野球戦争の結果
あれから1ヶ月ちょっと。野球大会授与式から閉会式。その後の6人による族長の野球チーム構想発表。そして、選手ドラフトを経て私は暇になり、族長達が忙しい日々を過ごす中で今回で引退となった私の野球人生と大会で見た聞いた事実を綴った本を書いた。「27アウト1失点」と言う天使が考えた題名の本物語に貪欲な天使たちが立ち上げた「天使大聖悪図書会」が権利を持って出版した。
私が書いたのを徹夜した天使たちが必死になり、編集と模写を行い販売して瞬く間に完売したと聞く。どういう方法で出版したかは全く知らないが、天使の衛兵さえ動員されるほど忙しいらしい。なので私の家は全くもって無防備なのだ。
「………本も書いて暇だな」
私には権力はない。故に何も出来ないし、なんにも力がない。ただそこに「居る」事を所望された存在であり、国が荒れない平和なほどに暇である。クンカ王子も忙しく妻と一緒にオーク族長のチームに莫大なお金で入った。あれの公式戦がそろそろ始まるだろう。トキヤは既に赤いチームに心血を注いでいる。
チームは6つ。オーク族トロール族の力こそ全て強さこそ全ての連合オーク・ジャイアンツ。
リザード族長が用意した獣人がメインのリザード・レオタイガーズ。
エルフ族長率いる多種多様な種族、鳥人などがメインのエルフホワイトスワローズ。
ダークエルフ族長の英魔衛兵団のみでこれまた多種多様で構成された硬派なチームのエルフダークドラゴンズ。
セレファ族長、エリック族長の悪魔族、デーモン、吸血鬼など都市インバスの種族がメインの血や赤い悪魔の魚がモチーフのデビルカープズ。
そして、最後に泣く泣く作らされたスキャラ族長の海側亜人がメインの大洋ホエールスターズが生まれた。
トキヤが好きなチームは何故かデビルカープズであり、お金がないからと寄付もしている。前評判では「最下位争い」なぞ言われているチームを盲信している。なお、クンカ王子は公式戦先発開幕投手らしく。もう、人質王子として祖国に帰れないだろうレベルまで英魔国民に捕まっている。ウィンデーネもエルフホワイトスワローズで4番。チャチャも広報側の黒衛兵に無事スカウトされてエルフダークドラゴンズで遊撃手として1番だ。
「………クンカ王子、このままじゃ……返せ言われても返せなくなってるよね?」
彼が掴んだ栄光だけど。それは逆に強い首輪になるだろう。その不安が残る。都市国家アクアマリンの貴族、王族はどう思うか、考えさせられる。
「まぁ、クンカ王子がなんとか考える事だから気にしないでおこう」
私は考えるのをやめた。そして、ガルガンチュアは今はエルフダークドラゴンズの船で他チームとたまに一緒になって遠征のために使われるらしい。もちろん、私の魔石を使っての運用だ。そうしないと勿体ないらしい。そしてプロトタイプの船が大成功だったのであれを小型化量産をして労働環境改善、空輸労働不平等是正、空輸商会独占禁止を行うらしい。
「私の預かり知らぬ所で、すっごく発展するのね……まぁ、それだけ人、知識、技術が混ざったのかな?」
元々は敵対組織故に牽制しかなかったのだろう。集まればあんなのをすぐに作ってしまうほどに英魔人は優秀だったと言うことだ。平和である。
「まぁ問題起きないからいいねぇ……」
「ネフィア、そう言うが。そう言うから大変な案件生まれるんだぞ」
「あ、赤いチーム贔屓野郎」
「あああん? 青いチーム贔屓野郎」
「あんな弱いチームだから応援してあげないと可哀想でしょ」
「同情で応援してやるな。まぁ……確かに厳しいだろうなぁ。海側の亜人は内陸部では不利すぎる」
背後にトキヤの雰囲気を感じて振り向くと。赤いタオルを巻いており、私は頭に向かって緑の剣で叩く。
「少しは自重しなさい!!」
「くっ」
「あなたは王配でそこそこ権力もってるんだから贔屓すると怒られるのよ!!」
「んんん」
「ええ……」
私はその反骨心に負ける。溜め息をはいて彼に聞いた。
「なんかあったの?」
「ああ、族長たちが明日集まる。そのときに話そう。そうそうネフィア。旅行行きたくないか?」
「え、いきたーい」
「なら良かった。明日はその話だ」
「わーい嬉しい~」
私は楽しみにしていた。
*
極寒の地、北国を越えた。越えていけないラインを越えた未開地。多くの冒険者、多くの人間、多くの亜人を飲み込み。帰さなかったその地で防寒とリュックを背負った私は会話を思い出して同じ装備のトキヤの背中に向けて叫ぶ。
「トキヤのうそつきぃいいいい!!」
「お前も容認したんだから諦めろ」
「ああああああんんんんん」
英魔国女王になっても私は冒険者なのだろう。そう、私は未開地に降り立った。




