呪いの品々
ある日、寒くなって冬への準備を感じる時期。嫁であるネフィアが王宮を食べ物を持って走り回っていた。忙しく走り、何をしているかと思えば……
「ご飯ですよぉ」
動物にエサをあげていた。見た目は犬のようだが足が短い。たぬきと言う動物。そして、犬もいる。鳥もおり、ライオンだろうか? 魔物を一回り小さくした動物達がネフィアにエサを貰っていた。
「なーんだ。動物にエサを………待て!! ネフィア!!」
俺は普通に野生動物に餌付けと思ったが……ここは空の孤島。隔離された王宮であり。野生動物なんて鳥と虫しかこれない。そんなところに動物がいっぱい居るのだ。
怪しいことこの上ない。
「ひゃい!?」
「お前、ペット禁止だろここ!!」
動物が落下して危ないため禁止である。飛べない動物は基本ダメである。屋根に遺体がへばりつくのだ。
「ぺ、ペットじゃないよ!!」
「じゃぁ~なんだこの動物たちは!!」
「魂を見てトキヤ!!」
「魂……これは!?」
俺は驚く。魂の重さが動物のそれとはかけ離れた量だと言うことを。そして……肉体はないのだろうと。実際、餌は燃え出し。燃えた煙を動物は噛みついている。
「動物霊、でも……これは……」
「わかる? 動物霊だけど、神使い」
「神使い……」
「呪いの道具とか言われてるの集めてこの王宮にしまわれてるんだけど。間違ってつくもがみの奴も持ってくるからこんな感じになっちゃってる。浄化した呪いの物も元々憑いてた物が穢れを払ったら。変身したのもある」
「それでこんな動物みたいな……言葉はわかるのか?」
「わかるのかな。わかる子、挙手」
動物の右手を上げるのが数匹。流石に神格は低いようだ。
「英魔国内では、神が具現化なんて日常茶飯事。でも、この子らは捨てられた道具だし……どうしようかなって」
「働かせれば?」
「どうやって?」
「いや、珍しい小動物魔物だから。触れあい広場として何処かに集めて自由に触れるようにして持って帰って貰ってもいいし。教会に送ればいいじゃん。神使いなら、お前が上で使役すればいいんじゃね?」
「おおお、天才、喝采、大天才」
パチパチと手を叩くネフィア。俺は耳につけている魔石で知り合いのギルド長に声をかける。英魔国首都ギルド長は今や俺の親友がしている。耳にかわいい夢魔のお嬢さんの声で呼び出して貰う。
「もしもしランス、人材探しで……魔物使いと商売人で暇してるのいないか?」
「手配ですか? 忙しいですからすぐに見つかりませんよ?」
「じゃぁ、依頼出しといて。ネフィアの呪い浄化品の売買、搬送。また、つくもがみの物品もある。神使いとして教会に送りたいし……そういう人材頼む」
「わかりました。名前は王配トキヤですか?」
「ネフィア・ネロリリスで」
「はい。用意しておきます」
話が早い、きっと誰かが来てくれるだろう。女王の名前だ。
「トキヤ、売っちゃうのこんなにかわいいタヌキちゃん」
冬毛の犬のような生き物をネフィアは抱き抱える。俺は首を振って答えた。
「こんな場所じゃぁ……俺と天使とお前だけしか認識せず。神として弱まるばかりだ。それにこんなに愛らしいなら。宿屋の前でも置いておくと招きタヌキとして重宝するよな」
「そうですね。こんな所より、人に役にたちたいですよね」
タヌキは元気よくキャンと吠えた。くりっとした目がかわいいのできっと誰かがすぐ買ってくれるだろうと思ったのだった。
*
数日後、物品の多くを無償で引き取ってくれる業者が現れた。トンヤ商会と言う大企業が引き取り。数ヶ月かけて色んな所へ配送されて行ったと聞く。金持ちの金庫番黄金ライオン、招き猫の宿前客引き。教会の番犬、守り獣、道案内など。変わった業種で活躍していると聞いた。
ネフィアも満足して、たまに来る。3つの足のカラスから教会の番犬になった子たちの話を聞いていた。使い魔ネットワークがいつの間にか出来上がった。
雲の巣のような複雑な連絡網……非常に大変な時代に移り変わっている。
そんな世界の変異を感じながら、ダークエルフ族長と監視のため、夜店を視察していた時だった。ピリッとした空気が漂った中で声をかけてくる一匹の娘がいた。
娘は英魔獣人族の特徴があったが、簡単に判断できない。オーク族かもしれないし、悪魔かもしれない。事細かな情報でやっと判断出来る。なお結婚などしてるようなら、絶対わからない。元種族しかわからない。何故ならオーク族でもエルフ族かもしれないのだ。難しい……
「ん?」
まん丸の耳に太い尻尾が特徴で、胸の空いた服を着ている。もう年が終わる準備をする時期だ寒くないのだろうか?
「お兄さんお兄さん……こんにちは。おひさしゅうやで」
「店引きは店から5mまでと規定されてるが? わざわざ違反を見せるのか?」
「店引きちゃうで~確かに店引きやけど~今は再開を喜んでるんや」
ダークエルフ族長……バルバドスが恐怖の表情をする。浮気を疑われており、おれは首を振る。やめろ、ネフィア言うな絶対に。
「はは、勘違いしよるなぁ……これやったらわかるやろ」
ポンっと姿を変えるとかわいらしいタヌキになる。俺は思いだした。あの時、ネフィアに抱かれたタヌキだ。思い出した事をわかったのか姿を戻し、客引きのお嬢さんになる。
「ごっつい、めんこいやろ? あれからあんさんの言うとおり、客引きのつくもがみで頑張ったら。客も取れるぐらいに大きいなってん。感謝されると頑張ってまうの思い出せたわ。あの時の恩は感謝しかないで」
驚いた。あのつくもがみがこんな姿になってるとは。
「よかった。居場所が出来て。ただ、驚いた。客引きと冗談で言ったけどこうなるとは」
「わたしぃも驚いたで。こんな所で出会えるんさかい。せや、タダで相手できるけど……どうや? サービスしたるで」
「すまん。俺の奥さん女王なんだ。殺される。俺も君も」
「ふふ、知ってる冗談や。しっかりとみーんな……みてるさかい。きいつけや。他にも居るで……客引きに」
「ありがとう。肝に命じとくよ」
浮気包囲網。まさにネット。クモの巣。
「ああ、せや。ダークエルフの族長さん」
俺ではない隣で固まってる族長に声をかける。ビクッとした彼に怪しいからビビらない事を告げ口する。恐妻家なんだよなぁこいつの奥さん。
「あんたの義兄さんに言うとき……ちょっと遊びすぎやって……客引きが相手して泣いとるで、次にお客様とれへんなるって。手加減してやってくれ。婬魔ちゃうんやろ? あの人」
頭を俺は抑える。なーにやってるんだエルフ族長。
「わかったよ。義兄さんに注意しとく……ごめんな荒らして」
「ええよええよ。こうやって商売になってるんのは……衛兵さんのお陰やしな。たまには金おとしてなぁ~色男のお二人さん。お仕事で視察もええけど~羽目はずさないかんでぇ。そんときはワイを使命してくれてええよ、客引きやけど特別に相手するよぉ」
彼女はそう言いながら去り、俺達二人は溜め息を吐く。つくもかみが居るんだ、彼女彼らで治安維持されて、いいのだろう。何故ならネフィアの神使いなのだから。
「でも、なんで水商売に堕ちたんだ? トキヤ」
「ネフィアが婬魔だからだろ。一応、悪魔で淫らだからな」
「……あ」
ダークエルフ族長はわかったようだ。神使いとなるなら、その誰の神使いかと考えると……分かりやすい。俺は後日……教会に送ったつくもがみも同じような変化をしていないか調べる事になる。
幸い……水商売のような事にはなってなかったので安心はしたが。動物から変わったと言う話を聞き。急遽、ギルドカードが発行される事になった。
どんな存在も英魔族にしてしまう英魔の国が恐ろしいと思う今日この頃である。まるで神話の大地のように。




