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人を拒む未開地②


 私はある本をエルフ族長から借りる。内容はもちろん桜の国で魂が封じられた本だ。その本の中は異様な知識で溢れており。私の幅広い知識を持つきっかけをくれた世界だった。


「この本のトキヤは……トキヤだよね」


「ああ、この本の幼馴染みで千家時也と言う名前だな。もちろん、赤いチームが好きで。本の世界にもあったはずだ」


「あなた、それに引っ張られてない? 魂」


「俺は俺だからなぁ。引っ張られてるだろうなぁ」


「逆に言えばこの本はオーパーツだったわけね」


 この本の内容は夢物語だと、異世界の話だと思っていた。現実、異世界は「在る」事を証明された。しかし、本の中の世界が「遺物」によって過去にあった事と証明された。そして仮説を立てるなら、この本の魂はこの世界の方々と考えた方がしっくりくる。何故ならわざわざ異世界から呼ぶよりも自前で用意する方がいいに決まっているし、この世界の倒した女神はこの世界の女神だ。


 だから、仮説で行けばあの本の世界は「過去」と考えられた。ユグドラシルの祖母、マナが滅びを撒いた世界があれなのだろう。


「……トキヤ、頑張ったら。電気式の洗濯機出来るか

な?」


「既に魔石で洗濯機があるだろう」


「そうだね。あるね、コンロも温め気も浄水処理装置も……まるで私が『便利になればいいなぁ』と思ったのがどんどん開発されたね」


「戦争ではないそう言う方向に向かったんだよ。そうそう、ヤバい実験を学会がやって物議かもしてるな」


「なに?」


「我々の意識、考えが物理世界を歪ませられる。意識が未来が過去を改編することも出来るかもしれない」


「……え」


「そして、それは魔法と言う我々が使っている方法である。『世界のルールをねじ曲げる方法』が『実はルールを決めたのは我々で我々の意識でルールが変わっている』と言う学説だ。もう滅茶苦茶実験から何やらで大盛り上がり。そして、ネフィアの冒険もそのこんかいの実験が噛んでる。『結果が出せなかった物を、女王陛下で大衆意識が加わればどうなるか?』と言うな。なぁ、ネフィア……なーんか引っ掛からないか?」


 トキヤの言い方に私は心当たりしかない。


「婬魔……夢魔……もしや!?」


 私は「望んだ姿に変わる能力」を知っている。


「世界を夢のような世界にしているのはだれの意識が現実に作用してるんだろうなぁ……」


「ちょっと怖い怖い怖い!!」


「ああ、学会に実験に恐怖する者も現れたよ。なぁネフィア……ここから推測される過去の旧人類滅亡も仮説が立つらしい。大衆意識はまとまれば『物理現象に作用して、未来過去現在を改変することが出来る』らしいなぁ……ははは」


「トキヤ、その実験やめさせよう」


「……無理だろうな。何故なら『今の英魔国がある理由が過去の旧人類滅亡後だからであり。観測者である我々英魔が滅んだと一般常識化し、そして滅びたからこそ我々は生を謳歌し、そして滅びを未来から過去へ干渉しているのではないか?』と言う話にもなってる。『干渉力は我々のが上』と思うから。過去の人類は『無抵抗』だったわけだ。そう、英魔国は旧人類に戦争で勝った事になるな」


「トキヤ、学会やばくなあぃ?」


「もう、滅茶苦茶に『ヤバいヤバい』って騒いでるけど知らない世界には戻れないし。そういう世界に作り替えた訳だから『責任』を果たさないといけない」


「……お、おう」


「そしてなぁ……野球球場の呪いも判明。『魔法や魔力強化なしの平等である場所での戦いが見たい』と言う大衆意識の集合体だ。俺達は知らず知らずに『最強の武器』を手にしたわけだな。そして、それを一身で受けてる存在知ってるか? 今回は負けたが、劇的な演劇を演じた選手をおれは知ってる」


「あ、あかんでよ。あかんでよぉおおおおお」


 私は背筋どころじゃなく体が冷えていく。私個人の力とかそんな話ではない。何となく知っていたが、何となく神とか知ってたが。具体的な実験結果がその、ふんわりした仮説を確定させる。


 そう、家を立てる設計図通りに家が立った結果。この世界に目に見える状態でルールが決まったのだ。ここに家があると言うように。観測された。


「あばあばあばあばあば……大衆意識こわいよぉ」


「ネフィア。お前が出会う者はなんだろうな。あの未開地の先」


 トキヤはホラーな話で締めくくった。やめてよ、「大衆意識が生んだ化物」なんて存在が現れても。でもだから「在る」なんだろうなぁ。「未開地に知らない世界が在る」と大衆が望んでいるから。


「さぁ、未来を拝みに行ってやろうじゃないか」


「……怖いなぁ」


「ネフィア、いい答えを知ってるか?」


「なに?」


「『そんなの糞くらえ』だ。生きてる俺達には関係ねぇからな」


「お下品な。でもそうね。気にしてもしょうがない。一応、救助隊だから」


 トキヤなりに元気をつけようとしてくれたのかもしれないと思いながら私は準備を進めた。





 サイレントラインと言われる雪と地面がわかる境目で私たちは留まる。白い対魔物用に迷彩の防寒服を着込み、物質を積めたカバンを背負う。トキヤとは紐で結ぶ。クレバスに落ちたら片方が救うと言う事とクレバスに引っ掛かるために棒を持つらしい事を教育を受けた。もちろん棒は武器にもなるため用意された。


 とにかく、サイレントラインの先は私たちの「ルールは全く効かない世界だと言うこと」は確認出来る。エルフ族長が私たちを見送りに出てくれる。


「女王陛下少し見ててください」


 エルフ族長が手にガラスに入った羽を見せる。それにトキヤが反応した。


「ネフィアの羽根か、そんな高価な物で実験しなくても……」


「なんで私の羽根があるの?」


「いいえ、ネフィアさまの羽根だからこそです。これだからこそ、転移魔法が効かないのです」


「なるほどな、確かにネフィアに見せるにはいいな。消えるんだろう?」


「はい、見ててください」


 私の質問は無視されてガラスの羽根を投げる。するとラインを越えた先でガラス中の羽根は消え、ガラスのみになった。


「こういう事です女王陛下。だからこそ、女王陛下の羽根を持たせる事が出来なかったのです」


「私の羽根を持つとなんか良いことであったの?」


「ええ、『死の運命を強制的に回避するため、首都の教会に空間転移させる』効果のある。神具です」


 どこかで聞いたことのある効果のアーティファクトだ。それが消えるのだから本当に死に行く物だと察する。やり直しが効かないのだ。


「まぁ、ネフィア。この先はとにかくヤバいからな」


「もう、覚悟してる。行きましょう」


 エルフ族長に見守られながら私は歩く。途中、怒りをぶつけながら。ユグドラシルが描いた未発見の地の地図を便りに北へと進む。









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