英魔国ゲーム
私は宅配された調理されたアイゴと骨切りハモと言う魚の湯引きに酢と味噌を使った調味料の酢味噌を食べていた。肴になる料理のため、むしょうに欲しくなる飲み物を我慢している中、私の部屋に人が現れる。
エルフ族長の代理のエルフ族の成人である。名前はシャドウ。最近、駐在員としてこの王宮に駐在している。
「また、珍妙な物をお食べになってますね」
「美味しいですよ。エルフ族には少し……あれかもしれませんが」
「いえ、本当に庶民的なのがお好きなのですね」
「あなたの上司もでしょう」
「族長もそうですね。昔はもっと煩かったですが。今はすっかりジャンクフードばかりとお聞きしております。世間話もここまでですね。エルフ族長が夢でおよびです」
「あら、わかった。行きます」
「それと、この書類関係にサインをお願いします」
私は書類を受けとるとサインする。『王宮拡大工事承認証明書』である。最近、王宮が大きく大きくなっている。私の住む場所はそのままに。鉄の釘やら板やらを持って来ては景観そっちのけで拡大されている。まぁ、私は別に気にせずにお任せしている。
「では、夢で会いましょう」
「よろしくお願いします」
私に相談とはなんだろうと思いつつ目を閉じた。すると殺風景の白い空間に、エルフ族長のみが立ち、私を迎え入れてくれる。
「ようこそ、女王陛下。戦場へ」
「こんにちは、エルフ族長」
「こんにちは。女王陛下」
エルフ族長は珍しく弓を持った状態で立っており、私は首を傾げる。
「なにか?」
「はい。戦場と言いました。あれをご覧ください」
エルフ族長が指を差す先に私が立っていた。しかし、顔は幼く。まだ、年端のいかない少女である。無垢そうなそれでいて勝ち気な少女。私は顔を抑える。その姿はもう。思い出すのも恥ずかしい。
「余がネファリウス!! 覚悟!!」
トキヤに貰った剣をまだ扱いきれてない、たどたどしい姿に私は叫んだ。
「いやああああああああああ」
黒歴史。とにかく恥ずかしい時の私である。無知であり、自信満々で愚かで……思い出すのは恥ずかしい時代の。
「女王陛下、ご無礼を」
エルフ族長はそういいながら弓を引き矢を放って昔の私の頭を射ぬく。そのまま昔の私は消え、そしてエルフ族長が深い息を吸い込む。
「過去の女王陛下と戦える夢です」
「私と? なぜ?」
「学園で最強は誰か論争が白熱して、結果。夢で過去の再現を行い。その当時の強さを調べた結果。今は夢で戦う事が出来るようになりました。そうこのように」
エルフ族長が指を鳴らすと今度はダークエルフ族長が現れる。そのまま、エルフ族長は弓を引き放つとダークエルフ族長の眉間に刺さる。
「過去の彼は弱い。今の彼とも戦えますが、説明なのでいりません」
「……私を呼んだのは何故?」
「具体的に許可を。女王陛下を模倣した夢の用意の」
「……それは多くの方々に私を『倒させる』と言うことですね」
「危険は承知ですが。人は愚かです。試したい生き物……それにダークエルフ族長の心残りなのです」
「……負かしたからね」
あの当時に比べて私たちは強くなった。試したいのだろう「武人」と言う者は。
「もちろん、私やダークエルフ族長。黒衛兵面々も参加予定です。よろしいでしょうか?」
「許可をしましょう。私を倒せる者がいればそれでいいです。絶対の独裁者になるつもりはない。最後の安全装置は必要です」
「ありがとうございます。では、書類も試供品も全て提出します」
「はい」
私は頷き夢から覚める。そして、部屋の真ん中で天井を見つめる。いつか、私を倒せる者が登場するだろうと考えながら。
*
一週間後、魔石に私が許可した話の広告が流れる。
「エルフ族長から、夢魔石が発売!! なんと、あの英雄と一騎討ちが出来る夢のような魔石が登場。そして!! 英雄の辿った道を追想出来るストーリーモードも実装!! 数量限定特典はなんと!! 女王陛下の夢魔石もついている!!」
そして、またまた時間が立って広まる。野球の合間に流れる広告などによって、決闘石と言われるそれは大いに流行った。そして、流行った結果。攻略情報等々で多くの苦情が私の耳に入る。
「理不尽」
「どうやって勝てって言うんだ」
「見た目に騙されるな。中身は奈落の王やぞ」
「初手、大量破壊魔法ぶっぱの頭オカ」
「開幕リスキル」
「魔石を投げ捨てるレベル」
「第一段階の女王陛下弱いだろ? あれ、油断誘って第二段階で殺しにくるための布石なんだぜ。で、第三段階がある。ふざけてる」
「ダークエルフ族長でも匙投げた魔石」
「黒衛兵も大概ヤバい。なお、その全員が束になってもクリア出来なかった女王陛下の魔石。物を売るってレベルじゃないぞ」
「攻略方法は一つ。買わない、やらない、諦める」
散々の言われように私はエルフ族長に苦情を入れる事を決めた。結果、夢の私は弱体化された。なお、弱体化も不評だったらしく。結局、私の決闘石は非売品になった。そして、私はコメントを求められ答える。「私は悪くない」と。
本当にいい迷惑な事件になったのだった。




