私たちは姉妹③
「サン、少しいいか?」
「何ですか?」
私はワン姉様と決闘後、仲が少し縮まった気がした。事があることに相談を受ける。相談と言っても他愛のないものばかりで本質は「私の四肢を気にしている」のだ。
「ワン姉様……私の体は元々こんな物です」
「本調子じゃないだろ? 足の動きがぎこちない」
「……」
「気のせいか?」
「いいえ、流石ですね」
私はまだ本調子ではない。失った義足のようにまだ動けない。
「でも、心配はご無用です。これは越えないといけないのです。なれるように使い続けないといけないのです」
「そうか、無理するなよ。俺はそのまま訓練に戻るから」
ワン姉様はそう言って私から離れる。それをニィ姉様はずっとみていた。ワン姉様はニィ姉様と話をし、二人で笑う。しかし、私は……ニィ姉様が無理をしているような気配を感じた。
「シィ……ニィ姉様が変です」
「サン姉ちゃん!? わかるの!? 朴念仁だと思ってたよ」
「わからず屋なのは変わらないです。シィもそう思ったんですよね?」
「えっと……サン姉ちゃん。何があったの?」
「何がとは?」
「ワン姉ちゃんがサン姉ちゃんをすごく気にしてる」
「………義手義足の取り替えに立ち会って貰ったんです」
「ああ、それで……私も最初……怖かった」
「え? 怖かったとは?」
「………………」
私はシィに詰め寄る。
「盗撮してましたね」
「ご、ごめんなさい!! ああ、お義母ちゃんに言わないで」
「ええ、私は言いませんが………」
「なぁに? シィちゃん」
背後に居る、お義母様に背筋が伸びる私達。
「お義母様、どうされました?」
「あなたの義手義足のお届けがありました。そして、私が今日は訓練相手を務めます」
「お義母様が現実で?」
「ええ。テストと言った所でしょうか」
私は身震いがし、シィはあわててワン、ニィ姉様を呼びに行く。
「………軽くでしょうか?」
「いいえ、真剣です。本調子じゃないからこそ……必要でしょう?」
「はい」
実戦を想定した戦いをお義母様は考えている。そして、姉様達とシィが集まり訓練所の温度が上がった気がした。お義母様は右手が炎に包まれそれを振り払い一体の火の鳥を生み、私たちは戦慄する。
「………ごめんなさい。時間がないの」
私たちはその言葉に理解を示す。そう、私たち婬魔はこの時も多くが死んでいるのだから。
*
「あああああいてぇえええええ」
「ワン姉様、落ち着いてください。ただの火傷です」
「染みるんだよ!!」
お義母様の訓練後、ワン姉様が盾役を引き受けた結果。数多くの火傷を負い、遊撃手としてニィ姉様と私が担い。支援をシィの魔法で行った。結果は辛勝。火の鳥を仕留められたがお義母様は訓練所から既に去っており、夕飯の支度をしていた。それについて私達は「まだまだ」だと認識する。
ニィ姉様も痛手を受けてシィに回復魔法を唱えて貰っていた。私はと言うと……ワン姉様に護られていたので傷はない。シィに関しては距離もあってケガはなかった。ニィ姉様は……正直に思うのは少し冷静ではなかったのではなかったのかなと感じる。
「ニィ……けっこう喰らってたけど。お前らしくなかったな」
「……」
「サンもそう思うだろ?」
「私は……『冷静』ではなかった気がします。まるで……この前のワン姉様です」
「……」
ニィ姉様はどこか、悔しそうに無言を貫き空気が重々しくなる。ワン姉様はそれに苛立ち立ち上がる。
「ニィ!! お前!! もう少し冷静になれ!! サンは比較的に護りやすいように移動してくれたのにお前は一人よがりで攻撃してただろやっぱ!!」
「っ……」ビクゥ
ニィ姉様が怒られ、私はシィと二人でワン姉様を背後から取り押さえる。
「サン、シィ!! 離せ!!」
「ダメです!! ワン姉様」
「ダメぇ!!」
二人で抑えてるときにニィ姉様は立ち上がりそのまま走り去っていく。がむしゃらなその行為にワン姉様は呆気にとられて、今度は私たちの怒りが我慢出来なくなる。
「サン姉ちゃん以上の朴念仁!!」
「私以上のわからず屋ですね!! ワン姉様!! 追いかけて事情をシィが聞いて来ます!!」
「お、おう……」
私はシィにお願いする。シィは理解を示し、走っていく。残された私たちはそのまま訓練後の後始末をするのだった。
*
後始末後、ニィとワン姉様の追いかけっこが始まっていた。
「ニィ、待てよ!!」
「来ないで!!」
同じ速度、同じ体力。故に距離は縮まらず。家をぐるぐるしていた。私は予想経路である庭に陣取り、ニィ姉様を迎える。
「サン!?」
「ワン姉様とニィ姉様……意固地になってますね」
元は違う理由で逃げていたのに二人とも目的を忘れて逃げる。追うことを目的になっていた。私はニィ姉様を両手を広げて出迎えた結果。そのままぶつかり合い、庭に転がる。そのまま、姉に私は笑顔で問う。
「捕まえましたニィ姉様」
「……サン」
「ニィ姉様らしくのない『感情』に任せた逃げかただったので簡単に掴まえられました」
「…………」
ニィ姉様は私を見ながら悔しそうに唇を噛む。ワン姉様がそのまま息を整えながら歩いてシィに捕まった。
「ワン姉ちゃんは私と一緒に。サン姉ちゃんに任せましょう」
「え、ああ。そうだな」
その言葉にニィ姉様は複雑な表情を見せたあと、私から離れる。そのまま私は問いかける。
「ニィ姉様……話さないとわからない事は多いんです。ニィ姉様ならわかってらっしゃいますよね?」
「……」
「ここではあれなので……私の寝室に行きましょ?」
「ええ、わかった」
素直に姉様は従ってくれる。運動したあとに駆け足なので相当疲れたのか、大人しくいつものニィ姉様の表情である。私はそれに安心しながら、寝室へ向かうのだった。




