしまい。部屋に込もって手紙を読み返す。


 思い出は明るく輝いているのに、今の私には手に届かない所に来てしまった気がしたのだ。悩み悩み、自身の燃えるような感情に焼かれる心が悲鳴をあげる。


 そんな中で、私は日記を書く。私はずっといつかこの生活を先生に伝えれるように希望として形にしたものだった。そこには非常に丁寧に状況を記す、感情のない字がどんどん感情豊かな文へと変わっていった。


 そして、私は気付かされる。この胸の中の感情はどういった物なのかを。私は日記を通して気付かされる。


 そう、私は「感情」をしっかりと手にしていた。社会性なども培っている。そして、思い起こされるのは姉妹の顔だった。


「………ん」


 私は右目の宝石に触れ、見てきた物の記憶をもう一度思い浮かばせて唇を噛んだ。溢れた感情を抑え込めるように深呼吸し、大きくため息をする。そして、私は気付いた。


「………誰かいるの?」


 寝室の前で小さな呼吸音に気付き扉を開けると……そこには姉妹が非常に申し訳ない表情で立っていた。それはきっと盗み見ていたからのバツの悪い状況に悩んでいる表情だろう。


「姉様方に……シィ」


「ごめんなさい……サン姉ちゃんの事が気になって……お義父様の話からずっとずっと……盗み聞いてて……」


「悪い!! シィに悪用させたのは俺なんだ!! すまん!! シィは悪くない!!」


「ワン姉さんも悪くないです。私が提案して、考えた結果。実行に移したのです。元は私の提案だったんです」


「姉ちゃんが悪くないよ……ずっと盗聴してたの……だから………」


 シィの能力を知っている私はそれに対して、クスッっと笑いが込み上げる。そのまま私は頷き、問いかけた。


「ずっと私は秘密にしていたのが悪いんです。言わなかった私が一番悪いのです。だから、全員悪いので……この問題は無しにしましょう」


 扉を開けて姉妹たちを迎え入れる。全員も笑みを溢して部屋に入り、各々が自由に座る。私はそのまま机の椅子に座った。


「全員、盗み聞いていたのなら。わかりますね?」


「すまん、実は俺は途中からでわからないんだ。泣きべそかくシィとニィが俺に『いけない事をしちゃった』って泣きついてたから。途中でも全くわからない」


「ああ、そうなんですね」


 ワン姉様は普通に一緒に謝りに来ただけの善人だったようだ。私は「それでは」と言い。話し出す。


「私は売り物じゃなかったんです。売り物と言えばいいのか……たぶん『食糧』だったんです。そんな私を掬い上げたのは『しぇんせぇい』でした。喰われた四肢と目の代わりにこれらを与えて、文字、戦闘、そして暖かさなどを教えてくれました。『生きる』ことが出来ているのは『しぇんせぇい』のお陰なんです」


 私は秘密を伝えた。すると皆は一人一人が過去を話す。それは辛い辛い記憶ばかりであり、虐げられていた記憶だった。ワン姉様たちは「奴隷、傭兵」として。シィは「売春婦」として。私は「食糧」として売られていたのだ。


 悲惨な生まれに今の幸福な時間が「本当に夢みたい」だと私たちは言い合い。そして、お義父様とお義母様に感謝する。そんな中で私のお腹が音を立てる。


「そういえば夕飯を食べてなかったですね」


「実は……俺たちも食べてないんだ」


「何故ですか?」


「シィとニィが自責でご飯が入らなかったんだ」


「ああ、ワン姉様はお人好しですね」


 ワン姉様はそこまで付き合ってあげたようだ。


「どうしましょう? 今から用意しますか?」


「ワン姉さん、怒られるかな?」


「お義母様にお願いするよ」


 ワン姉様が立ち上がり、お義母様に会いに行こうとした瞬間だった。お義母様が扉で待っており、私たちは背筋が冷える。


「夜間、消灯時間に4人で何してると思ったら………仕方ないですね。皆さん……『何が食べたい』ですか?」


 冷える背筋が暖かくなる。お義母様は笑顔で答え、私たちは顔を見合わせる。


「俺はお肉がいいです」


「私は……お野菜?」


「私ね!! サンドイッチ!!」


 皆が意見を言うなかで私に姿勢が来る。1票ずつなので私の意見で決まるようだ。だから私は……答える。


「お義母様の……オムライスが食べたいです」


 素直に言うことがこんなに恥ずかしい事はない。でも私は答えた。


「私もサン姉ちゃんと同じの!!」


「俺も!!」


「お義母さん、私も」


 お義母様満面の笑みで頷き、「わかった、手伝ってね」と伝え私たちはお義母様について移動する。私は部屋を去るとき手紙を机にしまい、そして胸に手を当てて前を向いた。「いつか会えると信じて生きよう。今は一人じゃない」と強く意思を持って、感情を認めながら一歩踏み出したのだった。





「ご主人様、夜食とかどうですか?」


「フィア二人きりのときは名前で呼んでいいと言っていたけど? いただくよ」


「……お持ちしました。ご主人様」


「だから、名前を呼びなさない」


「グレ、どうぞ」


「……オムライス? こんな夜中に?」


「はい」


「………わかった、いただきます。で、娘たちは寝たのかな?」


「そこで見てます。『ご主人様』」


「………………………………ごめんって」


 私の目から見るに仲は良さそうだ。




 

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