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世界は変わっていく


 最前線でこの前まで機械のゴーレムに乗って、特徴的な拳銃と小銃をもって戦って世界の命運までかけた大事件に巻き込まれた私。しかし、そんな私は妊娠を期に前線を退いた。


 いきなりの静穏、いきなりの後方への移転。故に私は暇をもて余す。暇は大敵であり、私の死産などをフラッシュバックさせて苦しめる。だからこそ気が紛れる何かを求めた。結果、野球観戦と魔石にある暇潰しに流れる魔国内情勢を婬魔だろう女の子の声を聞いていた。


「朝の報道です。族長連は『旗艦・ガルガンチュア』の一般情報を公開を決定しました。族長連の声明には『運輸事業者の労働力向上、労働時間の短縮、有翼種や空を駆ける魔法使いなどの不平等改善』の狙いがあるようです。その声明に大商人・トンヤは賛成し、技術委託を受けて既に製造拠点が作られています。これに対し、運輸労働組合は『仕事が減る。賃金の低下』と言う恐れから反対を表明しており、族長連の説明などを経て理解を広めるようです」


 魔石から流れる情報に私は驚く。まるで、旧人類地下街のような情報発信力に時代の急速な進化を目の当たりにする。この前の魔石の情報よりも丁寧な情報発信である。


「いや……え……いや……すご。そんな事になってたの……労働組合? なんぞ?」


「次のニュースです。多くの種族間による婚姻などにより、生まれにくいとされていた異種族同士の子供などが爆発的に増える事が懸念されており、父母共に働く家庭。出稼ぎなどの家族間が離れての育児が考えられるため。託児所の増設や場所の必要が迫られてます。これに対し、族長連含め、全ての英魔ギルド長による。ギルド託児所、族長託児所、幼稚園が併設される事になりました。今は数も少ないので逐次増えていくと思われます」


 私はふと考える。私は「育児をお任せする立場になるのだろうか?」と。ただそれはお任せする事は確定で「次期魔王」になる教育が施される事は必須だった。我が子よ……本当に大変な事に。


「学校の増設に関してニュースです。最近、修業前学問として義務化された授業が決まりました。算数、道徳、国語、社会になります。族長のテスト結果によって族長が必要と思われる授業です。なお、族長もお勉強中です」


「ほえぇ………」


 色んな情報がドンドン流れていく。淡々と語る口から中立である事が伺えた。


「注意喚起です。怪盗が現れて強盗被害が相次いでおります。お気をつけてください。怪盗は巧みに姿を変える能力者です。では、次のニュースです。速報です。敵対で分離政策で関わって居なかった種族。シェイプシフターが英魔国民に編入したいとの申し出により、編入手続きが始まりました。シェイプシフターは反女王派、反族長派であり、距離を取っていたのですが……若者の流失、脱走。経済の悪化。食糧危機など。苦しい情勢だった模様。このため、反女王派、反族長派は力を失い。支援を求めていた事がわかり、無事編入手続きまで進んだようです。これからは交通網と販路、ギルドカードなど。英魔国民として護られる見込みです」


「………えっぐ」


 そのまま、今度は族長会議の生の声が響く。族長以下何百人の議論は白熱していた。メリットデメリットや、対応策など。色んな出来事の問題を解決していく。投票で反対可決。賛成可決など。色んな物が決められていく。私はそれを聞きながらも、私の要らない世界に何故かホッとした。


「私が居なくても回るんですね」


 望んだ世界、望んだ状況になっていく。プレッシャーも軽くなり背筋を伸ばした。そして……いきなり声が響く。


「女王陛下、族長たちから会議です。眠っていただきます」


「………はい」


 私は椅子に腰かけて目を閉じると。一瞬で夢へと導かれ、会議室に座らせられた。9人の面々は既におり、私の第一声を待つ。


「会議中では?」


 これに答えたのはエルフ族長だった。


「緊急会議ですので、私たちは抜けました。それに私たちの票も1票にしかなりませんから。お任せです。それよりもスパルタ国内で反乱があったようです」


「………それで私に話をする理由は『恩』を返すべきかどうかと言う話ですね」


 過去、剣闘士を解放してくれた恩がある。


「そうですね。実際は多くの兵をいただいたし、今では必要人材です。しかし、向こうから助けて欲しい旨はないのでしょう」


「ありません。打診はしたのですが問題ないの一点張りです」


「………」


 私は悩む。族長が集まって会議しているのは非常に大きい問題だからなのだ。私は発言を聞く。


「状況は?」


「反対勢力は『奴隷解放』の結果でスパルタ国内は労働者不足と経済悪化が強く出たため、王反対者が増えました。そのまま『奴隷制度復活』を目指しており、密約で反乱成功時に『国家政府承認』を打診が来てるんです。助けてあげた恩の見返りに。しかし、同じ事を帝国側にも打診し、裏で糸を引いてるのも向こう側です」


「王派は?」


「もちろん、断固反対です。しかし『親魔国派』と『中立派』が争い。まとまっておらず。王がこちら側なので、『中立派』『帝国派』に嫌われてしまっているのが現状です」


「3すくみ。それで行動を起こしたのが『帝国派』ですね。我々にとっては帝国と国境が接するのが安全的にいけない事です。接するリザード族長の意見は?」


 私は蜥蜴の族長に聞く。彼は笑顔で答えてくれた。


「昔から敵だったわけなので。昔に戻るだけです。逆に『軍備費用増額理由』が出来るので……他8人の族長がいい顔をしないでしょうね。不公平だって」


「敵を作れば頑張れる訳ですね」


「昔からそうだ。我々はな」


 仕方ないと言う表情をする。


「他に意見は?」


 私は話を振るとダークエルフ族長が答える。


「俺の意見だが。まず『帝国派』の『国家承認』は『魔国人奴隷制度復活』を支援するので筋が通らない。逆に『親魔国派』はそのまま属国のような扱いになると……戦争で前線となってスパルタ国を救う同盟関係で戦うため。そこがどうかって意見が必要だ。『中立派』に関してはどっちつかずで緩衝地帯として役割を生んでくれる。俺が考えれるのはこれだけ……で、これを踏まえて……どうするか?」


 ダークエルフ族長が質問し、皆が唸る。そして、私はそれに対し……最悪な手段に出た。


「本人に聞いてみましょう」


「「「「「「?」」」」」」


「スパルタ王!!」


 私は彼を呼びつける。もちろん、強制的な方法で。なお、彼は普通に現れて大いに驚かせる。周りの族長も驚き、慌てる。


「こんな忙しい時になんだぁ? おうおう、ネフィア王」


「スパルタ国内、3つに別れてますね。どうしたいですか? 助けはいりますか?」


 私の問いに彼は満面の笑みで答える。


「そうだな……俺は戦う。闘い続ける。だから、俺に従った奴に生きてて欲しい。恩を返す方法はそれだ」


「わかりました。一都市でいいですか?」


「くれるのか?」


「新しく作るんです。国境付近に」


「ははは、前哨城ってわけか」


「もちろん、その都市の所有権はリザード族長。実権はスパルタ王です。出来るかはわからないですがね」


 私はリザード族長に顔を向ける。彼は願ったり叶ったりの表情で答えた。


「妥協案としてはいいんじゃないか? もちろん、前哨城は一番危ない。そのリスクを負うことになるがな」


「がははははは……国内で処刑されるよしましじゃな。ワシは忙しい。あとは政治家同士でうまいことやってくれ」


 そう言いながら彼の体は薄くなり、消える。私は今の意見でいいかの投票を行い満場一致で決まる。


「では、新都市開発ですね。スパルタとつけましょうか」


 私がそう言うと同時に目が覚め、部屋の中で伸びをする。


「あーあ、やっぱ。結構……私っているんですねぇ」


 議会の誘導、折半案、調整案を行うのに必要な族長の上。最後の最終の決を私はとらされる。族長が比較的公平性な立場故に。


「まぁ、昔の魔国より………いいんじゃないかな」


 私は私の理論でそう結論付けるのだった。そして、人は動かないといけない事も考える。


「マグロ食べたい」


 動き続けないといけない魚を思い出す。平和ではないが穏やかな時間が過ぎていくのだった。



 

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