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英魔の駒


 僕は誰だ? 僕は誰なんだ?


 走れ? 走れば思い出すだと偉そうに。


 なに笑ってる。変な奴だな? 名前はトキヤ? 


 走ればわかると言うんだな。お前は来ないのか?


 そうか、ここ戦場で僕は何かやらなければならないんだな。皆が待ってるだと? おかしいな、傀儡の魔王に皆など居ない。


 つべこべ言わずに行けだと!! 納得出来ずに行けるか!!


 愛してるから行って来い!? 気持ち悪い事を……だが。初めて言われたよ、優しい言葉を……わかった。信じる。


 はぁはぁ……どんだけ広いんだよこの戦場……荒野に森に川……海なんてあっても。あった……海。


 海かぁ……海……そっか。海……マグロとか、蒲焼き旨いんだよね。あれ……この宝石持ってたっけ? 青い……アクアマリン。皆が待ってる行かなくちゃ!!


 海でも泳げるか不安だったけど……浅い泉だった……次はまた森の中だ。あれ……この鎧。この剣……私はいつ着こんだの?


 ああ、思い出せない。いいえ、今は走らないと……私は走らないと。あれ、君……犬? あっ背中乗せてくれるの? 飛ぶって? わかった。名前はワンって言うからワンちゃんね。


 皆、私を知ってる。変な感じ……私だけ忘れてる。だけど皆は私を知っていて待ってる。最果てで……


 名前も忘れてる。ネファリウス? いいえ違う。そんな僕の名前はない。私の名前がある。


 ありがとう。だいぶ早くついた。ここが最果ての壁……壁に何かあるのか? あれ……指輪だ。指輪……結婚指輪。


 誰のかわかる。私の指輪だ。そう……嬉しかった私の指輪……ああ、そうだ。


 私は誰か……私はネフィア・ネロリリス。トキヤの世界を愛してる。英魔国女王。ネフィア・ネロリリスだ。皆が待ってる。私の愛した世界を護るために。





 私はただ……壊すだけの存在だった。始まりはナンだろうか? 意識がある方が最近であり、そして……意識がなくてもただ何か食べていた。


 そう、世界を食べていた。


「……」


 何故だろうか、今は駒を動かしているのに過去を振り替えっている。何故だろうか……初めて感じる。感情の焦燥感。私は心を持っているのか?


「いい表情をしますね。苦労しますでしょ? 回復と復活を繰り返したゾンビ戦法はあなただけの特権じゃない」


「ええ、そのようで」


 戦場は膠着と言うよりも私が有利だ。だが、それでも……何故か勝てない。それは勝ちを時間を稼がれていると言うのがわかった。何故、時間を稼ぐのか……それはクイーンの駒に理由がある。


「ははははは!!」


 奇声を上げる駒に狂気を見る。武神のように全く押さえつけられず……前線から避けて横からキングを狙う。だが、私が用意したクイーンに防がれる。


 異世界を牛耳った天使の頂点であるクイーンは数百枚の翼を分離させる。人の大きさでありながら、分身を幾重にも用意し、四方八方で奇声を上げるクイーンを魔王を囲む。囲む天使は大剣で魔王の翼を切り、血で赤く翼が汚れ染まる。だが、何度も再生を繰り返して新たな翼を生む。


 我が駒のクイーンが武器を変える。創造の力で弓と光の矢を用意し、四方八方に武器をばら蒔く。それを分身であるクイーンが持ち。魔王に一斉に射る。もちろんクイーンにも弓矢は当たるが……クイーンはそれを気にしない。壊れた天使は羽根となって消えるだけであり。また新たな翼がクイーンから生えるのだ。


「しゃらくさい!!」


 魔王が叫び、炎を纏い、矢を防ごうとする。その瞬間に今度は騎士の豪槍を持った分身が魔王の腹を突き刺し。その隙に炎を払う天使が現れて布で炎を吹き飛ばし、そこに分身もろとも光の矢を注ぐ。


 みるみるうちに魔王の体に光の矢が刺さる。防戦一方が決着を見た。


「ちょっと焦りましたが……クイーンの勝負は決着ですね……」


「クククククク……騙せた……騙せた……はははは」


「ん?」


 クイーンの魔王が笑みを溢す。槍に貫かれ矢に貫かれたままで……そして翼が黒く染まり、炎が赤から黒へと変わる。まるで別物のような状態で微笑を私に向けた。表情が読み取れる。駒ではない……そう、しっかり感情がある。


「……絶対に魔王様はあなたに負けない。何故ならこの私を……悪役の私を絶対に倒した人だから。必ず……」


 クイーンの体が燃えていく。黒い炎から赤い炎へと戻り……彼女は笑顔で消える。胸のざわつきが拭えず……視線を落とす。そして気が付いた。


「何故……ポーンが足りないんだ?」


 小さな疑惑がヴェルキュリアの表情を見させる。


「……何も言わない。だって……切り札だから……あなたは知らない。このチェス盤の新しい戦い方を」


 ヴァルキュリアの瞳に映るのが新たな火だと私が気付くには遅すぎた。彼女のポーンはナイトが武器を落とし全滅した。勝利目前と成る筈だった。だが、その瞳は勝ち誇っていたのだ。


「何が起きる?」


 疑問はすぐに答えとして私の元に届けられる。チェス盤の大きい大きい世界を模した果てに莫大な魔力の噴出が現れる。それと同時にチェス駒に異変が起きる。全滅していた駒がゆっくりと炎を纏い数を増やすのだ。


 復活、再生、強化。それが一瞬で連鎖し起き……そして空を埋め尽くさん限りの船、鋼のワームが登場した。


「お目覚めですね。本物のクイーンが」






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