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都市野球戦争 ①


 遊びは大人になってもする。そして、それを見て楽しむのもある。スパルタ国ではそれがコロシアムでの拳闘士だった。帝国では決闘。では、魔国ではどうかと言うと魔国には多種多様の種族が多すぎた。だからこそ、事細かなルールが決められた物が必要だった。


 何処から来たのか言えば過去からやってきた。ルーツは発掘された物。遊びをルールで厳格化しただけの事。


 だが、そこには立派な闘いが生まれる。「戦争しない兵士の新たな戦場」として作られた場所だ。


 多くの仮想敵が多く。族長たちも軍縮するのに「不安」が残る。だが、戦場出ない兵が勿体ないと言う面もあり。作られた戦場の一つとして用意された。そんな場所で私は英魔国内で突貫工事で作られた球場の台の上で宣言する。


「それでは大会を開催します!!」


 壇上に整列する兵士の前でただ宣言し、球場に来た市民などに手を上げて私は去る。私のチームは午後の夕刻に試合がある。それまで、チームで出来る事を話し合う予定。


 細かいルール、模擬戦などを経て。市民にもルールが広まり。ゲームとして見るには問題ない状況で球場は盛り上がり、歓声や罵声、応援の声。球場の上空にも竜人や。固定された足場などで多くの目線がある中での大会だった。そしてそれが「2つ」もある。


 首都としてイヴァリースにはエルフ族長とダークエルフ族長が球場を作り上げた。そして両チームはバチバチに火花を散らす。ダークエルフのみのチーム。エルフ族のみのチームが当たる日もあるだろう。


 今日は合計6試合。そして、私のチームが出場する場面がくる。そして、夢魔が数人が見て魔国内に送る。


 そう、私は多くの視線に当てられる。「女王陛下」として恥ずかしい姿は見せれない。そう、皆が期待する。


 「私」と言う妄想の権化を。





「ゲスト紹介します。今回実況席に来ていただいた人は我が国の英雄。女王陛下の王配。トキヤ・ネロリリス様です。よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


 実況席は球場がよく見える外野の3階に設けられている。そこで俺は呼ばれた。実況者は体の大きいオーク族の男だ。


「王配様。野球は詳しいとお聞きしております。私も至らぬ実況などあれば教えてください」


「大丈夫。十分に状況を報告できている。それに専門家なんてまだ居ないんだ。みんな勉強、俺も詳しくない」


「そうですね。頑張っていきます。では、両チームの特徴はご存知ですか?」


 俺は実況に被せて説明する。


「ああ、しっている。まず、ネフィアが用意したチームは人型が多く。体が小さいためストライクゾーンが狭いが、パワーが低く長打は生まれにくいと思われる。ただネフィア、ウィンディーネ、アンジュは規格外と思った方がいい。あれらが長打を生む事に気をつけて投げた方がいいな。また投手のネフィアは小型人型のパワースピードがない球を投げる基本が全く関係ないと思う。あれらは人の皮を被ってるから気を付けろ」


「流石に詳しいですね」


「普通ですよ。普通……そして同じ小さい体の昆虫亜人族。蜜蜂雀蜂族の混合チーム。あれは守備のチームだな。練習や練習試合で見られる得失差の数値が異常に低い。好守備、守備変更。そして雀蜂族のエースの毒針のような精密なコントロールが打ち損じを生む。初戦でネフィアと当たったのに驚いてるが。俺はいいチームだと思って注意していた」


「族長連合チームとどっちが強いですか?」


「わからない。そういうには戦ってみないとな」


「王配、ありがとうございます。なかなかいいお話でした。視聴者も『わかりやすい』と評価が良いです」


「ありがとう」


「選手入場です」


 眼下にネフィアを含む選手が球場フィールドに現れ歓声が上がる。そのまま並び頭を下げて、審判であるトロール族が「プレイボール」と叫んだ。そのまま表の回が始まる。そして、ネフィアがマウンドに……


「王配、女王陛下が外野に!?」


「あ、ああ。見えてる。魔王・左だと!?」


「レフトです。女王陛下がレフトで観客に手を振ってます!! 見えているでしょうか!! ピッチャーズマウンドにはアクアマリンの王子様だ!!」


 球場に動揺、そしてざわつきが大きくなる。俺も先発はネフィアだと感じていたのだが。そんなことはなかった。そしてそのざわつきは一瞬で沈黙になる。


「ストライク!!」


 トロールの審判の声でクンカ王子の球が「本物」だと一瞬で俺は感じた。


「データにない。ネフィアがにやついてる。これは……隠し玉だ。ネフィア先発に対してネフィアは確かに練習も多くの場所で笑顔で語ってたが。これは『偽装』だった」


「王配様も何も聞いてなかったんですか!?」


「ああ、先発すると『嘘』つかれたよ。ヤバい、クンカ王子は『ノーマーク』だ!!」


 クンカ王子の球は小型人型のためパワースピードはそこまで高いとは言えないが、球が伸びる。落ちる。曲がると変幻自在な動きをし、それを引っかけて当てよう物なら。内野守備がしっかりとしている。特にウィンディーネの遊撃手は動きも早く、送球も鋭いため。あそこを抜けてヒットにするには難しいと考えた。


 そうこう、しているとそのまま3アウトチェンジで観客が歓声を上げてアクアマリンの王子の劇的な登場に熱狂する。


「1回表に関して王配はどう思われますか?」


「いい立ち上がりと思います。テンポよく、小さいストライクゾーンにしっかりと入っており上々です。いやぁ~これは手強い」


 そう、全く危なげなく投げてしまった。ネフィアと目線が合い。悪い笑みを向ける。そして、裏の攻撃になった。そのまま雀蜂が凶悪な笑みでボールを投げる。他の種族は全蜜蜂亜人。透明な羽根がキラキラと球場を照らす魔法の光で輝いていた。


 第一打席に立った。打者の女神アンジュが驚いた表情を見せる。審判の「ストライク」の声に対してだ。


「際どいコースに投げますね」


「ああ、そして。魔法でストライクが審判がわかるようになっている。絶対のストライクゾーンがあり、目視でストライクがわかるのもあれば際どいのもあるが。球の中心が『針一本でも入ってたらストライク』だからな。魔法でわかる」


「そ、それは……」


「針の一本分ストライクなんだ。あんな精度、あんな距離で投げられるなんて……化物だ。だから、目視で判断する打者は際どい所を……」


 カーン


 乾いた音が響き、蜜蜂亜人が落下地点に入る。そのまま取り。アウトになった後にアンジュは投手を睨んだ。その睨みに笑みを向ける雀蜂に俺は席を立って食い入るように見ていた。


「これは凄い。あの投手、何者だ?」


 俺は予想がつく。あの投手はスカウトされるだろうと。そして……今日は投手戦になるだろうと思うのだった。





 0カウントが重なり、俺が思う以上にネフィアが苦戦している事である確信が出る。ネフィアの空振りは嘘ではなく。読みが外れている事や勘が鈍い事にハッキリとした理由が生まれる。


「納得した。ネフィア……野球との相性最悪なんだ」


「それはどういう事ですか?」


「ネフィアは元々、剣士でもない。それは玄人を越える事は絶対に出来ない事は本人が一番知っている。なら、何故強いかと言うとそつなくこなせる基準が高いからだ。それは野球でもそうだ。天才的な才能が『ない』。そして……ネフィアの運の良さも『ない』」


 俺はカードゲームで確信した。ネフィアの能力に絶対は「ない」事を。ギャンブルとは相性がいい。だが、野球もギャンブルの部分はあるが。実力が高まればその要素は薄くなっていく。そして、それが作用しているのか運の良さが見えてこないのだ。


「投手は完璧な投球が出来るのは100球中に10回や個人差があり、それが決め球になる。失投の少なさが名投手の条件と言うが決め球が『必殺球』としてストライクが取れるのが名投手だ。あの、蜂の亜人はそれが非常に高いレベルで完成されている。臭い所に投げ分け失投も混ぜる中で一球で決めている。だから、打ち取れにくい」


「なかなか奥深い話ですね」


「ネフィアに対して『ここまで出来る』と示した。英魔族の努力の結果。3者できっちり決めるのも凄い事だ。そして、そのまま8回裏。ノーヒットノーランの偉業も見えてくるな。クンカ王子はいい投手だが、少し四球もあって球数で不利だろう」


「このまま、先に一本出れば……」


「出ないから両陣営苦しんだ。延長は無限だからな」


 長期戦を視野に入れないといけない。ネフィアはそこをどう思っているか考える。打席に立つネフィア。8回裏の第一打者だ。3人で抑える好投手に経験浅いネフィアのチームは翻弄されている。そんな中でネフィアが打席に立つが……今までの雰囲気と違い。目は真剣そのものだった。4番にネフィアが立つ理由は威圧感が出るからと思ったが。


ブォン!!


「ストライク!!」


 鋭いバットの空振が今までと違う。鋭いスイングに流れが変わる空気を感じた。球場内でもゾワゾワし、投手の亜人も汗を拭っていた。流れが変わる。今までフルスイングをしてこなかったからだろうか。


「王配!? 何かあります!!」


「わからない。だが、あれは……何を……」


 蜂の亜人が振りかぶって大きく下に投げる。下に集めるのは打ち損じしやすい故に下に球を集めるのだ。だが、下のボールはストライクゾーンから外れて外角アウトコース。人型ではボールの場所だ。そう、今までで見れば失投になるだろう。ネフィアの選球眼はいい方だ。だからこそ、そんな球は……


 ブォォオオオオン、ガキャアアアアアアアン!!


 右打席のネフィアは大きく一瞬で内に流しの体勢に変え、外角アウトコースの球をすくいあげるようにバットを出してボールを当てる。その球は大きく大きく放物線を描き、外野左中間の観客席へと吸い込まれる。


ワァアアアアアアアアアア!!


「は、はいったああああああああああ!!」


 実況が叫び歓声が轟音となって球場が震えて鳴く。あまりの苦しんだ場面での一打が激烈な印象を残す。ボール球を狙う打ち方に俺はネフィアの底を計り間違えた事を察した。あんな、難しい場所を打ち上げて叩き込む化物じみた力に戦々恐々とした。


「ネフィアはストライクゾーンで勝負して貰えない事を考えてボール打ち。悪球打ちが出来るようにしていたんだ」


「王配!! では、あれは狙ったと!?」


「ああ、フルスイングと自信満々で投手はストライクを投げずらくさせて引き出させたんだ。ボールゾーンの失投を。それを力でねじ伏せるつもりだった」


 ネフィアが笑顔で手を振って塁を駆けて行く。俺は決着が近い事を察した。ネフィアは「乗せたら止まらない」と言う燃え上がる燃料を入れてしまったのだ。だが、そこから雀蜂の亜人も意地を見せた。気迫が上がったピッチングで1点だけに抑え。そして……反撃も9回表。


「ええ、ここで守備変更です。ピッチャー『魔王』」


「……ネフィア。お前」


 マウンドにネフィアが立ち。チームメイトと会話していた。笑顔で頷き。彼女はボールを受け取り、打者に背を向けて大きく振りかぶった。グローブに入る球の音が球場に響き。大きい「ストライク」コールで沸き上がる。


「先発王子に抑えから長期戦にネフィアが投げる。考えたなネフィア」


「王配、女王陛下の球。速いですね」


「ああ、もう力で押す球だ」


 俺は耳に手を当ててエルフ族長に話をする。そして……苦虫を噛んだような顔になる。





 私が投げ終わった後、彼女ら昆虫亜人族たちは泣いていた。そのまま頭を下げて握手し、投手だった子が近付いて話をする。


「なんで、あんな球を狙ったんですか?」


「完璧だった。だから失投を狙うしかなかった。それが最後のチャンスだった。私の姿に焦ったこともわかってた」


「……」


 唇を噛み。悔しそうにする。そして……泣きそうな顔をする。


「蜜蜂のあいつら、何にも悪くない。私が悪いだけだった」


「そんなことない!!」


 チームメイトが集まり、彼女の投球を褒め合っていた。凄い投球だったことを皆が後ろで見ていただろう事や、元々敵対していた種族同士だったのが悔し涙で一緒に泣く姿に私は居ることが「無粋」と思いその場を後にして話を聞かない事にした。そのままエルフ族長とすれ違い。挨拶後にそのままエルフ族長が後ろで何か話をしているが私は気にせず進むとトキヤが待っていた。


「大活躍だったな」


「トキヤ……実況席はどうでしたか?」


「楽しかったよ。エルフ族長が来たのはスカウトのためさ。あと、俺と打ち合わせ」


「そっか辛勝だった。針を差すようなコントロールは天才だった」


「まぁ優勝候補だったしな。だが、それにお前は勝った。自信持て」


「ええ、持つ。面白いね、本当に。トキヤのチームと当たるの決勝までかかるんだってね」


「なーにそこまでにはどちらか負けるかもさ」


「そうだね」


 私は彼の隣に立ってもう一度問いかける。


「トキヤって……本当に好きだね野球」


「魂がな疼くんだ。ずっと極まった選手たちの競い合いは本当にわからない。だからかわからないが疼く」


 私もその気持ちに対して頷いた。そしてそのまま彼と球場外へ出たあとに私に久しぶりの魔法を見せた。風の魔法で音を漏らさない隠密の魔法だ。球場内では魔法は使えない強力な呪いのような物が発している。飛ぶこと出来ない。まるで、魔法なんて全く何もかもがない状態になるのだ。だからこそ、純粋な力比べが物を言うのだ。


「どうしました? 珍しいですねその魔法で会話」


「聞かれたくないからな。ネフィア……3日後の試合どうするつもりだ?」


「………」


「お前も聞いただろう『犯行声明』を」


「ええ、『私が負ける事を望む。でなければ、球場に仕込んだ爆発物を使う』て言うんでしょ?」


 魔法の効かない呪いのような磁場が発生している球場で爆発するだけでどれだけ大変なのか私は理解している。我々、生き物は『魔力』の巡回が血流と表皮にあり。それが耐久、力を数倍に上げる作用をしている。今の時代、銃を頭に当てて撃たれても死なない理由の一つである。そんな「守り」が薄い状態の球場では致命傷を負いかねない。故に球場内では「魔法の治療者、治療中者、魔法動力のエレメント族」は注意が必要とされている。


「ああ、2回戦目。相手はどのチームかは明日決まる。そこでお前が負けなければ球場の観客に被害が出るらしい」


「爆発物の検討は?」


「一斉に調べたが不振物はない。持ち物検査もしたが問題なし」


「ならイタズラ?」


「夢見で声明の手紙の主を見たそうだが……『現政権反対派』の旧世代の権力者の悪魔だった。そして、それも予想されており『魔王政権の不満』を示し、大規模の抗争を予定しているそうだ」


「………大事じゃない? 初耳」


「族長が動いてるからな。黒衛兵にも拡散、俺は何もない風に装いながらお前に報告だ。3日目を負けろと言わない。だが勝つなとも言う。野球の忖度ほどムカつくのはないからそれまで決着つけばいいが。相手もやり手。夢魔に対しての防御も施している」


「呪い返しね。トキヤがやってた奴」


 過去に悪夢を見させられた。あれの事だろう。


「お前ほどの夢魔なら貫通するだろうけど。お前に伝えるのも危ない。『お前を殺すために』準備をしてるような奴らだからな」


「普通に野球したい……」


「全くだ。こういう球場の『呪いのような祝福』の隙を狙って脅して負けろと言うんだからな」


「………負けても私に被害ないけどね」


「そうだよな。負けた事でお前が『権力』を失うような事はない。ただ、族長は『失敗』した事で英魔民から怒られるだろうな」


「狙いは族長の『不信任』狙いね。治安維持を主とする衛兵も信頼を失墜させる。でも、それって短絡的では? 失敗する事も許容すべきでしょう」


「ネフィア甘いな。族長は今回、発表するかどうかで意見が食い違ってる。『発表して延期』『発表して開催』『発表して辞める』で意見が食い違ってる。『発表した後の動きが全く決まってない』事が悩ましいんだ」


「でた、議会制で全く決断できない奴……じゃぁ私が発表すればいいじゃない」


「そう、お前が『発表』すればいい。そうすれば全員動ける」


「ああ、そういう……」


 私は理解した。そして、そういう役回りなのも理解した。だからこそ私は笑顔で答える。


「発表するけど、3日目は負ける気はしないよ」


「だろうと思った。『発表後に開催』な」


 トキヤが誰かに伝え、苦笑いして私に「あとで家で話そう」といい私は別れてチームメイトの元へ戻る。次の試合の相手に関して相談するためと、そして。明日から始まる他のチームの話もしようと思う。そして脅されている事も私は話そうと思う。英魔国内で新たな戦場が確かに生まれ落ちた事を私は理解するのだった。




 

































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