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フォートレス・ライブラリー⑦


 クロとシィを仲間にし、私たちは星の見える望遠鏡が置かれた展望台で端に用意されたソファーに座りながら話をした。情報を私は出し終えたあと、シィが口を開く。


「女王陛下は静観するんですね?」


「はい。それは女王陛下のお考えです」


「それでは……私たち3人でがんばるしかない。読者としていた部隊員は起きています?」


「起きてる?」


 私はシィの何かを感じて、発言を聞き返した。それに答えてくれたのはクロだった。


「読者を放棄。私たちの目標は達成出来たことになります。このまま『帰る選択』を期待するのと『戦力削減』が目的だと思われます」


「私もそう思う。お姉ちゃんはわからないだろうけど、集合体大魔法と言うのがあって、人が多ければ多いほど。効果が大きい魔法もあるの。『黒衛兵は最強の個人』だけど、『部隊は平均化された兵隊』が主なの。部隊行動でこそ光るの」


「わからないわけじゃない……私には必要ないだけです」


「……お姉ちゃん。強いのはわかるけど、大人げない」


「ごめんなさい、意地を張りました。強力な魔法が使えないのです」


「わかってたよ。昔からね……でも、お姉ちゃんでよかった。お姉ちゃんなら打開できそう。『少数精鋭』は突破力は随一だからね」


「そうですね。打開しなくてはいけないのです。敵について情報は?」


「…………あれ? わからない」


 シィが頭を抑えてハッとする。


「記憶、抜かれてる……」


「用意周到ですね。わかりました……私が囮ですね」


 シィ、クロに任せるには荷が重い盾役を決める。腕を失っても足を失っても大丈夫だ。私には既にない。


「お姉ちゃん……ごめん」


「気になさらず。元々、私たちが前でした」


 姉二人を思い出す。私は……姉に勝ったことがない。今なら越えられるだろうか。


「あの、私から一つ。情報を……私はあった事がないんですが。『全知全能』であると言い聞かせてるかのような人物との話を聞きました。多くの力を有していると思います」


「全知全能……」


「お姉ちゃん……大丈夫?」


「……今、接敵するのは得策ではないのかもしれません。情報収集し、勝てる状況を作りだしたいですね」


「お母様……それも言ってられないです。」


 クロが立ち、身構えた。その視線の先には複数人の女性が立っている。獲物は数種類。非常に可愛らしいいろんな種族の女性たちだ。ただ、生気がない。


「クロ、敵ですよね?」


「はい。本の中のキャラクターです。識別……理解」


「えっと……お姉ちゃんにクロちゃん……どういうこと?」


「シィ……本の物語のキャラクターが敵です。その強さは驚くほどです。そして、弱点は『炎』です」


「わかった……詠唱開始」


 私はクロに目を合わせて手を当てる。そのままそれが合図となり、二人で敵陣へ向かった。1人のエルフぽい女性が弓を引き放ち。私はそれに対して義手の腕で矢を弾く。黒鋼が火花を散らし、それが私の魔力に反応して炎を生んだ。それが合図だった。全員が私たちに迫り来る。


「クロ、黒衛兵は如何なる状況にも対応が迫られます。故に一対多の戦いは多くなる。故に我々はその戦い方を海を越えた島国から伝来し、王配が極めた方法を『殺陣』と言います」


「お母様?」


 両手の義手に隠してある黒剣が手の甲から伸びる。毒が付与された私の武器である。それを構えて先行し、クロに告げる。


「陣と言うのは区画、エリア、領地など範囲を言います。そして、その中で戦うために距離をあけてください」


「お、お母様!?」


 クロの驚く声を聞いた後に、私は一人の槍を持った青い髪の女性を槍を弾き切り払う。毒は出血毒なため本に効果はないようだが、切り払う事は効果があったのか。魔物、人間、魔族を切るよりも簡単に真っ二つに出来る。そのまま、流れるように一斬り二斬りと行う。


 数人が一人一人が私を狙うがもつれ合い、その隙を私が突いていく。そして、気付いた時には目の前に敵はおらず、地面には散ったページだけが散乱し、弓射手の女性に私は地面を蹴り上げて突き進み。回し蹴りを行った。


 全員を仕留め終え、一息入れた時にはシィの詠唱は止まり。クロは拍手する。


「お母様、素晴らしいです。なるほどですね。これが……戦い」


「……お姉ちゃん、私いる?」


「いる。今回は上手く行っただけです」


 私は千切れたページを拾う。ページには作品名が書いてあり、それが冊子であることがわかった。長い長いタイトルに可愛い女性複数人と男性の絵がある。タイトルから察せる。あらすじは非常に不思議な作品だとわかった。


「これらがまだまだ襲ってくるかもしれないんですね」


「お姉ちゃん、そうとは限らないよ」


「え?」


「これは……召喚されたばかりで魔法の臭いが残ってる。それも、召喚術の臭いもする。そう、真新しい」


「私にも詳しく見せて」


 私は探査用の魔方陣を描くシィを覗き込んだ。彼女の知識が入って来て、理解をする。それは新しく書かれた本であることが分かり、私たちは一つの結論を持つ。


「「『本を作る作者』がいる」」


 本の読んでもらうためじゃない。本を作る創造者が紛れ込んでいた。そして、その創造者によって……この本の世界は歪んだ事がわかった。そう「加筆」された結果なのだ。


「クロ、理解した?」


「…………理解できました。そうですよね。本を作る者が居ても不思議じゃないです」


「いえ、不思議です。この図書館の中は『保管』する場所で『作成』する場所ではないです。なのに……作られてる」


「私は『複写』しますが?」


「あなたはゼロから作ってない。シィはわかる?」


 シィが杖を置き、呪文を唱える。すると映像が写し出されてある男が写し出された。非常に逞しく、大剣を背負った碧眼の男。その男の周りには今さっき倒した女性パーティがおり、不思議と納得する。


「……『複製』で護衛を用意してますね。場所は?」


「この近く。私との縁が切れて、向かって来てる」


 こっちに来ている事に戦闘が起こることを覚悟する。それだけ腕に自信があるのだろう。回りを見て戦いやすい場所を決めようとした瞬間だった。空間に穴が空き飲み込まれる雰囲気後に何処か平地にある町のような景観へと変わった。風の匂いなど何処か古き時代の趣もある。世界の創造に近い力を感じ、私たちは武器を構えて罠を張る。


「なるほど。魔王軍に洗脳されたか、ルナ」


 声の主は若々しい男の子だ。


「……その、私にはシィ・エルフと言う名前があります。洗脳は貴方の方です」


「待っていてくれ。今、救ってあげる」


 私はゾワッと背筋が冷えた。身の毛のよだつ言葉と共に身構えた足は勝手に動く。


「……君は?」


「サンライト・デビル」


 動き、接近したがすぐに距離を取られた。取り巻きが散り、建物の屋根に登って私たちを包囲する。私の行動で戦いの火蓋は切られる。こいつが「元凶」だと勘が告げるのだった。











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