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海都市の王子の帰還


 宝くじ時間により、族長多数の投票で私が宝くじ購入禁止の処置が取られた。なお、孤児院運営に当てるとなったので私名義の国立学園に孤児院が併設されることになった。


 身寄りのない子供を族長の都合のいいように教育しようとする教育機関を作るらしい。それも今年に始めるので成果はきっと数十年先の事だろうと思う。もしかしたら未来の族長が生まれるかもしれない。


 そんな事を思いながら、城にある休憩室で族長達が広報のために劇場上で話をするのを魔石から聞きながら休んでいるとトキヤの声が届く。


「ネフィア、お前に客人が来てる。アクアマリンの王子様だ」


「わかった。すぐに行く。場所は?」


「城の門から入ってすぐのテント前」


 魔石をそのまま、衛兵に渡して立ち上がり。城の門の前のテントが張ってある広間に行く。行商の人々が店を出している中で目的の二人に出会った。トキヤはおらず、王子と昆虫亜人族のスカシバが暖かいマルドワインをコップに注いで貰い。飲みながら待っていた。


 私を見てあれこれと目線があるが無視をして二人に会う。


「えっと、おかえりなさいでいいのかしら? 明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」


「あ、はい。ただいまです、女王陛下。こちらこそ、今年もよろしくお願いします。変ですね……人質の身分の筈なのによろしくと言い合うのは」


 スカシバも同じように挨拶し、ワインを飲み干してカップを返す。


「それで……ここでの立ち話もあれなので休憩所でも行って魔石の映像でも眺めながら世間話でもしましょう」


 私は二人を連れて解放されている城内の一角へ向かう。大衆向けに開かれた場所は大聖堂のお祈り待ちと親族との談笑のために開かれ、大きい魔石が族長たちの舞台を見せる。今は都市オペラハウスで舞踏会の映像が流れる。色んな集団による踊りお披露目はあまりに優雅な物から、激しい物まであり。視聴者を楽しませる。売名のために必死さがわかった。


「陛下、本当に賑やかですね何処もかしこも」


「女王陛下。私も初めて見ました。祭りみたいでワクワクです」


「ふふ、二人とも。私も驚いてる。水面下で衛兵が走り回ってるし、大変らしいけどね」


「ええ、ここに来るまでに人が多くて多くて……で、世間話はこんな場所でいいんですか?」


 私は笑顔で頷いて指を鳴らす。魔法禁止の魔法陣にかからないほど小さな魔法を出す。


「私たち以外に声は届きません。夢魔なら夢を見られるかもしれませんが、それは後日ここで調査するしかない。大丈夫ですよ」


「……では、正直な所。帝国と戦うの避けられそうもありません。しかし、聞けば準備に時間をかけるそうです。それが数年とかかると。あとは私が聞いた話で戦争に参加しない事に驚かれてます」


「なるほどね。だから、帰って来たのね」


「……祖国を追われました。あまりに好き勝手言うんで嫌われたようです。私に力がなかったとも言えますし、スカシバを敵視するような奴らですから」


「追われたの? でも、敵視は正解かも。スパイになるし、既にスパイみたいな物よ」


「そうですね。でも、我が祖国は反対者は処罰される所なんです」


「権力者がまた国民より強いのね。独裁政治だったわねそう言えば」


「英魔も独裁政治では?」


「ああ、ちょっと違うと思う。残念だけど、今は独裁政治ではないからね。族長政治と言った方がいいのかな? 9人が実質の国の運営を担ってる。アクアマリンの連合国家と同じ。ただその上に私が置かれてる感じね」


「なるほどですね。勉強になります。それはそうと……エルフ族長に今の報告をしようと思います」


「わかった。エルフ族長にちょっと暇か聞いてみるけど。たぶん忙しい。帰って来たばかりだし、二人で楽しんで来たらどうかな? 在庫処分品なのか、抱き合わせなのか、採算を下げて。多売薄利かもしれない。福袋売りが流行ってるから買ってみるといいわ。それに……彼女はつまらなそうよ」


「い、いえ。女王陛下……私は……」


「わかりました。では、スカシバ行こう。服屋が今売ってる物が気になるだろう?」


「は、はい……しかし」


「君には悪い思いをさせてしまった。これぐらいさせてくれ」


「……気にしませんよ。私は蛾ですから。それは事実です」


「そうだな。女王陛下、失礼します。来週楽しみですね」


「ええ、またね」


 二人が立ち上がってお辞儀をしてこの場を去る。私は頷いた来週何があるかを思い出そうと額に指を突きつけた。その結果、思い出す。


「あ、野球……」


 私は背筋が冷える。忘れていて練習を怠った事を。そして、牙を研いでいるだろう球人たちを想い戦慄する。


「敗退は避けないと」


 思い出してよかった。そして、クンカ王子が帰って来てくれたのが天恵である。私は勝たないといけない、どうしても。


「……怖いなぁ来週」


 野球には絶対はない。私の能力では及ばない。0と1しかない世界なのだ。だから私は喧騒に入らずにこのままここを去った。一人で特訓するために。
















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