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女王の膝上


 蒸気街から、量産品の機体を買い。緊急で首都に帰宅した。そして、私は緊急入院を行う。貧乏神の病院ではなく。首都の上空にある複数の浮いた大地の中心、聖域の中にある。その天使の病院に私は入院し沢山の検査を行う。


 窓の外は青空が広がり、聖域故の澄んだ空気と綺麗に整備された植物達が魔力を放出する。運搬員がひっきりなしに荷物を持ってくし、緊急搬送される英魔も多い。


 あまりにも家族の健康や生活を向上させるために実施する施策が上手くいっているのが見てとれた。


 そして、多くの英魔が緊急搬送されているが続く。それが何故かと言うと首都の上空にあるこの病院は緊急搬送が主な病院らしく、そして振り分けがされていた。天使たちの目は隈が多く。「医者の不摂生」が見てとれる。天使が倒れるのも見ていたし、人手不足なのがわかった。


「………女王陛下。健康には問題ないです。生後1ヶ月もたっておりません。これからですね」


「は、はぁ……ありがとう」


「それではお大事に。女王陛下は自宅療養です。オーガ族のヤブヘビ医師会が周りますのでよろしくお願いします」


「わ、わかった」


 トキヤは帰って来てから貯まった仕事を消化し中で私は言われるままにしている。隈がある天使の医者に「ベット開けてください」とせっつかれ、私はそのまま退院し「子供手帳」を貰う。医者が一瞬でわかる情報が全部詰まっているらしく。通院はこれを持参してらしい。私は通院ではなく。特別な訪問診察をしてくれるそうだ。


 荷物は既に郵送済み。私は自分の翼で王宮に帰る。王宮には護衛の天使がおり、私はそれに挨拶を済ませて家に帰宅した。


 宅配貯蔵庫には食料品が保管されており、無事に届けて貰った事がわかる。ブレンド香辛料などもあり、しっかりとご飯が作れそうだ。


「滅茶苦茶……便利な世の中になってる」


 空は飛べる種族の運搬員が仕事し、膨大なお金が動いていた。お金に関しても手形と言う物が使われており、硬貨不足が囁かれている。


「硬貨問題も議題になってたわね」


 硬貨は重いため紙幣を刷るつもりとも聞く。世の中は大きく大きく変化する。加速度的に。


 家に入り、靴を脱いで荷物を整理する。それと見知らぬ家具が複数置かれており。大きい丸型の机の中央に大きい魔石が鎮座していた。夢を見ることの出来る魔法だとわかり、それに触れると……声が流れる。


「今日、秘匿とされた情報が開示され。女王陛下がご帰宅したとの事です。情報発表は聖歌隊情報部門です」


「次に、詐欺集団摘発のお話です。違法賭博等で収益を上げていた詐欺集団が現れているそうです。抗争が激化する中で大量の逮捕者が出ています。抗争により怪我人も出ており、非常に危険な状態です」


 私は石を見ながら、情報を聞き入れる。私の居ない間で色んな事が起きている。


「反女王派の族長の声明があり、9人の族長による会議の結果、不可侵土地として地図に示されました。もしも、侵入する場合。英魔国内法、族長法など。適応外であり、侵入することも犯罪として罰金刑があります。旅をする方々はお気をつけてください。裁判所では迷子などの情状酌量もないとの発表です。また、保護されません」


 私は部屋に飾ってある地図を見ると赤く表示されている場所が写る。英魔国内でもそういうのはあるようで、そういう所は無視するのが決まったのだろう。地図を良く見ると道路番号もついており、空路もそういうのがあって首都に繋がっていく。英魔国内の地図はまるで生き物ように変わっている。


「……」


トントン


「どうぞ」


 玄関で物音がし、相手が誰かを察する。彼も緊急帰国しており。そして……その彼と一緒に彼女もいた。特徴的な義足の娘と、黒髪の一般人のような特徴のない姿の改造された過去から来た男性である。


「こんにちは女王陛下。サンライト、リューク両名、帰国しました」


「こんにちは。楽に……と言うには重い話になります。席にお座りください。お茶を用意します」


「女王陛下、私に給仕をさせてください。お願いします」


「では、言葉に甘えようかしら」


 私はサンライトにお願いし、彼だけを連れて来て貰ったのだ。そのサンライトは察しているのか、私の変わりに給仕をしてくれる。彼女は知っているのだろう。色んなことを。私の目を通して。


「女王陛下、お話と言うのはなんでしょうか?」


「……少し重いお話です。覚悟して聞いてください」


「はい……」


「私の昔話……友人のお話をしましょう。大きく関わってくる話になるので」


 私は緊張を解すためにや、私のスタンスを明確にする。緑の剣を取り出し机に置く。


「これはその友人のマナと言う世界樹から頂いた剣です。そして、『世界を護ってほしい』と約束の証です。その約束を護るためにあなたを呼びつけました」


「……何か重大な任務があると言うことですか?」


「察しの通りです。重大な任務です。そして、絶対に成功させるしかないです。失敗すれば……『英魔国抹消』です」


 緊張の面を見せる彼に私は聞く。


「世界樹のマナは……個人で世界を滅ぼした。最悪な悪魔です。その話はご存知ですか?」


「話には聞いております。遠い昔のお話ですね」


「ええ、そうです。昔の生きるものには悪魔です。そう、魔王と言っても過言ではないですね」


「女王陛下?」


「……私は最悪な悪魔を生んだ命令を下す。最悪な魔王です。そして……その命令を実行するのはあなたになります」


「え? 話が見えてきません」


「……ちょっと伝え方を間違えようですね。リューク・ハーピーの命令書は『もう一度過去に戻り、バルムンクと言う偽名で過去の生き物全てを抹消すること』が発令されます」


「な!?」


 驚いた声をあげてどういう事なのか彼は大いに悩む。


「そ、それは……えっと……」


「過去で全員殺せと命じます。それは全員です。幸せな家族、生まれてくる子供、そして……彼らの紡ぐ表の歴史の終焉。未来を全て殺すのです」


「女王陛下!? そ、そんな酷い事を!? それに過去に戻るなんて!! 荒唐不稽です!!」


「過去に戻る事は出来ます。証拠として……この時代にあなたがいる。あなたがいた世界は異世界でもない、現代の別の場所でもない。過去であるのです。そして……あなたが活動していたのをあなた自身も見ている。同時に二人のあなたが存在した」


「………うっ」


 リュークは頭を押さえる。頭痛がするのだろう。


「重い話です。しかし、それをしないとこの世界は無かったのです。リューク……酷ですが。あなたの翼も。その卵もないのです」


「卵……女王陛下!?」


「おめでとうございます」


 彼は嬉しい表情を見せない。辛く苦しい表情を見せた。


「いきなり、受け入れろと言いません。今日はここまでにします。だから、いつでも話を聞きに来て下さい。仕事はしなくていいので」


 私はサンライトに命じて彼の有給休暇をお願いする。お茶を持ってきたサンライトは頷き席に座り、今さっきの重い話は嘘のように私の旅の話を聞いてくれた。


 リュークも私の話を聞きながらも、一人で悩み。そして、今日には納得出来ず。家に帰るのだった。


 私はそれに理解を示す。何故なら「無実の人を虐殺」「ジェノサイド」「集団殺害」を行う事を暗示させていたのだ。


 それはとてもとても受け入れるには難しい話である。私は「マナとの約束」があったからこそ受け入れる事が出来た。そして……マナはどこまで知っていたのか知らないが。私が本物の魔王になる事を知っていたのだろうと思う。


 私は彼らが帰ってお腹を擦りながら、天井を仰ぐ。


「何もかも、無力で助けてもらった。ナイフ一本で勇者に負けてた小娘一匹が………ここまでに世界に影響力があるなんて……誰がわかった話なのでしょうか?」


 独り言を。いいや、お腹の子に聞かせる。


「それでも……私は……私の家族のために。悪魔にも魔王にも神にもなって……みせる、魅せる、見せる」


 愛しいたった一人の子のために。















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