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フォートレス・ライブラリー⑥


 図書砦は誰か一人が牛耳っている。そう聞いたのは探してる途中で鎖に縛られて封じられた一冊の本だった。その本は何処か達観しており、何も書かれていない黒本だった。


「牛耳っている?」


「そうだ。元々我々はこんなに立派に意識を『持って』なかった。それがなんだ? 『欲深く飢餓』を覚えた」


「あなたは『欲深く』ないのですか?」


「ワシは人を呪い殺す本。名前を書かれた人を殺す。故にこの世界では全く意味をなさない。『読者』を殺せと言うのは皆にいやがられたからな」


「なるほどですね。では、聞きますが……その、一番力がある本は何処にいますか?」


「縛られてるのを解放し、我がページに『ナル・バレンシア』と書くとよい。何処に呪えばいいかがわかる。そして、殺す事はできないだろう」


 私は鎖を剣で斬り、砕けた鎖の山から本を取り中身を見ると赤文字で「シィ・エルフ」と言う名前を見つけて驚く。


「シィ!?」


「ふむ、その名前の読者に心当たりがあるか。そうだろうな。ここに居るのだから」


「私の……妹です……」


「なに、悲しまなくていい。こやつは自力で呪いを払った。私の飢餓を癒した唯一の読者である。都合がいいな、これも運命か」


「シィはどこに居るのかわかるのですか?」


「わかる。『ナル』と一緒にいる。そして……もし出会うのであれば覚悟することだ」


「何を?」


「親族と戦うことを」


「……わかりました」


 私は察して本の指示通りに図書館を進む。摩天楼のような高い高い螺旋階段を登り、到着した場所は非常に凝った空間であり、星を見るための望遠鏡に多くの星を描いた絵、名前などの記された辞書がつまれていた。


 空間は広く、大聖堂よりも広く。そして暗い。窓ガラスから出る星の光だけが私たちを照らす。望遠鏡に座る姿が星の光だけで彼女は顔を見せた。そう、妹のシィが顔を出す。


 女王陛下の顔を幼くした雰囲気の夢魔で、最初の私たちの末っ娘だった。四女と決めれた彼女は非常に甘えん坊であり、そしてそんな瞳をするような子じゃなかった。


「なに? 今は星を計測してる。あの星に名前をつけないといけない」


「シィ?」


「シィ? あなたは誰? 研究の邪魔をするなら『ナル』を呼ぶ」


「私は……サンライト・デビル・エルフ」


 自己紹介する。普通なら、反応するが彼女は全く知らない様子で私に名前を告げた。


「私はルナ。月の乙女。ナルのヒロインよ」


「……いいえ。あなたはシィ・エルフ。私のかわいいかわいい妹です」


「人違いじゃない? 私はあなたを知らない」


 望遠鏡から姿勢を外して特徴的な杖を持ち出し、ローブを羽織る。見た目からわかる魔法使いの姿である。


「研究の邪魔をするなら……消えてもらう」


 私はクロに引くようにいい。拳を握る。


「お母様。妹は人質になってるのでは?」


「お母様? お母様!? え……? あれ。なんで驚いたんだろう?」


 シィが驚いた表情を見せて頭を抑える。そこに私は理解を得た。洗脳である。よくある話であり、珍しくは感じない。


「クロ。まぁ、そうですね」


 私は爆弾を仕込んでいる人質の線も考えるが、こんな場所で自由にさせてることや。ヒロインと言った事を信じてその線は消す。やることが決まった。


「まぁいいわ。星の魔法、ルナの魔法を教えてあげる。星の魔法は……」


 話を始めた瞬間に私は地面蹴って走り出す。ルナはそれに驚き、説明を辞めて呪文を唱えてガラスの星からの光が石となって降り注いだ。その石に私は翼を出し、機械ネジの金属翼で防ぐ。存在しない物質同士の音が響くなかでルナが大呪文を唱えようとする。


「星よ、我が声に……」


 だが、その大呪文を唱えるのに時間は稼げそうになかった。目の前にある、魔法障壁を握った拳で殴り壊してそのままルナに接近するまえに体を回し、後ろ蹴りのように足裏を見せて蹴り出す。蹴った先は全くルナには当たらないが、ルナの体がくの字に折れ、積み上がった本に突っ込み埋もれてしまう。


「ぐはぁ!?」


 そのまま、本の山から這い出してきたルナの顔面を魔力を含んで蹴り上げて上体を起こし、首を掴む。歯車の刻む音が私の義手から鳴り響く。ねじ巻き式の時計のように精巧に作られている筈の義手は全く壊れず。首を掴み続けた。


「ぐ、何者だ!?」


「掴まれても声が出せるなんて立派よシィ。でもね……」


 掴んだまま地面に叩きつけ、ルナが大きい声で痛みを訴える。そのまま、蹴り、殴り。何度も立たせては拳を入れる。次第に高圧的な少女ではなく。涙ぐんだ声が混じる。そして、私は壁に叩きつけて大きく拳を振り上げる。


「ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさい」


 振り上げた拳を下ろす瞬間だった。


「サンお姉ちゃん、ごめんなさい……」


 私の名前を呼ばれ拳を止める。泣いた表情からいつもの雰囲気を醸す出す。


「お姉ちゃん、ごめんなさい、許して……」


「………部隊長であるあなたが洗脳と言う結果に何か? 人質なるなら、舌を切って死ぬ事も必要と教えられましらよね?」


「ごめんなさい、お姉ちゃん……うぅ。私、頑張って戦ったんだよ?」


「結果、負けて洗脳。味方に刃向かい、多くの部下をほったらかし、女王陛下に尻拭いをお願いしましたよ」


「うぅう……女王陛下きてる……そっか……ごめんなさい。お願い許して……」


「歯を食い縛りなさい」


「うぅ……はい」


 シィが手を合わせて覚悟を示す。私はそのまま拳を緩めて彼女を抱き寄せた。


「心配しました」


「お姉ちゃん?」


「安心しました」


「……ありがとう」


「ですが、それとは別です」


「お姉ちゃん!! ぎゃああああああああ」


 私はそのまま抱きしめながら力をいれて締める。そして、ほどよい時間で解放し回復魔法で修復してクロに動くように言う。すると彼女は私を見るなり、首を振った。


「お母様……これがその……えっと……『人質である妹なんて殴れない』『人質なんて卑怯な』とかの展開だと思ったんですが。なんですかこれは?」


「それを説明するには時間が惜しい事。それと、そんな物語なんて戦場にはないわ。私たちはお義母さんから味方に害を成すなら『潔く死ぬ。そういう気持ちでいなさい』と言われているです」


 私は母親を思い出す。そして、身震いする。同じようにシィ震え「お義母さんじゃなくてよかったかも……」と言う。あの天使のような、お義母さんを思い出す。


「シィ、戦える?」


「うん。お姉ちゃん、行ける。お姉ちゃん前衛やって」


「わかったわ」


 私はシィの頭を撫で、クロとシィに挨拶させて情報をまとめたのだった。





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