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女王の瞳⑨


 夕刻、私はアイに呼ばれる。アームと私はその呼ばれた場所は料亭であり、流石にアームの腕は換装し用意していた私のスペアをつける。


 服装も流石に呼ばれた場所が場所なのでドレスを着させ、髪を整える。面倒臭がっているが私は彼女に徹底させる。理由はもちろん、彼が喜ぶだろうからだ。


 準備を済ませ、繁華街の一店舗に顔を出す。店舗に入ると手際よく個室に案内してくれる。アームは子供のように珍しい場所でキラキラとした瞳を向けている。


「こんな店、追い出されるのにお姉ちゃん凄い」


「あなたが落ち着いたら入れるようになります」


「えええ、なら一生来なくていい」


「たぶん一生はないでしょうね」


 私は頬を緩めてアームの手を繋いだまま案内された個室に入る。するとそこに先に座っているアイが綺麗な金髪に正装で待っていた。挨拶をしようとしたが、言葉につまっている。


「おう、アイじゃん。正装してるねぇ。見てみて!! 姉ちゃんが全部してくれたぁ」


「ああ、こんばんわ。よく似合ってる。本当に」


「喜んでいただいて良かったです」


「……全く。君には敵わない事を何度も気付かされるよ」


 私は満足しているだろう彼の正面に立ち。彼の横にわざとアームを座らせる。それも私が椅子を掴んで位置を少しずらして近付けさせる。アームは何も知らずに席に座り、出てくる料理にワクワクしている。純粋に。


「食べ方が許せない場合は叩いてどうぞ」


「姉ちゃん!?」


「ああ、わかった。そうさせてもらうよ」


 私が正面な理由はもちろんこれがデートというわけではない。アームがお酒の瓶を開けてアイに注ぐ。面白いのは手慣れており、アイが驚いていた。


「奴隷時代の名残り~そんな驚いて面白い」


「あ、ああ。奴隷時代ね」


 軽く重い話をするアームにたじたじだが、その光景に胸が暖かくなる。


「私はお邪魔ですか?」


「いいえ、お話をすぐします。その申し訳ないのですが……今回の事件で教会等々を家宅捜査する所まで来ましたが。ここからは私以外の実行部隊と軍の競争になります。突入も全て私たちで行いますので……」


「わかりました。私たちは手を引くんですね」


「数が数ですし、多くの情報、軍との橋渡しとして活躍していただいた事。感謝します」


「えええええ、アームは暴れられると思ったのにぃ!? お預け!?」


「アーム。切り札だ君は」


「ほえ?」


「レオ組で君に勝てる個人と部隊、衛兵はいない。逆に動きやすい個人であり……何かあった時の一矢になってもらう。そのときは劣勢で暴れまくれるからこっちのが楽しいと思うよ」


「なら、切り札する。それよりも料理まだぁ!!」


 アイが笑いながら店員を呼び、お願いをする。料理コースは海側からの空輸で来る海産物らしい。内陸で食べるには高くつくだろう。


「海老?」


「ああ、海老だ。それも大型の海老だ。食べたことないだろう?」


「ワクワクだね!!」


「ああ」


 私は話が進まない事に苦笑いしながら。アイが奢る理由がわかった。謝りなのだ……今回の作戦不参加と言うことの。人によっては激怒物だろう。彼もきっと怒りを表しただろう。


「残念でしたね。アイさんも」


「いや、私の仕事は犯人を捕まえる事だ。今回は犯人の尻尾まで来ている。外された理由も正当だ。抗争に発展するだろう。そうなればお門違いになる」


「ああ、だから力があるアームを利用してたんですね。個人の調査で荒事は大変ですから」


「もちろんそれもあるが。彼女は処刑をする権利者なんだ。本来は薬を投与、首吊りなどあるが。処刑する場合は心が痛むため誰もやりたがらない」


「そうですね。それが普通に『成った』と言います」


「そう、数年前が夢のようだ。毎日毎日何処かで殺し殺され、戦争して。私もいつか戦死するだろうと腹は括っていた。気付けば……そんな事はなかったよ」


「海老うまぁ!!」


 運ばれた海老を皮ごとバリバリと食べるアーム。食べ方が豪快だが、アイはそんな彼女には慣れているのだろう。皮をむいで海老を食べる。私も同じように食しながらふと頭に衝撃が走る。


 匂う血の争い。血の匂いに私は背筋がピりつく。騒ぎが起きる臭いであり。アームも海老をほうばったまま、席から離れてアイを呼ぶ。


「逃げるよアイ」


「アーム!? そうか!! そうなのか!!」


 納得の早さに驚くよりも、彼は入口を魔法で封じ。個室に設置された出口を開ける。悲鳴と怒号、激しい戦いが始まった中で私たちはアイだけを逃がす。


「君たちは逃げないのか!?」


「美味しい海老を食べたし、もうちょと料理が食べたい」


「店で暴れる理由を聞きます。現行犯逮捕はアイさんお願いします」


「わかった!! すぐに応援呼ぶ!! 君たち……陽の加護があらんことを」


「「加護があらんことを」」


 私は義手を隠す手袋を外す。黒光りする義手にアームも同じ事をする。そして、手の感触を確かめながらアームは聞き返す。


「こんな細い腕で勝てるの?」


「アーム、あなたの義手と同じくらい頑丈で力が出ますよ。ただ……リーチはないので」


「早く殺せだね」


 私は頷き入口の扉を開けて広い通路に出る。すると……聖職者の衣装を着た男が数人が部屋を調べていた。そのまま私らを視認すると指を差して叫ぶ。


「いたぞ!! 『祝福されしもの』が」


「お姉ちゃん。何したの? お姉ちゃんが標的だよ?」


「ごめんなさい。心当たりは沢山ございます。ですので荒事にも少々、覚えがございます」


「ふーん。少々……嘘つき」


 私は切り札の用意をし、ドレスを動きやすいように破き。アームが咆哮をあげると同時に攻めに入るのだった。




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