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女王居ぬ間に不法占拠


 私は不思議な現象を目の当たりにする。女王陛下としての雑務はほぼなく。権力剥奪による決定権が族長に移っており、手紙での支援のお願いを行った。その返事待ちの間に今の王宮を眺めていた。王宮内で不法占拠による出店が繁盛していて、非常に騒がしい。しかし、追い出すのも忍びないため、私の区画を区別して立ち入りが制限するだけにした。知らぬ間に工事もされていたし、王宮の半分はレンガと接続材料による工事も行われ、また王宮の景観を損なわないように白い材質とし……非常に綺麗な銀白色の金属のパイプが走っていた。


 何故、「不法占拠を取り締まりがなかったのか」と言うと。特別地区である王宮。私の私有地であり、私たちが不在なため通報されず。また気付いた時には立ち退きを拒否し、一悶着。私が帰還後は……代表者との話し合いで多くの利権とともに話が決まった。


 不法滞在は私が家賃を受け取る形で契約書を交わし、合法化。賃貸改造費は全部、天楽町組合が取り締まり考えるそうだ。天使のお小遣いも絡んでおり、入場管理者である故に、グループ化していた。


 結果、知らぬ間に私は膨大な富を得ていた。家賃料金、家賃滞納の延滞金などを取り交わした結果。合法化して、エルフ族長などが全く手が出せなくなった。


 私は思う。「こいつらグレーゾーンなど詳しく。ずる賢い」と。そして何故、そうなったのかと言うと天使側の空土地とエルフ族長側の空土地。聖域で出せない店が禁じられていた事、エルフ族長、天使側の許可証が全く出ない事がネックで困った空の飛べる種族がここに逃げて、いつしか店を出したのだ。


 まぁ、大きい大きい王宮。家族で使うには難しいし土地あまりだったために有効活用と言える。そして、出店の種類も面白い。


 販売が許されざる物は肉などが多く。景観を損なわせるような物ばかりだった。焼き物、練り物。そう、多くの都市にある表通りでは出していない。裏通りの闇市のような感じなのだ。


 だからと言って不味いわけではなく。露天の居酒屋として、非常に手頃な価格で翼有る種族で賑わっていた。


 そんな不思議な光景の中で私は変わった出店の席に座る。パンパパンと言うふざけた名前の店だが、メニューはサンドイッチなど、軽食系の商品が多い。天使がお持ち帰りで買っているのも見えた。


「女王陛下、はい。チーズ入り卵ベーコンホットサンドと紅茶ね」


「ありがとう」


 手際よくホットサンド用フライパンを何個も使い。ドンドン作っていく背中に翼の生えた鳥人族。鷹のような足の爪が鋭く。その眼も鋭い。火加減を見る眼は職人のそれだった。ホットサンドはベーコンの燻製の風味と甘さ、卵の豊かな風味。チーズの濃厚な香りが口に広がる。


「うまぁ……それよりも。こんなに人がよく集まったねここ」


「そりゃ、休憩地点だからさ。都市内で降りる順番が非常に長くなったこと。そのまま飛んで行くにはお腹が空いてた事や途中、降りるのも大変だから。飯を買える場所が必要だった。結果、ここは停泊地として……こっそり休んでたのが……いつしか悪さを始めたんだ」


「儲かるからねぇ」


「そうそう。まぁ、最初にやった奴は流石に怒られたが……トンヤのあんちゃんがスカウトで大量に送り込んで……今の状況ってわけだ」


「……トンヤ。お前がやったんかい」


 あの、商人。マジでしたたか。


「が、俺たちはそのまま。天使も買収して……こうなったわけだ。有天町は天使発案だからな」


「堕天使だなぁ」


「天使も、ギトギトの油による料理と。悪酔いするお酒が飲みたいんだよ」


「この店の商品。そんなのないですけどね」


「たまに夜中はやってて、まぁオリジナルを出してるよ」


「ほえぇ……どんなの?」


「夜中にたまにやってる日に来て下さい」


「商売人やねぇ~」


 もきゅもきゅとご飯を食べ終え、紅茶をすすり。屋台の席でのんびりして思案する。


「ちょっと考え事するから」


「わかりました」


「店主ぅ~予約したの貰いに来た」


「はいよ」


 天使が昼ご飯として受け取りに来ているのを横目に考えを巡らせる。お代を受け取り、安い名前のついた布にくるまれたサンドを天使は鞄に入れて持っていった。そんな中でも私は疑問を順繰りさせる。「魔法」「魔力」は何処から来たのだろうかと言う問題だ。


「ふむ……」


 私は過去を知る。過去の世界を知っているため。疑問に思ったのだ。過去には絶対に「魔力」は無かった。そして、魔法使いなんて言う者もいない。事実、人は弱く。22ミリの銃弾で死ぬほど弱く。また、空なんて飛べない。


 では、何故。そんな人が強くなった物質が誕生したのかはわからない。そう、元からあったのなら。元から観測される筈。


「むむむ」


 もっと深く考える。英魔国人は過去へ渡航し、未来に影響を与える事が出来る。これが事実とすると、過去に技術を送る事も出来る。そして、それが蒸留されて今になる。そんな考えをしていた結果。私は私個人の答えを得る。


「そっか、これは……異常な時間背理。事実は魔法がある。魔力がある。では、それは何処から来たのか発明者。観測者は『誰か?』となる。答えは『誰もいない』が答えなんだ。魔法書を貰った人はそれで魔法、魔力を世界に生む。そのまま、貰った人は過去の自分に魔法書を渡す。では、その『魔法書』の製作者は誰になるか? それは誰でもない……」


 私なりの答えは非常に筋が通らないようで、それが筋である事を示し、嫌な納得をさせる。逆に最初に始めたのは「誰」と決めつける場合。運命司る神様となる。


「納得した。よし、モヤモヤも消えた……会計は?」


「天楽町から貰うから。はい、領収に記入して」


「はい……紙を贅沢に使うわね」


 渡されたのは鉛筆に色のついた紙だ。蒸気街の紙より質も色も数段下がる物だ。


「海側のスライムが量産してるから、価格下がったんだよ」


「へー」


 私はサインし、そのまま席を立つ。一人でわかった気でいる結論に満足し。そのまま、天楽町を眺めて歩き。挨拶をしながら部屋に帰って来た。


 するとそこには……彼が帰ってきている。


「おかえりなさいトキヤ」


 挨拶を済ませると彼は椅子に座り、あくびをした。


「ただいま。いつの間にか渡り鳥たちの休憩地になってるなここ」


「まぁね。管理もしっかりしてるし、いいんじゃない」


「そうだな。で、病院は?」


「一応、問題なし……」


「そっか……そうだよな……」


「なに?」


 トキヤは鼻を掻きながら立ち上がり、そのまま椅子に座る。


「ネフィア……誰とも合ってないんだな」


「ん?」


「エルフ族長の奥さんもめでたいらしい」


「それは良かったですね」


「エルフ族は中々、出来ないからな。奇跡に近い。で、ランスの家も繭を作り出してる」


「あら、そうなんですね」


「ダークエルフ族長も」


「……………トキヤ」


 私は色々聞きながら冷や汗が出る。


「今、皆は夢を見たらしい……白い翼が降りてきてそれを受けとると手に赤子がいて。それで目が覚めたと」


「……ほう」


「心当たりないか?」


「ありますねぇ」


「ネフィア……あの魔法。実は……」


 私はあの膨大な魔力で何を成したかを察した。一人二人ならいいが……どうみてもそんな事はない。これは報告してあげないといけない。


「トキヤ、族長に報告は?」


「もちろんする。そして、これから起きるヤバい事もな」


 私は背筋が冷える。考えられる事は一つ。


「族長含む婚約者争い」


「そうだ、ネフィア。族長には言ってるが……多くの縁談が来るだろう。生まれてくる子は直系の跡取りだ」


 お腹を撫でながら……生まれてきた時代、時期、立場の違いに不安になる。この子の未来は「重い」事が決まっている。生まれる前から決まった人になるのだろう。


「……許せない。私はそれを許せない」


「しかし、ネフィア……」


「この子は必ず。自由恋愛させる」


「わかった。わかった。お前はそう言う奴だからな。どうなるかは二人で見届けよう。それよりも……お腹の声を聞いてもいいか?」


「……まだ聞こえませんよ」


「いいや。魂だけなら聞こえるさ」


 彼は私のお腹を擦り、なにかを聞き取る。私にはわからない方法で聞き取るのだった。
















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