女王の瞳⑩
血溜まりの店内の中で聖職者の服装で隠れている表情を私は暴く。フードを外し仮面を外した時に気がつく。
「レオ組だ……いいえ。獣人だけで特定は出来ません」
「姉ちゃん、手加減して気絶させてた奴ら起きたよ」
私達にとって彼らはあまり強くはなかった。剣と盾で武装しているが、盾越しでも衝撃を通すほどに私たちの義手はパワーがある。打撃戦は得意であり、室内で取り回しやすい事で優勢で勝負が決まった。
何人か、殺したかもしれないが。一応手足を魔法で拘束する。アーム用の手枷が役に立った。
「あぐ……ここは? 君たちは?」
「あれ、今さっき襲ってきたのにそんな惚けるの?」
「『暴力者』!? なぜここに!?」
戦っている時と雰囲気が違う。何か変……
「えっと……ここは飲食店で海老を食べてた」
素直に答えるアーム。そんな中で、アイが少数の衛兵を連れて顔を出した。
「待たせた。教会にでずっぱりで人員が少なかったんだ……っておい。そいつ」
「お知り合いですか?」
「実行部隊の奴らだよ。今日、教会へ突入した」
私は彼を見ると落ち着き、そしてアイに向けて報告する。その冷徹な感じから……本当に精鋭なのだと感じた。驚かず素直に状況を分析している。
「アイ……報告してくれ。これは操られてる。教会に入った俺の記憶が地下へ続く道を見つけてから無くなってる。俺も対魔眼処置していたが……このざまさ」
「わかった。すまない皆、救護を……俺はサンライトとアームに話を伺うよ」
そう言いながら彼は私たちに頭を下げる。そして、今の状況を私たちで説明する。
「狙われたのか。君が……」
「そう、姉ちゃん見て皆が一斉に『祝福されしもの』と言って」
「わかった。警護はいるかい?」
「襲った精鋭より強いのでしょうか?」
「要らないな。残念だが彼らより強いのは少ない。それよりも……事情聴取で何か情報があったらお伝えしよう。今日のお詫びは後日でする」
「ねぇねぇアイ」
「なんだ?」
「店のもん食べていい?」
「……拾い食いはやめろアーム。それよりも……早く帰った方がいい。また襲撃されるかもしれない」
私は頷き、アームを連れて彼女の家へ向かわず。他の宿屋を探すのだった。
*
服を全て買い、着替えて身構えて睡眠を取った次の日。事情聴取が終わったアイから連絡が来る。徹夜だったろう彼から衝撃な話を聞く。
「事情聴取前に一部が自害した。正常だと思い枷を外した瞬間に近くにあった刃物を的確に拾い、心臓を一突きだ。自害できなかった物は苦しんだあとに頭を壁にぶつけて気絶。事情聴取は出来なかった」
「恐ろしいですね」
「ああ、恐ろしい。だが、わかった事もある。強い支配を受けている事がわかる。強力な対魔法防御を突き抜けて支配をしている。心当たりは……そういう魔眼が出回っている事だ」
「あるんですか? そんな恐ろしい物が」
「伝説級の物だが。文献はある。赤い瞳であり、屈強な者を選ぶ眼であり……なかなかな被害が出ている物らしい」
「敵側の切り札ですね。それを使わないといけない状況になる事はきっと……」
「ああ、そうだ。一件のそれもアームが見ていた教会に軍との協議で我々に任された部隊だけが影響を受けているし。ほかの教会は調べても問題なかった報告が上がってきている。もう1つだけに絞られた訳だ」
「次の手はどうするんですか?」
「軍が動く。だが、同じ失敗を繰り返すだろう。軍が編成中でいつ来るかは未定だ」
アームに一旦家に帰りアームの義手を取っ手来ようと提案する。荒事になる。
「君たちは狙われた事も不明」
「いいえ、それは知れるかもしれません」
「なに?」
「教会に行ってみます」
「危ないぞ!? 我々に……いや。そういう事だろうな」
アイは納得し、命令のような依頼を述べる。
「教会に突入し、実行犯を叩け。以上かな」
「捕まえるじゃないんですね」
「残念だが。手加減は死ぬだろう。軍には私から言っておくよ」
「はい、ありがとうございます」
通話を切り、私は義手を撫でる。魔力を流し込み、スッとイメージを浮かばせると一本の光る剣が生まれる。アームはそれを見てキラキラと目を輝かせた。
「すごい、綺麗な光」
「ええ、私の切り札です。姪のない剣です。アーム……行きますよ。教会へ。狙いは私だったと言う事です」
「うん」
私はアイとアームの晩餐を邪魔した奴を罰しに向かおうと決めた。
「その前に整備が必要ですね……」
*
アームの家はボロボロに荒らされていた。誰が荒らしたかわからないが確かに目標として私が狙われている。
理由はわからないが……ここに居る間は狙われ続けて迷惑をかけるだろう。
「ごめんなさい。私が何か狙われてるばっかりに」
「いいよ、別に。アイの家に行くから」
「……そこまではお姉ちゃんでも許しませんよ?」
「なんで?」
「それは……間違いが起きます」
荒れた部屋で何を私は言ってるのだろうか……
「ふーん。アイ臆病だから無理だと思うよ。それに……こんなに散らかってるの掃除いやだ」
「私が手伝いますから。それよりも……早く換装しましょう」
「はーい」
アームの腕が転がっている。動かそうとした形跡はあるが重く、動かす事しか出来なかったのだろう。持ち逃げするには重いし目立つ。それをアームは義手を外した付け替えた。服をそのまま魔法で浮かして着替え。前のボタンをしめて終わる。
私たちは鎧を着ない。重量過多なため。
「お姉ちゃん。いけるいける」
「では、屋根伝いで行きましょう」
荒らされた部屋を背に立ち去ろうとした瞬間。一枚の肖像画が目に入る。それはアームと私が立っており。綺麗な額縁に入っていた。
「あ……それ」
「……これ、立て掛け直しましょう。それも見える所でね」
「うん……わかった」
荒らされるのも悪くないと思えるぐらいに私に余裕がある。戦いの前だと言うのに義眼の右目が疼く。
女王陛下が見ている。




