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友人の往来


 私は調子を取り戻しお腹が大きくなって目に見えて妊娠してるのがわかる。そんな時期に王宮の部屋に訪れた友人の3人。友人の異世界の神、アンジュと昆虫亜人族長のリディア。エルフホワイトスワローズの主砲を務めるウィンディーネが顔を出した。報告して耳を当てるウィンディーネとアンジュは確かに魂を感じ取っているようで。私は笑みを溢す。そして、不思議な昆虫亜人族の出産状況を聞いた。


「それにしてもリディア……あなたも子供出来たのでは? トキヤから聞いてるけど大丈夫なの?」


「用意した繭に胎盤から出産し丸卵を括ってます。繭は頑丈でそのまま大丈夫なんです。お腹大きい時は動けませんでしたけど最近は出したので大丈夫なんです」


「そうなのね。卵生はいいなぁ。動けるんでしょ?」


「動けるようになったのは……治安がいいからです。ワーム、同種族の託卵とかで卵は狙われるので……本当は離れられないんです。鳥人族のように託卵所の整備を進めてるんですが、まだ少ないのが実情ですね」


「……族長の仕事が板についてきたじゃない」


「保育所、託児所、託卵所、孤児院の……所長兼任なんです。忙しいです。我が子どころじゃないんですぅ」


「そうなの……私の子も預けれる?」


「無理ですぅ。予約者だけで一杯一杯ですぅ。従業員雇っても場所が全然ないんですぅ。取り合いです」


「そ、そうなのね」


「昆虫亜人族は両働きが基本なんです……」


「はぁ……じゃぁどうするの?」


「土地買収中です。資金だけなら莫大です」


 昆虫亜人族は飛べる種族も、耐久性も強い種族もいて、働き盛りが多いのも特徴だろう。それらが寄付という名前の税金を納めるのだから、莫大な金額だろう。また、ダークエルフ族長の元でも衛兵として勢力が拡大している。


「なんか、大変な事になってきたなぁ……アンジュはまだなの?」


「ぶふ、ゲホゲホ。ネフィアお姉さん……ま、まだです。ウィンディーネもまだ、だもん」


 紅茶を吹き出した彼女はハンカチを使い。拭き取り、大きく背伸びをする。ウィンディーネはそんな事も気にせずに今を語る。


「私たちは子供なんて……そうそう作らないです。分裂で増えるか、勝手に発生してます。世界の数だけ居るんです。でも、引退後はわからないですね」


「引退できるの?」


 私は疑問を口にした。


「……球場外で初めて。体の疲れとガタを知る。確実に私は摩耗してる。剣を何回も使ってるとガタが来るでしょ? わからない小さな刃こぼれ。それが重なって……使い物にならなくなる。どんなに頑張って整備しても、どんなに頑張って刃こぼれしてない場所で斬っても……いつかは私はバットを握れなくなる。魔力も減ってる」


「え、そ……そんなにしんどいの?」


「毎日、試合があるんですよ?」


 そんな状況なのを私は初めて知り、アンジュは眉を歪ませる。


「なんで、休まないの?」


「……バカね。それは自分で考えろ」


「…………そんなに良いもの?」


「……………ウィンディーネの種族で生まれて来たことを感謝するぐらいには」


 その顔は達観しており、昔の無邪気だった彼女の影はなかった。今は……歯を見せる顔が兵士の顔であり、魔物のような表情だった。人は変わるが変わりすぎである。


「大変ですねぇ。アンジュは大変?」


「……………えええと」


 その空気に私は笑う。平和なのだろう。向こう側は。


「世界で内紛、戦争、競争激化してる」


「げほげほ!! あなた!! ここで油かいてていいの!?」


「正直、今の不公平を私は公平性があると考えてる。手を加えず。見届けながら、途中で間違いを正そうと思う……大丈夫。このまま数個の大きい国が生まれて冷戦なると思う」


「とんだ神様だこと……」


「関わったら負けだと思ってる。だって……関わって良かった事がない……関わるのは最後の日まで」


 私はそれに「確かに」と思う。人は愚かにもずっと戦う種族。戦争は悪友で、時に悪友はヘソを曲げて襲ってくる物なのだ。そして、それは邪魔されると成長し神を殺す剣となる。


「だから、余裕。しかし、子供とか考えると……私は作れないかな。絶対に不幸なるもん」


「不幸かはその子が決めます。世界は不平等なので……生まれる母親は選べず。父親も選べない。私のように」


 私は私を皮肉る。魔王の末っ子で売られた子なのだ。考えてみると立派なシンデレラストーリー。骨の表紙と血のインク。皮ページに神の頭をアクセサリーにした本ではある。


「うわぁ重たい。重たい」


「重たいですね。お昼まだでしたよね? そこに『天楽街』があります。私の名義では無料ですので……何か注文取りますよ?」


「まじぃ!?」


 アンジュが驚く中で、ウィンディーネとアラクネが私が用意した天楽街のパスポートを眺める。素直に商品を決め、私は連絡を取って持ってきてもらう。ウィンディーネが笑いながら、店の話をする。


「本当に不法選挙問題だったのにねぇ。エルフ族長等々は使用禁止例出してたのに」


「ウィンディーネ、あなたは噴水から登場して食べ回ってたって聞くわ」


「有名人なのでね。泉ある所、何処でも現れるわ」


「それで今は……裕福に?」


 ウィンディーネの服装は質素とは言えない豪華な装飾過多な服装である。


「エルフ族長の服屋の衣裳。宣伝用。スポンサーなの。あとバットのオリジナルレプリカがいい売上出してる」


「あのクソおもいバットがぁああああ?」


 アンジュが不満を溢す。バットのルールは最低重さと大きさだけが決められており、それ以外は好きにできる。種族の大きさで基準が決まり、今の定説は大きい種族はパワー系だが、ストライクゾーンが広く。三振など投手有利。小さい種族はストライクゾーンが狭く打者有利。だけど、小さい種族は小回りきくがパワーがなく外野まで飛ばせにくく。体の小さい分、内野は大きい方がいいと言われている。なお、定説であり、リーグではその定説を覆す選手がおり、それらは絶対な人気を誇る。


 ウィンディーネはその一人である。


「硬いし、重いからいいの。それに、軽いと困る」


「ウィンディーネはパワー系ですからねぇ」


 私は染々とこの前の逆転ホームランをされたのを思い出す。リーグは3強、3弱の様相で、オーク、リザード、ダークエルフの3チームが首位攻防し。3チームが最下位争いをする。この上位3チームの特徴は金で選手を買い込んだチームである。


「最下位争い中だからね……」


「ウィンディーネ以外、全員負傷者続出なのよねぇ」


「腹抱えて私は笑ってる。やっぱオークジャイアンツが最強」


「アンジュ……お前……そっち側か」


「そりゃそうでしょ。うちの世界で一番見てるのあそこのチームだけなのよ? わかってる?」


 アンジュの世界では一応、盗み見る場所があるらしい。なお、貴族の遊びであり。まだまだ浸透は程遠い。アンジュの世界の盗み見る魔法使い、世界を知る一部の人間たちパワー史上主義なのだろう。リディアはそんな私たちの口論を遠くで眺めてボソっと言う。


「あらあら、ダークエルフ族の品のある野球じゃない野蛮なチームですこと」


「リディアはあのチームがいいのね」


「穏やかに見ていられますから。うるさいの嫌なんです」


 それにウィンディーネが悪態つく。


「貴族御用達のチームが……ぺ」


 ダークエルフ族長のチームは非常に貴族系、金持ちなどに人気を出した。また……格好いい牡種族が多く。黒衛兵なので非常に規律など戦う衛兵のようなチームだった。


「まぁ……皆、好きなチームがあると言うことで」


「なんで友達のチーム応援しないのよ!? エルフホワイトスワローズの何がいけないの!!」


「オークジャイアンツじゃない」


「エルフダークドラゴンズでもないです」


「タイヨウスターホエールズのような星の煌めきを感じない」


「うぐぅ。アンチどもめ」


 ウィンディーネがガックリと肩を落とす。まぁ……仕方ないとも思える。


「まぁ、クンカ王子が……オークジャイアンツにいるしね」


「あの裏切り者め」


「対戦成績いいでしょ? 3割3分3厘でしょ?」


「申告敬遠」


「戦う必要ないもん。帰って来ないし」


「ふぁあああああああああああああ」


 チーム事情が火の車。何故、そうなるのかと言うと……体に難ありの選手を揃えたからだ。他のチームで基準が満たない。そんな選手ばかり集めた。頑丈なのはウィンディーネだけである。発狂する彼女に私は笑みを向け続ける。


「「「そのままでいてね」」」


「うがぁあああ」


 そうこうしていると、出前が届く。私はそれをテーブルに出して食事を始めた。本当に平和な時間が続く。あの硝煙の臭いを忘れるような。





 

 

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