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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1章~始まりは一人の狂人の連れ去り~
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元魔王の冒険者で初めて旅をする..

 我々は魔都へ向けて出発する。舗装されていない荒れた道を3人で歩く。馬を置いてきたのは馬が走れるような道じゃない、魔物、アンデットを呼び寄せる可能性があるからだそうだ。


 今はまだそこまで酷く荒れていない道だが。この先は木が生い茂った森になると聞く。魔都は瓦礫の山らしいのでやっぱり馬は置いていくことになる。結局、お馬さんは邪魔になるのだ。


「二人とも本当にありがとうございます」


「いえ、依頼ですから。気になさらず」


 ドレスみたいなスカートがついた鎧を身に纏ったエルミア嬢が声をかける。きっとこれが彼女の本当の女性用騎士鎧なのだ。年がわからないエルフだが、非常に可愛らしい鎧を着ている。余がわかるのは士気が上がるのかなと思う。男は単調であり、戦場の華になるだろう。


 そう、例えば立派な悪魔の女性が装飾過多な白い鎧に白馬で戦場の前線で駆けていればきっと素晴らしく士気が上がるだろうと思う。


「報酬がいいからな。頑張れ、下僕」


「報酬は屋敷に帰ってきたら使用人が用意してますわ」


 前方で大剣を振り回し、草を刈りながら前を進む勇者に話しかける。今更だが勇者の武器の事を聞き。それがツヴァイハンダーと言う両手剣らしい。


 刃の根元は力一杯振れるように革が巻いてある。そこを掴み力一杯押すのに役立つらしく、そのまま叩き斬る重量級武器だ。片手でナイフのように軽々と振り回すので忘れるが重量がある武器だ。片手で振り回す重量武器。「化け物かこいつ」と背筋が冷えた。草刈りで使うことの無い。本来は人を殺す武器だ。


「草刈りを頑張るから近付くな、危ないぞ。それより昨日、鍵閉めたのはエルミア嬢か?」


「もちろんですわ。最後かもしれませんし」


「はぁ? 何故だ?」


「はっきり言います。死ぬかも知れません」


 エルミア嬢が言い放つ。迷いない事にそこまで酷いのかと思われた。


「なんかそこまで言われると恐くなるな」


 幽霊出ないと良いのだが。それはわからない。


「今から帰ってもよろしくてよ? ネフィアちゃん」


「ちゃん付けしないでくれ。男だ」


「あら? こんな可愛いのに?」


「今は体が女なんだ」


 もう、ばれてしまっているので事の顛末を話す。エルミア嬢は何故か笑顔になり勇者の背後に立った。


「ねぇ、あなたは何故そんなことを?」


「残念、エルミア嬢。あなたもなにも言わないので言いません」


「そうきたのね。じゃぁいいわ。でも彼女が危ないわよ?」


「大丈夫、俺が護りますから」


「そう………ふふ、羨ましい」


 エルミア嬢はまた、寂しそうな顔をする。自分はやはり、彼女の顔の意図が読めず。それ以降、皆が無口になった。そして……日が沈む。


「今日はこれ以上は進めないな。野宿しよう」


 勇者の一言で、野宿の準備を行う。てきぱきと夜営出来る準備を行った。火を焚くのは寝る前に。時期はまだ春頃だか夜は冷えてしまう。


 火を焚くと野党が現れたりするが、ここは野党は少ないと聞き女性二人もいるので焚くらしく。女扱いするなと言ったが聞いて貰えなかった。


 食事は携帯用の小麦粉を練り固く焼いた物をいただく。途中で魔物に会えば魔物を刈るのだが遭遇率が少ない。恐ろしいほどに森は静かである。


「なかなか旅になれているのですね。トキヤ殿」


「まぁ、一人で魔王城まで行ったからな」


「魔王城へ? 一人で北を旅したと?」


「まったく。ナイフ一本で余の前に現れたときは正気かと疑ったがな」


 最近の出来事だったがあの時を懐かしむ。あのあとのキスをした蛮行は忘れたことにする。いや、忘れたい。


「別に戦争に行くわけじゃないしな」


「ふふふ、トキヤ殿は底知れない力をお持ちですね。あの黒騎士団長が推薦した人としても」


「黒騎士に恩は感じない方がいい。厄介払いだからな……こっちに話をまわしたことは」


「同じこと言われましたわ」


「そうか。団長は感情では動かないから気を付けな。敵にするならだが」


「ええ、生きていれば気を付けます。それよりお二方!!」


 エルミア嬢が手を会わせ首を傾げながら笑い、楽しそうな声を響かせる。


「仲は何処まで行ってるのですか?」


 少女の好奇心のような質問。余は察して嫌な顔をする。勇者は笑い、余計に不快にしてくる。


「何度も言うが‼ まったくお前が言うような関係ではないぞ‼」


 自分は立ち上がって抗議する。「絶対そんなことはあってはならない」と心を込めて言い聞かせる。


「あら? 昨日は仲良く寝ていたのでは?」


「それは!! 廊下で寝るなぞ可哀想だから慈悲をくれてやったんだ」


「あら? でも、勇者トキヤ殿は違うのですか?」


「違わない。思っている通りで俺は……」


 勇者が真面目な顔で言葉を紡ぐ。


「ネフィアが好きだ」


 一瞬、体がビクッと反応する。あまりの恥ずかしい言葉に顔が熱くなる。


「お、おま!! 気持ち悪い!!」


「…………こう言ってますけど?」


「俺の感情は『好き』ってだけですよ。だけど、感情は感情。俺の目的は絶対彼女を護ると決めたんです。関係ないですよ」


「嫌われても?」


「嫌われたら、護りにくいので嫌われないようにしたいですね」


「じゃぁ、聞くけど彼女は魔王と知ってても護るの? あなた勇者の見習いなら。帝国の規定に反しても?」


「もちろん、そんなものは全て小事だ。勇者じゃないですし」


「その道は、大変よ。皆の敵になってしまうかもしれない。魔王なら尚更、人間には敵」


 勇者が胸のロケットペンタンドを握り締めている。御守りなのだろう。あんなに強く握るのだから。


「そんなのは、遥か昔にした覚悟です」


 それを聞き、真っ直ぐな真面目な表情にビックリする。自分は背中を向けて顔を隠す。火が吹きそうなほど顔が熱い。


「ふふ、若いっていいね、妬ける。遥か昔を思い出すわぁ…………さぁ寝ましょう。一人、出来上がってるから」


「う、うるさい。勇者が恥ずかしいことをベラベラと……よく恥ずかしくないなお前……」


「ああ、恥ずかしくない。ネフィア。おやすみ」


「くぅっ。黙れ勇者…………」


 寝袋を羽織り横になる。


「………おやすみ」


「おう」


 勇者のうれしそうな声が響いた。気にせずに目を閉じる。こんなに想われるのは慣れていない。





 人間と言うものに捕まった。


 木の手錠という物は冷たい。


 森での木の暖かみも感じれない。


 男の体は重い。


 下半身も、大きくなる胸もドロドロである。


 何度も何度も私は汚される。


 いったい、いつまで続くかわからない。わからない。帰りたい。





「うぷぅ!?」


 寝ている体を起こす。まだ日は上っていないが焚き火の残り火で少し明るい。


「起きたか? また悪夢か?」


 木に腰かけて寝ていたのだろう勇者が声をかける。大剣を肩にかけて。


「そ、そのようだな。悪夢だった」


「ほら、水だ」


「う、うむ」


 勇者が水筒を差し出す。


「いただこ………いや、いい」


 勇者の飲み口に嫌悪感が生まれたので断る。


「間接も嫌か、ほらコップを持て」


 空の木製のコップを手渡される。中には何もない。


「中には何もないぞ?」


ちゃぷん


「よく見ろ、入っている」


「う、うむ?」


「おやすみ。早く寝ないと明日に響くぞ」


 自分は水を見る。綺麗な水だ。しかし、今さっきまで重さも無かった。無かった筈だ。勇者はもう目を閉じて寝ている。


「……………こいつ」


 水を扱う魔法使いだったのかとこの時、考えた。だが、もう勇者は眠っている。






 旅の道のりは思ったほど歩きにくい所はなく順調に進んだ。森の切れ目に差し掛かり、開けた平地に出た。


 平地は酷く臭い、驚きを隠せないほど腐敗している。草木一本も生えず、至るところにドロッとした沼が広がり、水も黒い。そして、もぞもぞ動くものが遠くからでも見えた。空気も重たく感じ、障気が目に見えるくらい漂っている。見た瞬間、自分は言葉を思い出す。


「不浄地………」


 昔から、このような酷く。呪われし汚れた地はある。多いのは大合戦場や大きな都市の虐殺など、身の毛のよだつ過去を持つ土地に多く。それが土地に傷を負わせる。


「ネフィア。さすがに知ってるんだなこういうの」


「魔族では不浄地と呼び。一部の耐性がある魔族の住みかだ。北にその土地は多く。耐性のない魔物も避ける故に壁が要らない場所だが……住めるのは一部の者だけだな」


 魔国でも滅多に行かない場所である。オーク族とダークエルフ族の領地だ。


「確か、突然変異スライム、妖精族の一部、ダークエルフだけか?」


「詳しいな、勇者。オーク族もだ」


「まぁ、冒険者ならここに入り込み宝物を盗むぐらいはする」


 オーク族は確かに金は持ってそうだ。


「もしや、勇者トキヤ殿は得意ですか? こういう不浄な者たちに対して」


「ああ、不浄者や。呪いは大得意だ。だがここは勝手が違うようだな…………そうスケルトンの軍団が相手じゃな。時間がかかる」


 目の前に広がる錆びた剣と盾を持ち、朽ちた鎧を一部だけ身につけフラフラと巡回している。勇者が自分を一度見たあとに前を向く。


「お前を護れないかもしれないな。だが、これで護れないなら先はない。ん、エルミア嬢!?」


「エルミア!?」


 勇者と自分が叫ぶ。エルミア嬢が一人剣を抜き、走り出したのだ。作戦もなにもない。ただ、真っ直ぐに走り出す。


「王の間への道は分かる!! 結局、戦わないと進めない」


「くっ!! 勇者!! どうする!!」


 自分は自然に勇者に頼ってしまった。何も考えず、口に出てしまった。


「依頼主の言う通りにしよう。良かったな実戦だぞ」


「…………まったく嬉しくない」


 二人して追いかける。エルミア嬢の背を追い、勇者が前に出て大剣を抜く。


 その姿は本当に……勇敢なる者の姿だった。






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