フロントライン⑳⑨~終わらない~
捜索者を見つけ、連絡を取り研究施設内を歩く。武器は落ちていた拳銃とPDW。サブマシンガンを装備して研究所の管理システムコントロール室へ入る。鍵は開いており、中に入ると一人の研究員服を着た男性が立っていた。銃を突きつけるが全く恐れない表情で私を見る。
「君が⑨か」
「……ええ」
「見せて貰ったよ。全て、いい情報ばかりだった。得体の知れない内臓器官。肉体強度とストレス耐性。一つ一つが……未知だった。そして、今のこの瞬間も」
「狂人の類いか……はぁ……」
私はサブマシンガンの引き金を押し、弾倉内の弾を出しつくす。薬莢が金属音を鳴らしまくり、目の前の研究員には……1発しか当たらない。腹を抑える研究員に私はサブマシンガンを捨てる。
「ふふ、痛いですねぇ」
「ん?」
私は眉を歪ませる。血を出さない男が不思議である。そして、アラートが鳴り響く。
「⑨!! 研究所が抹消作業に入った!! 何してる!! すぐに逃げるんだ!! 君でも持たないぞ!!」
「いい体です。何もかも人とは違う。だからこそ……混ざる。つたない手術でもね」
顔をよく見て考えて察した。拳を握り、反吐を吐く。
「お前ら!! それは!!」
「実験に強力的じゃないと困るでしょう。貴重な貴重な……体なんです。『絶食』とか困りますねぇ」
「つぅ!!」
研究員が走り、避難用の通路に逃げ込む。私はそれに追いかけようとするが足の速さに追い付けない。同じ種族。魔族であるがゆえに。それも「精鋭部隊員」の体だ。
「⑨!!」
「今は脱出してる。カスミとサクラにここの研究所の職員調べあげて。『魔族の体を乗っ取った奴がいる!!』」
「わかった。君は!!」
「……どうにか、一発で仕留める」
私は汚染地域にあった魔石を砕き。魔力を回復する。吸われていく前に一発だけ弾丸を作り上げて拾った銃の弾倉に入れて装填する。1発だけ。私に残った銀の弾丸は一発だけである。目の前の研究員を追いながら、階段を駆け上がり私は研究所の外に来る。外では数機の量産されたアーマードウェポンが立っており、砲弾の銃口を向けていた。生で当たるには危険な口径だ……「耐久試験」をやっている。
だからこそ、私は一瞬で銃を構える。そして引き金をひく。そのまま、アーマードウェポンの引き金もひかれ薬莢が飛ぶ。
私の弾丸は研究者にの腕にしか当たらなかった。いや、研究者の腕で止められた。私の耳に銃撃音と共に憎たらしい声が響いた。私の横にアーマードウェポンの砲撃がかすって行く。「絶対に当たらない最悪な私の運」が不公平を生む。
「危ないですね。『地上の女王』」
「……くぅ」
私は施設内に逃げる。端末を確認し、制限時間が大丈夫なことを理解する。
「⑨、無事ですか!! 嬉しくない事なんですが……未確認機体が来ています」
「これ以上不利にするの?」
「ええ、援軍は近いです」
「それまで持たせるの厳しいわ」
「⑨……生きてください」
「生きる!! 私は帰らないといけないから!!」
背負った物の重さが私に熱を与える。そして、驚く事が起きた。大きいプロペラ音と共に大部隊が展開してくる。ヘリで輸送されたアーマードウェポンは異形な姿をして皆が同じ装備をしていた。
色は黒塗り。頭や部品が全てカタログで見たことのない物であり、両腕はそのままガトリングの砲身がくっついていた。変わった兵器を装備している中量2脚の兵器たちが次々に落ち、驚くような起動力で研究者のアーマードウェポンをレーザーで猛攻する。レーザー兵器はバリアにまったく通らないが、バリアの容量を大きく減らすので気付けばレーザーライフルのような武装。いや、ガトリングレーザーで蜂の巣にする。
大規模な出力のエネルギー供給を可能な内装なのだろう。レーザーをそれだけ速く打ち出すのだから砲身も溶けそうだがそんな事はなくしっかりと打ち出せていた。そして、それに耐えきれず。研究者を助けに来た部隊は全滅していく。研究者が乗っている機体はそのまま押し倒され、ガトリングレーザーの餌食になった。
これでもかと撃ち込み肉いっぺんも残さないような猛攻に私は背筋が冷える。
「何が起きてる?」
「⑨!! サクラさんから連絡です」
「ネフィアさん……無事ですか?」
「無事なわけない」
「そうですか。大丈夫そうですね。今からそちらに向かいます。ネフィアさんを回収後。影を潜めます」
「……わかった」
私は待っていると今度はピンクの機体が飛んで来たと思ったあと、全ての機体が何故か動かなくなる。そこを彼女は蹴りや、レーザーブレードを刺して壊して無力化し、私の元へ来てくれる。
「何が?」
「帰ってお話をしましょう……今はジャミングが効いてますがすぐに突破されるでしょう。全ての戦争が停戦すると思います」
静かな落ち着いた物言いに私は頷く。空気が変わったのだ。
「…………わかった」
私の知らない所で世界が動いた気がするのだった。そして、彼女の機体の助手席に座り笑みを溢す。
「ありがとう助かったわ」
「いいえ。任務失敗です。到着時間を大幅に越えています」
「ちょうどいい時間だったわ。それに……私の目的は成った。最悪な結末でね」
「…………帰るおつもりですか?」
ニュアンスに私は感じた。
「依頼者は誰?」
「…………私の母親からです」
本当に何かがあったのだ。




