フロントライン⑫~捨てられた都市郡~
何も光を出さない都市は物音はするが、非常に静かであり。機械の駆動音がずっと鳴り響いていた。トキヤの機体に乗せてもらい。暗闇を鴉に導かれながら進み。目的地へと到達する。そこは建物の地下であり、道路から入れる場所。そのままシャッターが閉められて発電機が音を立てて動き出し室内を照らした。コンクリート壁に柱、柱と柱を結んで布だけで区画された場所に人の気配がする。
中は整備工場となっているのか人型ロボットが複数鎮座し、鴉の機体を納めるガレージとなっていた。近くには車とバイクが置いてあり、数人が顔を出す。皆が人間であり、ボロボロの服を着ていた。
「ここは?」
「ここは隠れ家になる。俺が留守をしていたら、いつの間にか人がすんでいた。元々はトラックの駐車場で便利だったのを改造して使っていたんだ」
トキヤの機体から私は降りる。そのまま首を回していると人間に声をかけられた。ブーツ姿に軍服の男が笑顔で迎える。胸に金塊のエンブレムをつけており、傭兵なのがわかった。
「へぇ乗り手は女性だったか? ようこそ、鴉の檻へ」
「あなたは?」
「ああ、俺はここを任されてる。フリーランスの傭兵『ゴルディーゴールド』だ。腕はさすがにそんなに高い訳じゃないが高く評価受けててな。いい値段で仕事を請け負ってる。まぁだからこんな所で逃げ込んでるんだけどな」
「こんにちは。傭兵見習いです。これから同業者になるのでよろしく」
そのまま、トキヤが機体を置いて私に近づく。すると彼は私の肩に手を回し笑顔で答えた。
「俺の女にナンパはいけないぞ」
「ははは、知ってるさ。鴉からな。傭兵見習い二人が来るって聞いてたが。なるほどな。恋仲で傭兵なんかやるなよ。すぐに先立たれて犬死にする奴なんて万と見てきた」
「それはどうかな」
「そう、その自信満々で二人は最強のコンビってやってて死んでる。傭兵なんてやめときな。それもフリーランス。企業スポンサー、国スポンサー、国家軍、企業軍。他にもっといいのがある」
「忠告ありがとう。評価低いと言うわりには強いな。そのどれも入ってないだろ、お前?」
「勿論、フリーランスのが全員の依頼を受けれて金になる。お控えや個人契約は安定思考。おれは上昇志向だ」
なんかすごく俗物ぽいが、それでもフリーだからこそ腕はあるのだろう。トキヤもそこはわかってる。だが、鴉が機体から音声を流す。
「運だけの野郎だ」
「いつも言うだろ? 『運も実力の内だって』」
「俺が用意した機体でやっと活躍できた癖に。お前の考えで組まれた機体は流石に酷かった」
「それも運だ。お前と仲良くなったのも運だ。たまたまだが、それも運だ」
「……で、お前は非番なのか?」
「ああ、今日。お客様が来るって聞いてな。既に部屋は用意していた」
「何を考えてる?」
「そんなの僚機として雇って貰おうと考えて縁を持とうとしてるんだ。それよりも、鴉こそ。久しぶりに帰って来てなんだよ」
「それは……探し人だ。聞いてないか? 何か生体で変な噂を」
「ああ? もしかして今、傭兵同士と全ての勢力が活発化してるのが理由か? 新興勢力が新技術を手に入れて騒がれてる。あたらしい強化人間計画ってやつ」
私たちはその情報に心当たりが生まれる。そして、それに呼応するように彼は笑顔になる。
「情報売りましょうか?」
食えない人だけど私は頷く。鴉が払ってくれた。
「なるほどな。お前らもあれを狙ってるわけかいいぞ説明しよう」
彼は端末情報を乗せてくれる。新強化計画は『オープン』と言う勢力が持っているらしく、サイト⑨を根城に固めている。サイト⑨に昔からいた勢力が消えて後に出来た勢力になるらしい。新たな資源や新たな技術が生まれ今やどの勢力とも敵対や同盟を組んでサイト⑨から周りのサイト7、8、10、11が主戦場になっている。既にオープンから強化人間の上位者として『オープド』と呼称する者が現れている事や『思想はこの世界を解放する』事が乗っていた。
私はその説明に心当たりしかない。もう、絶対に私たちの仲間が情報を漏らしている。そして、私は気付かされる。水面に落とされた石が水面をあわだたせるように波紋が広がっている。この世界に一石を投じたのだ。
「情報ありがとう、私たちもいち早く傭兵にならないとね」
目的は決まった。サイト⑨での傭兵活動をメインだ。そのためには試験をクリアしないといけない。
まぁ、試験なんてあってないような物だけど。
*
ヘルメットは窮屈だ。私はそう思いながら外して報告を待つ。アーマードウェポンの試験機体は旧式の1世代機だった。しかし、試験用の自立兵器もただ浮くだけの小型機体であり、あまり困るような事はない。結局、フリーパスのような状態だ。何を見ているのか、それは動きなどだろうか。私にはわからない。いや、アーマードウェポンの1世代でも操縦出来る者が少ないのだろう。
「両方とも無事仲介者がいいと言った試験合格だ。おめでとう。これで君たちも栄えある傭兵の仲間入りだ。その機体はご褒美であげよう。以後、君をサポートする仲介者として傭兵組合をよろしく」
「どうも」
合格通知を受けて、知り合いがサポートとして立候補してくれた。私はコックピットから体を出す。機体の胸から見た世界は驚くほどに四角く。そして、上下に四角いビルが立ち。小さな通路で全て繋がっていた。
居住者が上下におり、上は貴族、下は平民の都市である。そんな間にゴンドラのようなエレベーターが動き、天と地が重なり合うような世界に目を奪われる。
空には人の生活の光が何十万と輝いている。すごい世界に私はいた。
「ネフィア、何をしてるんだ?」
トキヤの声が響く。私はそれに答える。
「逆さまの人の星空を見ている。鴉はこんな下らない世界と言ってたけど、圧巻な光景だと思う。地下にこんな世界が広がってるなんて」
「そうか、俺は先に移動して。サイト⑨のガレージを確保する。ネフィア、俺達は傭兵だから」
「……敵になるばかりじゃないでしょ」
「コンビでやるにはちょっと難しい場合もあるだろう。ネフィア。この世界はそんな甘くない」
「そうだね。甘くない」
私は機体の肩に乗ったまま世界を見続ける。地下に拐われた彼らは一体何を見たのかを考えながら、ただただサイト⑩の世界を見続けた。
「メール着信一件です。おめでとう、傭兵。君に仕事の依頼を届けに来た。初陣には簡単で楽な仕事を」
「……本当に戦いばっかりなんだねここ」
私は仕事が来ることを察した。戦いはずっとあり続けるのだろう。鴉の言うとおり。




