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女王の瞳③


 軍に遺体を渡し、彼等から道を教えてもらう、昔ほど迷子になる確率が増えた気がする。そう、まるで事件に会うように。そこからは迷うことなく私は依頼人の元へたどり着いた。そして……驚く。


 そこは『眼球売り』のお店だったのだ。立ち並ぶ店に普通に並んでおり、その雰囲気は明るく。そして運命を感じる。今日の事件と関係が無いなんて思えない。


「ぐふふいらっしゃい、おっ……その出で立ち……そして作り物の義眼……今日は店じまいだね。ちょうどお客様が全くいない……運命のように」


「……お邪魔します。依頼人のベアード様ですね」


 黒い悪魔の赤い瞳を持つ男性。黒い髪が光を吸うのか影が張り付いているような錯覚さえある。そう、黒が光を吸っているので輪郭が見えないのだ。そして……それが私の瞳を奪い……右目が熱くなる。


「君の瞳は……呪物に反応できる魔眼だね。本物……売らないかい?」


「ごめんなさい、これは大切な『瞳』です。こちらをお納めください」


 お店の中はガラスばかりで目玉などが並んでいた。魔法具もあり、魔法使い用のお店なのかと思えばお洒落なネックレスもあって……宝石商のように思える。そんな店の机に私は鞄を置く。


「解……どうぞ」


「ほほう、強い封印の魔法だね。中身を確認するよ」


 鞄を開ける。すると……色んな種類の義眼が綺麗に並べられていた。それは私の義眼によく似ており店主はそれを掴んで眺める。


「いやぁ……いい商品だ。代替の目であるのに宝石のように綺麗で……作り物なのに魔眼のような効果も生まれそうなキャパもある。本当に製造する魔法は創造に近い。売るには惜しいほど……コレクションしたいねぇ」


「ありがとうございます」


 いい評価を得て私は自分の事のように喜ぶ。


「調整は仰せつかっております。何卒よろしくお願いいたします」


「ほほう、サービスもいい。だけど大丈夫……こういうのは個人でいじりたい人も多いし、私の方が目に関しては大得意だからね」


「かしこまりました。それでは……」


「お金だね。用意するには時間がかかる。膨大な金だからね。ここには置いてないよ。貸金庫にある」


「わかりました、時間がかかるのでしたら後日お伺いします。それよりも……その……この店は何のお店なんですか?」


 私は用意してもらった椅子に座り店を眺める。黒衛兵として情報を集める。


「魔法具から宝石、そして……目の移植と売買をメインにしてるね。安心してほしい。非合法じゃない。立派に医療できるように教会員、商売許可、ギルド名簿……まぁその面倒な面倒な手続きはしてるよ。その許可取れない非合法の売買屋もいるようだけど私は違う。盗品の目はない」


「……魔眼窃盗ですね」


「そう。今はね~昔より豊かになった。隠れてた魔法使いが表に立ってるし、私のようにコレクターや、オッドアイや目の色を変えたい人がいるからね。需要がある」


「窃盗してるんですか?」


「いいや、売買で私が買ったのを売ってるだけだよ。だから片眼だけが多い。見えなくなるからね~両目は取られると。だから……義眼がいる。売った眼のかわりさ」


「目を売るんですね。ここに」


「そう、目を魔眼へと成長させて売る。または両目を違う魔眼にする。魔眼が嫌だと売る。ステータスや……眼を扱える魔術師たちの趣味。だけど義眼も今は人気さ……義眼に魔力を封じてオリジナルの魔眼にできる。私の両目もそうさ……『眩暈と吐き気』を起こし、不快感などで戦力削ぐ魔眼さ」


「優しい魔眼ですね」


「いやいや……苦しむから。魔物に襲われても無力化しやすくいいんだよ。でも………みられただけで死ぬ目。操る目もあるからねぇ。まぁ義眼、魔眼で防げるしカウンターもできる。そう、魔眼でもランクがある」


「なるほどです」


「そうそう……ビックアームの悪魔にも、魔眼は売ったよ。動体視力向上と片目には火の魔法を打つ魔法具をね。綺麗な緑色になってるよ。これでお姉さまと同じになったてね」


「……」


 私を真似て眼を変えたのだろう。まぁ、彼女は最初から眼を抉られ強化された義眼にさせられてる。私のように……都市インバスで加工された子なのだ。


「最近……魔眼窃盗多いらしいですね」


「昔から売り物になってたからねぇ。だから魔眼を捨てる人も多い。私の店もそう言うお客様が多くてね」


「魔眼は溢れた物なんですか?」


「いいや、稀少。しかし、義眼はそこそこ増えたね。護衛用にとか。まぁ魔物も効かない奴いるけど」


「……護衛」


「そうさ。君や衛兵や戦う術を持つものはいい。だけど一般人はね……弱いんだ。すぐに死ぬ。故に魔法具は装備する。命を護るために」


「……」


 わかる。私が本気で殴ったら……潰れてしまう。


「でも治安はいいよ。昔に比べたらさぁ……こんな店ばっかりや。他社の店潰しとかさぁ……ヤバいことばっかりだった。だから表と裏が出来て……表で私はこうやって生きやすくなった」


「裏……ですか?」


「裏はねぇ……あんまり行かない事をオススメするよ。綺麗な悪魔は捕まってしまうよ」


「大丈夫です。はい」


 ナンパは何回も断って来ている。婬魔、夢魔は今では高級職につける金持ちだからだ。そう……新たな商売に欠かせない故に……特権がある。夢の世界に能力で入れるのだ。


 たった一人の夢魔が新たな世界を生んだことを私たちは細胞の一つ一つに刻まれている。


「ふむ……ん」


カランカラン


「ん。ああ、店を閉めるの忘れてたよ」


 店の入り口の鐘が鳴る。店主は入口に向かいお客様と話をする。


「いらっしゃい……ああ、君か」


「あの……まだでしょうか?」


 一人の小柄な悪魔の娘がオドオドした表情で話を始める。


「ちょうど商品が来たよ、彼女がその配達員だ。店の奥へどうぞ……」


「あっはい!!」


 私は立ち上がり、店主に礼をする。そして……悪魔の子に聞く。


「魔眼……持ちですか?」


「あっはい……わかるんですね……」


「いえ、この店に売りに来てると言うことで……わかります」


「……怖いんです」


「……」


「眼を抉られて殺されるのが……だから。売りに来ました。狙われてるのが天然の魔眼ですから……」


「そうですね。犯人見つかるといいですね」


「はい……先生お願いいたします」


 娘がそのまま店の奥へと進む。大きい店内でその小さい人型の悪魔は非常に小さく見える。


「……お代をいただくまでに暇ですね」


「ごめんな。今日、すぐに用意できなくて」


「いいえ。金額が金額ですから」


 私はそのまま、鞄を置いて店を出た。そして耳を当てて元気なうるさい声の妹君を呼び……会うことにする。


 非常に夢魔の界隈では除け者、嫌われ者、敬遠される妹君だが。そんな妹君だけど、私にはかわいい妹君の一人である。


「ベビーアーム。お仕事ですか?」


「おねえええちゃあああああん!! 違うよ?」


「でしたら……ご飯を一緒にどうですか?」


「……にあ、殺し合いのがいい」


 全くこの子は……


「ええ、わかった」


 私は女王陛下を知る。故に彼女の黒い部分も知る。天秤が片側に外れた狂人な部分を。


「腹をくくりなさい、アーム」


「…………本当に黒衛兵のお姉さま大好き」


 私も持っている。














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