フロストライン⑦~初陣~
蒸気街から外へ出る廊下は複数ある。鉄の道と屋外用の通路だ。大寒波時では屋外通路は危険らしいが近道になる。私はそれを承知で屋外の鉄の道へ出てガレージへ向かった。
アーマードウェポン訓練は特別室でみっちり受けている。箱の中で疑似空間で学んだ事を夢に持ち帰り四六時中やっていた。だから、なんとか普通に動かせるまでになる。
スーツを着た整備士が私用にアーマードウェポンを用意してくれていた。形は四角く、量産品と話は効いていた。なのでそんなに難しくなく扱えるとカスミが教えてくれる。スタスター操作もない機体だ。
「ネフィアさん、彼らにお願いして準備できてます」
「ありがとう。待遇いいね」
「私はあなたの全てを記録してる。もちろん、写真もね」
「カスミなにしたの?」
「それは帰って来てからお話します」
嫌な予感がする。そんな中で、機体の胸の上に飛び乗る。それに周りのスーツ姿の人達は驚いていた。ああ、これはいけない事か。
「ネフィアさん、本来はそこの昇降機で乗るんです。人目がある場所では気をつけてください。昇降機です。覚えてくださいね」
「わかった。気をつける」
「体が違いすぎる」そう考えながらハッチを開きコックピットに乗って、ヘルメットを被る。ヘルメットを被る癖をつけるだけの装備だ。高級な奴は音など装備が充実しているらしい。私は乗った事を伝え、電源を入れる。コックピットは明るくなりハッチが閉まる。外では機体から蒸気が吹き出た。ボイラーで起動する変わった兵器だ。
「こちらネフィア、搭乗完了。ガレージハッチを開いて」
機体外に音声を流し、ガレージの扉が人力で開けられる。そのまま私はライフル銃を持って歩く。外は猛吹雪で視界が悪いがスキャンモードにカスミが変えて視界が緑で表示された。右肩にあるレーダー装備が冴える。武器はライフルと右手のパイルアンカーを打ち出す武器だけである。ミサイルはない。まぁ、こんな吹雪ではミサイルも厳しいだろう。
ドシドシと重厚な機体でもう吹雪の中を歩く。既に黒い機体とオリジナルカラーの機体がいた。彼らはトキヤ、鴉に英魔国人の二人だ。エンブレムもあり、それらは個人で傭兵しているレベルらしい。
「そろいましたね。現地は歩きながら説明します。接触時間は30分後。敵部隊は8機の自律量産機。2体の傭兵です。問題は傭兵は地上への強行偵察です。それら防衛ラインを越えた勢力の破壊です」
「え、傭兵が2体? それって追放者?」
「いいえ。これはわざわざルールを破って強行偵察に出て来ています。理由はもちろんあなたたち英魔国人です。いい研究材料ですので奪いに来てます」
「バレてるの私たち?」
「拐われた二人のデータで地下は活発になりました。他の敵を越えるために研究材料が欲しいのです」
「群雄割拠って言ってたもんね」
私たちはいい研究材料なのだろう。マップで敵との出会う場所が示される。そのまま待機し迎撃するらしい。防衛ラインの兵器は破壊されたようで傭兵二人が手練れとの事。
「ネフィア、初戦は大変な事になったな」
「私の人生いつだって初戦はヒドイ物よ。トキヤ」
「間違いないな。ネフィア敵影確認。鴉と俺が先行だ。行くぞ!!」
吹雪の中を黒い影が動く。マップで重なり爆発音が聞こえる。私たちも動き出し、私たちは氷を滑るように移動する。ホバーのように滑る動きは足裏にあるローラー移動がメインの機体だからだ。スラスターのない地上での移動が得意な機体で安価である。
それらで敵に接近し、対装甲20mmライフル弾を撃つ。画面にヒットの文字が浮かびあがり撃破と表示された。
安価な自律兵器なため、バリアもスラスターもないようで弾がしっかりと効くようだ。撃破後そのままもう一機に近づき腕のパイルバンカーで体の胸辺りを貫き離れる。エンジン部分が燃えて倒れたのを確認後。また移動する。爆発しないのはメインコアのりエネルギーが低いか、リアクター未装備からだ。
「ネフィア、調子いいな。ん……ネフィア!! 危ない!!」
「えっ………!?」
ガシャアアアアアアン!!
「きゃあああああああああ」
猛吹雪の中、白い機体が目の前から接近し蹴り飛ばされる。そのまま倒され、スラリとした中量2脚の機体が踏みつけながら銃口を向ける。武器の種類は12.7mmのマシンガンで撃ちまくられて私の機体が炎を上げる。オイルに引火し、コックピットは穴だらけだ。両腕にそのマシンガンを装備し、サブアームがマガジン給弾する。
「イタタタタタタ!? 滅茶苦茶いたい!!」
「ネフィア!?」
「大丈夫!! マシンガンで撃たれてるだけ!! いったああああああい!!」
コックピット画面はひび割れ、ノイズを走らせる。だが、重厚な機体故に動く事はわかていた。
ガシッ
「仕返しよ」
バァアン!! ガシャン!!
腕を掴み、右手のパイルバンカーで胸の辺りに撃ち込む。パイルバンカーの打ち出しで空薬莢が排出され、そのまま刺さった目の前の機体は沈黙する。そのまま私はハッチを蹴りこじ開けて猛吹雪の中で立つ。
「トキヤ、こっちは相手が油断して倒せた。そっちは?」
「鴉が今、仕留めた。あれで最後だ。回収部隊に連絡する。迎えに行くよ」
「ありがとう。服がボロボロで寒いの」
「わかった」
私はコックピットに戻る。通信の声は私を心配する声ばかり。その声に答える。
「12.7mmは死ぬほど痛いから気をつけてね」
私の言葉に複数人の失笑が混じる。そして、私に当たってひしゃげた弾頭を眺めた。私の体は鉄板より硬いらしい。不思議な感覚である。
*
帰還後、破壊した機体は素材になるらしく回収部隊と交差した。そのままトキヤが用意して貰っているガレージに行くとそこは鴉のガレージだった。トキヤも同じ機体であるからもしやと思う。
「鴉さんの予備パーツでトキヤの機体は出来上がってるの?」
「その通りだが?」
「なんで私は量産安価の機体だったの!!」
「腕」
トキヤはそういい。ガレージに機体をしまう。そのままハッチを開いて私とトキヤは機体から降りた。
「ネフィアさん。私の指示する場所へ行ってください。端末は無事ですね」
「ええ、出撃前に言ってた話?」
「はい、既に売買成立してます」
私はポケットから画面つきの携帯電話を取り出す。それにはマップでここへ来て欲しいとお願いされた。何をするのか聞こうとした時、トキヤが私の肩を叩く。
「ネフィア……すまないな。体で払わせて」
「はい?」
「ここはカラーの映像を出したり、写真にすることが出来る」
「………トキヤ。この機体って買ったんだよね」
「ああ」
「どこにそんなお金あったの?」
トキヤは私を指を差した。
「ここに」
「………トキヤあああああああああああああああ」
「なに、大丈夫。それにああいう街でお前みたいな奴は珍しいからな。英気養ってあげるつもりでどんとやってこい」
「何で私を売ったの!! ねぇ!! もう踊り子もやめたのよ!!」
「恥ずかしいのか?」
「もちろん!!」
「……まぁ、いいんじゃね」
「トキヤぁあああああああああ」
私はデリンジャーでトキヤを発砲し、トキヤが痛がる。そのまま深く腹に蹴りを入れて。腹を括って蒸気街へ向かった。知らぬ知らぬうちに蒸気街のポスターとちょっとエッチな雑誌に掲載されるのだった。なお、何処かで見たピンク髪の女性も載っていた。




