元魔王さま刺客とバトル..
自分は悩みの種が多い。魔王の寝室を私物化し、アラクネの巣を潰し、自分の権力を見せつける。 簡単だ。もう命令終わっている。だが、ここへ来てふざけた話がある。
「申しあげます。都市で魔王が遊んでいます」
毎日の報告で胃を痛める。遊んでいる事は陽動。自分を囮にし、なにかをする。素晴らしい陽動だ。誰か隠れた戦力があるのだろう。
「まだ、わからぬのか?」
「はい。目的が不明です」
「くぅ……エルフ族長も四天王を辞めると言い出し逃げるように故郷に帰った。なにかあるはずだ」
「はい。必ず見つけます」
刺客を送っているが何もいい成果が上がらない。報酬金も鰻登りにも関わらずだ。
「腕のいい刺客はいないのか?」
「一人、向かわせました」
「そうか、安眠できるように頑張ってくれ」
「はい」
胃薬はまだ必要そうだ。
*
酒場での一時の平和。年末で騒がしいのがあと1日と迫る。
「ああ、今年も終わりですね」
「だなぁ~色々あったなぁ~」
紅茶をのほほんと飲んでいる。私たちはのんびりしている。
「だいたい、半年でありすぎじゃないですか?」
「そんなに多かったか?」
「勇者が攻めて来て。女にして、旅をして、好きになって、黒騎士撃退して、好きなって、看病して、好き、ドラゴン出会って、好き、家を買って、好き、また旅をして、好き、結婚。愛してますトキヤさん。で、親友に出会いましたね」
「好意が半分占めてるじゃぁねぇか!! 所々挟むな!!」
「今年は、恋愛の年でしたね。今年の最後………トキヤと迎えたい」
夜のお誘い。婬魔らしく舌を出す。
「くっそ、かわいいなぁかわいいなぁ~」
「私はかわいい。だって、愛されてますから‼」
「やめてください……ネフィア。恥ずかしいわ」
「満更でもない癖に」
「はは……」
鼻を掻くトキヤ。そんな中で定員が私たちの前に立つ。
「お客様。やめてください………ここでイチャイチャダメですよ。気の張った冒険者たちの場です」
「「すいません」」
二人で謝る。何故、冒険者はモテないのだろうかと疑問に思っていると頭の中で声がした。綺麗な声だ。そう、これは私ではない。こんな神聖な声は聞いた事がない。頭の中で声が響きなぜ冒険者がモテないのかを教えてくれた。
「冒険者がモテないのは居を構えておらず。その土地に縛られないからですね。愛を育てるに大変なんです。それと冒険者同士の恋愛は死に別れが辛いので中々踏ん切りがつかないことも多い。あと、恋仲は仲間内がギスギスする。仲間をそんな目で見れない等が理由です。ネフィアさん」
頭の声に従い全く同じことトキヤに喋り。反応を伺った。「空耳だろうか」と思う。
「死に別れはない。俺が護るし、護れなければ一緒に地獄へ堕ちてやる。仲間内でギスギスは俺ら二人っきりだし関係ない。それに仲間でもあり、友でもあり、頼れる俺だけの姫様だ」
「姫様やだぁ………!! 何度も言ってる‼」
「俺だけの嫁さんだ」
「は~い、嫁です」
心の誰かの声は喜んでいたが。気にせずに彼との時間を満喫するのだった。
*
自分は酒場の入り口を凝視し狙いをつけていた。レンズを覗き、魔法弾に魔力を注ぎ終え。アーティファクトである銃の引き金に指を置く。
アーティファクト銃は魔法の発展と魔物、人間の耐久が上がったために錆びれてしまった技術だ。そして弾に金がかかる。しかし、金さえ出せば魔族の頭を粉々にでき。弓、ボウガンよりも射程が長く、暗殺に向いていた。殺すやつを選べ、その頭を撃ち殺せば弾薬費はちゃらだ。「出てこないな。まぁ……出てきたが最後だ」と考えながら息を潜める。
監視し、魔王を待つ。素晴らしい依頼、巨万の富が約束される。たった一発で。だから、最上位の弾薬を持ってきた。ミスリル鋼の特殊弾薬。どんな、魔力障壁も突き抜けてくれる。
魔力を持つ者、人や魔族が普通の鉄の弾薬では死ななくなった理由に個人の魔力障壁、皮の耐久上昇。簡単に死ななくなっている。だが、工夫すればいい。暗殺も技術は上がっているのだ。魔王が出てきた。
狙いをつけ、息を吸い込み。3割吐き出して息を止め。しっかり銃床を肩に当てる。全身の力を抜いてぶれないようにそっと引き金を引く。時が1秒から数分に伸ばされた感覚。
撃鉄が弾丸の底を蹴り上げ、積めた魔力石を爆発させ弾丸が銃身を回転しながら進み。銃口から火花と硝煙を撒き散らし飛び出す。魔王の頭に向かって。
*
「トキヤ!!」
ぎゅぅうう
「おい!! いきなり背後から抱き付くな‼ 怒られたばっかだろう‼」
「へへへ」
バン!!
「「………」」
*
「!?」
咄嗟に避けられた。地面を抉るだけになった。慌てて薬莢を排出し、弾を込めて狙いをつけようとレンズを覗いた。その瞬間。
「なっ!?」
二人が真っ直ぐこちらを見ている。慌てて引き金を引いた。
ガチャ!!
「ここで弾詰まり!? 焦るな次だ」
銃を持ったまま、その場を離れる。念のため待機していた仲間に合流するために。
「久しぶりだ。失敗したのは」
本当に久しぶりだ。
*
「見ました?」
「見たな」
「イチゴジャムですね?」
「それは賞金の事を言ってるのか………それとも暗喩か?」
「さぁ~どっちでしょうねぇ~」
「じゃ……また後で」
「ええ。後で」
「会おう」
「会いましょう」
*
逃げた路地。本来は冷えている空気なのに今日はやけに湿った空気が纏まりつく。ドロッとした粘り気のある空気に身を引き締めた。
「…………はい、こんにちは」
「!?」
路地裏に綺麗な少女が口元に笑みを浮かべながら立っていた。銃を構えずに、後ろに向き走り出す。後ろから足音が聞こえ続ける。
「ついてきているだと!?」
丁字路を迷いなく足音がついてくる。
「仲間の元へ………」
とにかく、異常事態だ。魔王に見つかった。
「鬼さんはどちら? あなたの後ろ」
「くぅ!!」
ぴったり、後ろから声がする。エルフ族長を倒した人だ近接は勝てない。
「いたっ!!」
ガシッ!!
路地に座り込んでいるみすぼらしい目の前の少女を捕まえ小型の銃をこめかみに当てる。
「近付いたら………??」
振り抜いた先に誰もいなかった。しかし、足音ははっきり聞こえ。しばらくすると、歩いて彼女が現れる。
「鬼さんがみーつけた!」
背筋が冷える。いったい何が起きているのかわからない。
「近付いたら撃つ!!」
脅しをかける。情報によれば人を心配する優しい人格者になったらしい。ならば人質も躊躇するだろう。
「打てば?」
「はぁ!?」
歩いてくる。怖れず歩いてくる。
「止まれ!! 本当に……撃……ぐへっ!!」
腹部に鈍痛がしたと思った瞬間壁に押し付けられ、少女が引き剥がされた。そちらを見ると、彼女のパーティメンバーの一人が一瞥の眼差しを向ける。
「ネフィア。また会ったな」
「ええ、会えました。さぁ、怖いお兄さんは倒しました。大丈夫ですか?」
ターゲットは優しく手を差し出す。だからこそ、勝ったと思えた。
「大丈夫、ですよぉ!!」
少女姿の仲間が銃を引き抜き銃口を魔王の額に向け、引き金を引こうとした瞬間。男の手が仲間の頭を掴まれ壁に押し付けられ、銃弾があらぬ方向へ飛んでいく。
「あっ……あ!?」
自分は震え出す。不意打ちだった筈だった。男の方は自分を掴んでいた筈だった。しかし……はじめて聞く頭を割る音に背筋が冷え、腰が抜けたままになる。
「イチゴジャム………トキヤ…………顔を潰すと賞金首かわからないね」
「咄嗟だから。考えて動けない」
「そうだね。驚いちゃった」
彼らは女の子だったものを見つめて冷静に会話する。壁に押し付けられ縫い付けられたかにように頭らしき場所がくっついている。体が痙攣し、ピクピク動き。目の前の惨状に逃げなければ言う判断に至った。抜けた腰は大丈夫。仲間をやられ焦っただけだ。
「く………」
「炎球」
「うがああああああああああ!!」
立ち上がり、走り出した瞬間に脚に何かかが触れ燃え上がる。その場に転げ、火を払い除ける。火の魔法だ、正確に足を狙ってきやがった。
「首を落とすか?」
「任せました」
「だ、そうだ。首を置いてけ」
火を払い除け、立ち上がろうとした瞬間。首筋に剣先が伸び…………ゆっくり首に触れた。次の瞬間。自分の体と、男が剣を振り抜いた姿が目に写った。
*
ギルドの受付に首を置く。受付嬢は慣れた手つきで首を袋に詰めてお金を渡してくれる。
「お疲れさまでした。けっこう名のある首ですね」
「仲間が居たから。一人じゃないんだろうな」
「まぁでも。リーダーを落とせたのでいいと思います。衛兵に持っていきますね」
「イチゴジャム!! 買えるね‼」
「はいはい」
日常茶飯事。昔に盗賊ギルドに居たときを思い出す。そう、血生臭い世界。
「ネフィア………血は、臓物は怖くないんだな?」
「ええ、だって世界は魔物で溢れている。冒険者なら普通でしょ?」
「そう、普通なんだ………だがな。忘れている奴は多い」
「ふーん」
冒険者、衛兵は臭いなれなければならない。絶対に関わる。人の死に触れる。
「トキヤ~仕事しなくていいね‼」
「まぁな」
世界は、死に溢れている。




