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年末の魔王様⑧


 私はトキヤと二人で座り、対面の女性と顔を合わせた。緊張することもないが、私より女王としては格上になる。一年程度の女王と、数百年の女王では格が違うのだ。だからこそ彼女が選ばれたのだろう。


 文句がつけられる質問をするには彼女しかいない。


「お久しぶりです。マクシミリアン第二新王朝第一女王陛下」


「ええ、お久しぶり。大英魔共栄圏第初代女王陛下」


 挨拶に忍ばせる。あなたを女王陛下として認めると言う信用を送り合った。私は彼女がマクシミリアンの女王様と。彼女はマクシミリアンの古き女王から女王として認めている事を示す。相互に信用状を発行しているような状況である。


「……」


「……」


「「クスクス」」


 そして笑いだす、私たち。


「ごめんなさいね。なんか不思議な感じがして」


「いいえ、こちらこそ。長い旅路をお疲れ様です」


「長い旅路ねぇ。今は空路があってお金次第で数日でつくわ。便利な世の中になったものだけど。空飛べる種族との格差は大きくなってる。うちの王朝はそういう種族じゃないから困ってる」


「大丈夫ですよ。きっと普通の英魔でも人でも空が飛べる時代が来ます。空が飛べる原理も確認されつつあります。世界のルール書き換えも」


「それは教えてもらえるのかしら?」


 私はエルフ族長を見ると彼は頷いた。


「いいとの事です。詳しくは族長たちからお聞きください」


「ありがとう。自分たちで出来る事って限りがあるよね。古い種族だから」


「まだ、国を起こしたばかりでしょう。これからです」


 マクシミリアン王朝は順調とは言いづらい。まだ祖国の建物を改修している状態だ。お金の問題もあり、色んな事が山のように残っている。だが、国民は帝国ではないと言うだけでやる気はあるようだ。ただ悲しく思うのは族長達が先行投資で金で王朝の土地を買っている所だろう。それは果たしてマクシミリアンの物と言えるのだろうか?


「何か不安でも?」


「族長が土地を買っている問題はどう思いですか?」


「お金が必要ですからね。また、その土地の所有者がその土地を生かすので今はどうこう言えない状態。まぁ、敵国になった瞬間に接収されるのはよくあるわ。帝国のマクシミリアンの持ち物、全部奪われたしね。そういうリスクもある」


「なるほど、ではあんまり気にしなくてよろしいのですね」


「帝国が買うなら問題だったけど。族長が買うのなら今は大丈夫。なお、買える土地は既に決めてあるので重要資産は非売品よ。そこは……悲しいけど族長達の意見を取り入れてるわ。旧マクシミリアン都市は復興させるけど……そこに入らず。横に新都市を作る予定」


「どうしてですか?」


「重要な文化遺産で観光地化と我々のマクシミリアンの歴史証拠として残すからよ。正当な歴史証明品ね」


 私はそれを聞いて英魔にはそんな物が無いことに気が付く。歴史を重んじる場所はエリック族長のオペラハウスぐらいしか思い付かない。


「英魔にはそう言った物は壊すしかないので大切にしてくださいね。歴史ないですから」


「今から出てくる。私にはわかる。封印されたものを暴いてしまう。気が付かなかった物が見えてくる。きっとね」


「覚悟しておきますぅ」


 既にそんな事件は起きている。すでに不発弾が見つかって被害が出たのもある。悪霊住まう防空壕なるものも聞いている。


「まぁ、世間話はこれくらいにして。『跡取りの予定』はないのかしら?」


「跡取りですか?」


 私は考える。それはほしいと思うが。なかなか来てくれない。


「頑張ってるんですけど……一回死産をしたので……元々男だったこともあって……体が難しいらしいです」


 現状、本当に運が絡む。運がいいと言われる私でも難しいのだから。それは奇跡を願う状態である。もしくは「まだ、作ってはダメである」と言う事があるのかもしれない。時期が悪いのだ。


「わかった。大丈夫よ、必ず出来る。ただ、時期が悪いかも。動乱であなたの手も欲しい中でそれは大変だから」


「そういうことですね。早く落ち着ける時期がくればいいですね」


 きっと私がまだ求められているのだ。子供ではなく。私自身が。


「そういう事です。では次に『恋敵を全て殺したと言うのは事実でしょうか?』とお便りが来ています」


 私は冷や汗を流す。私に質問する相手がマクシミリアンの恩人だからこそ逃げる事のできない事が辛くなる。


「……」


「黙秘、トキヤ殿は覚えがないですか?」


「ある。ただ語弊もある。恋敵を倒したと言うより、勝手に消えて行ったのが多いと思う。有名所では帝国の姫がそうだったが。実は元々所属してた黒騎士にも居て。その時は俺が全員巻き込んで禁術で倒した」


「だ、誰ですかその人」


「黒騎士のバリスタ使いで俺の腹を撃ち抜いた奴だよ。名前は知らなくていい」


 私の記憶にない話だったが、あの逃亡中の出来事だろうと思う。


「私が直々に手を下したのは帝国の姫です。彼女は執着心を持っていましたので。私に嫉妬、恨みを持ち剣でしか決着をつける事しか出来ませんでした」


「後は……刀を持った女騎士かな」


「そうですね。彼女ですよねぇ……紫蘭さん」


 私は自分の腕を掴む。トキヤの技に影響を与えただけならいざ知らず。私の手にある剣筋も影響を与えた。居合いの達人であり、トキヤがなんとかその域に達し。私はまだ少し遅いのかもしれない。


 私のは真似事であり、居合いの剣圧を魔力で誤魔化して炎を纏わせて叩き切る。炎刃の放出で高威力を出している。炎が効かない相手には滅法弱いが、そこから炎によって多くを焼けるので一長一短である。


「あれもトキヤが倒しました」


「そうだな。関わり方で、生きていたかもしれないと考えると惜しい人だった」


「ええ、あの剣筋はもう……失伝してますね。教えようがないです」


「東の国にはあるはずだから。そっち側で探すしかないかな?」


 私は染々と故人を思い出す。エルミア・マクシミリアンが笑顔で頷き、話を切る。


「思い出すのは後でお願い。結論はトキヤ殿が二人、ネフィアさんが一人」


「そうなると思う」


「なかなか本と近い所を沿ってるのね。『質問者は本の編集者』だから。嘘を聞いたようね」


「どこの誰かさんでしょうね? エルフ族長はご存知ないですか?」


 エルフ族長は背中を向けていた。もう誰かさんなんてわかりやすい。


「では最後の質問です。『女王陛下はなんで女王陛下になったのですか? どうやったらなれるんですか?』とかわいいお子さんの質問です」


「女王陛下になれるん方法は私と同じ人生歩んだら慣れるわ。理由はもちろん、その人生がそうだったから。今でこそ運命と片付けるけれど。生きるのに一生懸命だったのよ」


「そうね。生きるのにね」


 何か、エルミアにも通じたのか彼女が微笑み、立ち上がる。


「これで質問は以上よ」


「はい」


 そのまま私も立ち上がり、手を差し出す。エルミアも差し出し握手をして笑顔で頷いた。


「これからもよろしいお願いします。マクシミリアンのお姉さま」


「ええ、こちらこそよろしく」


 同盟国同士の固い絆を見せつけた。そして……他国を牽制する。マクシミリアンの大領地と英魔国の領地だけを見るとそれは大きい大きい国となる。


「海を越えて勢力拡大をマクシミリアンは目指すわ。既に動いてる子がいるようですし」


 スキャラ族長の足が捻れる。緊張感からの動作に私は納得した。そういう動きもあるのかと。


「なるほどです。わかりました」


 私は頷き。あの魔物の住む海に挑み、越えて勢力拡大目指す時代が来ると彼女に教えて貰ったのだった。









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