表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
582/732

女王の瞳⑤


 お金の工面に苦労している事を私は商人から聞かされる。


「すまない……実は……眼球の値段を払えるほど今は手持ちがない。眼球を売りに来る人からの値段差額で利益を上げてるため……少し足りないんだ。お客を待たせているから後払いなんだ」


「そうですか、わかりました。そんな気がしてましたのすでにせぇんしぇいから待つように言われてました。眼球は宝石で作るので高価です。わかっております」


「ありがとう」


「では、失礼します」


 私はお金の徴収に来たが無理だった事を確認し、店を出る。そして待っていてくれている妹に暇であることを溢す。


「お姉さま……あれだね、ちょうど時間あるね? 見回りと事件を追うのどっちにする?」


「そうですね。折角なのでアームの仕事風景でも眺めます」


「はーい……じゃぁ待ってて」


 妹が空を見上げる。なお、高い建物の路地なので少しばかりの空だ。そのまま誰かと連絡する。


「軍から……眼球窃盗の調査許可貰ったから。仕事する」


「今まで仕事しなかったんですか?」


「軍から依頼されないとしないし、私は個人部隊員の戦闘要員だから。犯罪者ボコボコメイン」


「じゃぁ……情報はいただいたんですか?」


「軍の夢魔姉からは……夢追いでも顔を隠しててわからないし、魔眼で夢にも影響して。夢魔姉に被害出てるから追跡できないって」


「ほぼ何も無いんですね情報」


「うんうん~だからさ~裏に行く」


「……」


「ねえぇちゃあああん。気をつけてね? 孕まされちゃうよ?」


「わかりました。行きます」


 私はこの都市の裏側。それもダークな部分へと身を落す。





 都市の郊外、壁の外は一部が門からの道続きで繁華街となってその繁華街の持ち主による治世を行っていた。壁がなくてもモンスターは少ない故に首都より危険は少ない。軍関係は無く、許可のない自由がある代わりに壁の外、都市の郊外であり、整備もされない。しかし、だからと言って整備はされていないわけじゃなく皆が協力して自由なその場所を護っていた。私たちはそこに向かう、こんな場所だからこそ集まる情報もある。


「いい場所ですね。ここは」


「お姉さま好みと思った。軍は関係ない。力が全ての実力社会。吹きだまりのような場所だけど……悪くない。情報買うなら酒場だね」


「ええ」


 目立つ私は髪色を変えて潜入する。きらびやかな服装の男性女性はおらず、閑散としていた。そんな中で珍しい地下にある酒場に足を踏み入れる。隠れた場所で静かに飲むための人型のみが来れる場所。


「いらっしゃい。何に致しましょう?」


「エルフ領のウイスキーはありますか?」


「ございます」


「では、お願いします」


「姉さんと同じので」


 慣れ親しんだ酒である。父上が用意したわかりやすい銘柄だ。どこでも置いている普遍な物をと。妹はマスターに竹のストローで出されたのを飲む。


「うーん……マスター情報屋紹介してよ」


「この前の情報屋は?」


「私に売った情報で殺された」


「そうですか……」


「なら、俺でどうかな? エルフの二人」


 グラスを持って立ち上がった一人の亜人。その姿は獣人であり、耳と特徴的な尻尾がある。ブチ模様のある毛並みが特徴だ。


「えっと……」


「ああ、英魔族リザード族長軍衛兵獣人族ブチハイエナ族のヒュウだ。よろしく……おっと、これも仕事の一環だから大目に見てよ」


「汚職現場をですか?」


「ははは、ここでは軍は関係ない。好き勝手に出来るの」


「……」


「疑わしい」


「まぁねぇ。でも軍関係者って言ったから信用してよ。逆に俺も信用出来るか考えるからさ」


 こういう口の軽そうな演技は匂い立つ特殊部隊員な感じがする。同じような匂いに気がついたのか私の隣へ座った。


「……君、少し異質だね。綺麗な瞳は盗まれるよ」


「そうですね。義眼ですけど……大切な物です」


「手袋……目立つね」


 私は義手を隠すために手袋をしている。外した瞬間にわかるのだ。


「最近、黒い義手を持った女性が都市に入り。ここ有楽街が騒がしくなった。軍関係として情報が売れ……魔眼狩りなどの噂が大きくなってる」


 私にそんな影響力があると思えない。そして……それは認識の齟齬を生む。今一度、聞こう。


「その黒い義手の人はどんな人なんですか? 影響あると思えません」


「光輝く刀剣を持ち、黒い義手は黒衛兵であり、女王陛下に絶対の忠誠を誓う、断罪者。多くの事件に関わり、多くの事件の当事者となり、多くの事件を解決へと導く。黒衛兵の一人。その特権は貴族以上とも」


 光輝く刀剣は刀貨だ。私は懐にそれを装備し、切り札としている。義手義足で魔法は少々な私にとって大切な防衛手段である。


「そんな凄い人が……」


「……その黒衛兵は夢魔であり、そして瞳は義眼である。綺麗な宝石のような瞳だ」


 ここまで知っているとどうもバレている気がする。


「調べてますね。では、問題です。その人の名前は?」


「サンライト……この前、義眼の移植屋に出入りし、魔眼狩りの被害者を見つけた。私の同僚の夢魔から確信。君がそうだ。肖像画も見せて貰ったよ。そして、珍しくそこの『破壊者』が大人しくしている相手の夢魔は彼女だであり、この店に来るだろう事は考えていた」


「なるほどですね。本当に調べてます。正解です」


 私は髪色を戻す。そして、手袋を外して答えを見せる。


「あなたは私を知りました。お分かりですね?」


「ああ、誓うよ裏切らない。生与奪を持っている噂がある。親族を巻き込めない」


「よろしいです」


 嘘なんですけどね。その噂。


「姉さんって凄いんだねぇ~」


「凄くないですよ。女王陛下に比べれば足元にも追い付きません」


「君……本当に『暴力者』か? 大人しすぎない?」


「顔は覚えた。姉さんの前では絶対暴れられないから覚えておけよ。蹴ってやる」


「……おお怖い」


「アーム……威嚇も大概にしなさい。何故、敵意を示すのです」


「私が一番、ここで強いボスだ」


「短絡的。躾します」


「うぅ……どうして理解してくれない」


「理解してますが、それはここのルールにそぐわない。郷に従ってこそ英魔族です」


「…………わかった。反省する」


「いや。本当にこんな『暴力者』初めてみたぞ」


 頭を抑える。一体何をしたらこうなるのか……


「姉さんも戦いなら先陣切るでしょ?」


「先陣切って敵陣の一番乗りを目指します。覚悟の上で」


「………いや。君、見た目から想像出来ない好戦派なんだね。納得した」


「軍ではそうも言ってられないでしょうけど。衛兵ですから。当たり前です」


「こわ……もしも女王陛下が現れなかったら。君たち首都の衛兵と戦わされてたのか……ゾクッとするよ」


 私はこの言葉でダークエルフ族長の事を思い出し、彼の思惑が生きている事を実感する。圧倒的力は反抗心を打ち砕く。力の在り所に悩んだダークエルフ族長との女王陛下謁見の話は面白かった。


「情報屋は何をくださるのですか?」


「……軍の報告書がまとめられた物だ」


 ざっと鞄を渡してくる。中身はそれはいけない物だろう。妹さえ驚いてる。


「「!?」」


「個人的に軍では絶対に無理だ。エリート組や精鋭組はそうは思ってないがどうにもタチが悪い。ここの繁華街でさえ、奴を追ってし……誰のお控えかを知りたがってる」


「いいんですか? 私で」


「トラブルメーカーの祝福があるなら……解決までいけるだろう。俺は軍の汚職者だが……解決するのが一番だと思ってるし、多くの軍関係者は……プライドが許さない。絶対に弔いを行う」


「………だれか殺られたんですね」


「ああ、前任者だ。情報商材で売ってた……ここに居た。前任者だ。知ってるだろう『暴力者』」


「ああ、彼なんだ。へぇ……魔眼持ちなんだね」


「……ああ、実は魔眼持ちだった。『自白』のな。それを悪用され……軍に目を抉られて殺されたのが多くなった。戦争だよ」


「………うん」


 私は腕を組み悩み、そして予想を言う。


「魔眼狩りは多分……複数人犯行と思います。魔眼の数は2つまで。使える魔眼は最大2つまでです。ですが、複数人なら数は増やせて勢力拡大できます。最強の部隊を揃えようとしている気がしますね」


「……それはそうだろう。それにな……魔眼の商人、コレクターが最近噂を持ってきた。『女王の瞳』だ」


「女王の瞳です?」


「ああ、最強の魔眼。服従、臣従、洗脳、世界のルールを従えれる。いろんな噂が立ち、どう言った魔眼かはわからない。だが、コレクターはそれを求めていると聞いた」


「…………女王の瞳ですか」


「女神に奪われた瞳が零れ落ちたと聞く」


 女王陛下は一度、失明している。だが、本人がそれを癒したと聞く。その時にオッドアイになったとも。だけど奪った目は残り零れ落ちた。そんな話らしい。


「以上が俺の調べた話だ。魔眼に女王の瞳が宿るのか……『女王の瞳』を……探してる」


「わかりました。ありがとうございます。私がお支払済ませておきます。それでは帰りますね。一件目からおいしい思いをしました」


「なら、俺も帰ろう。ありがとう」


「こちらこそ」


 私はお会計を済ませる。黒衛兵の軍資金は少ないがせぇんしぇいのおこずかいは莫大であり……寄付金と言う税金で取られるならと私にあげている。そんな事を思いながら階段を上がる。地下から地上へ上がった時に視線を感じ……私と妹は身構える。


 すると複数の獣人、猫か犬かトカゲか、多くの人々が私を見ており……一人の男性が一歩前に出て顔を出す。


「ちょっと……姉さん。ワイらと一緒に来てもらってええかい?」


「……私ですか?」


「そう、物騒な事をしたくないんや……かわいい夢魔の女性やからな」


「……ん? 私をご存知で?」


「おう、よう知っとる。麻薬焼き払ったんやろ?」


「合法以外は焼き払うのが私たちのルールです。許可無く所有は禁じられております。私の目からしっかりと『隠して、見せないように』してください」


「そうやな、無いもんは焼き払えんからなぁ……姉ちゃん。けっこう……場数も踏んでるなぁ……従ってくれへんのやろ?」


「こんなに集めて脅しを行うのは少し……変です。敵ですか?」


「……しゃぁない。賞金首や」


「おかしいですね? ギルドに私は指名手配されてませんが?」


「うちらの話や……じゃぁしゃぁない。四肢もがしてもらうで」


「……アーム。軍人さんの手前殺しはNGです。なので事故ならいいんでしょう」


「はーい。まぁ……暴れってないしなぁ最近」


 私は四肢の義足義手に魔力、魂を入れる。生身のような黒い鋼が滑らかな動きになる。そして……目の奥で誰かの好奇心が疼き目が痛む。


 ああ、女王陛下……見ているのですね。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ