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英雄の駒③


「流行らせた理由は何ですか?」


「勝つためです」


 余裕の表情でカードをシャッフルする。それを見ながら……眉を動かして夢を操り、カップとポットを出して紅茶をいれて腰をつけた。


「余裕そうね……勝算が高いんですね」


「………ええ、そうです。余裕そうなのはあなたもですけど?」


「ただのカードゲームでしょう?」


「そうですね……ただのカードゲームですが……ちょっと違います。既に賭けて貰っているんですよ。あなたの命と引き換えに」


「………はい?」


 私は紅茶を投げつける気で構える。が、夢なので無理だと察して言葉を待った。


「この世界に新たな物を教える対価にあなたの命を賭ける。そういう契約を無理矢理に……ええ、ええ、その憎々しい顔は良いですね」


「クソ……ヘドが出る」


「ええ、ヘドを出してください」


「狙う目的は?」


「ふふふ、世界を破滅させるためです。いい世界になったこの場所を破壊するためです」


「………私を殺しても第2第3の魔王が生まれるだけよ。魔王はあなたを生かさない」


「そう、魔王は新たに生まれ。私と敵対するでしょう。しかし、私は勝ちます。簡単に勝ちます。絶対に勝てる理由があるのです。でも、それではつまらないでしょう。だから、ゲームをします。余興ですよ」


「私が勝てば……見逃すと言うわけね。絶対、勝てる方法は聞いても良くて?」


 どれだけ強いか、どれだけやるのかわからない。だが、被害は大きいだろう。狂人の類いだコイツは。何者かの情報が欲しい。


「ええ、そうですね。こればっかりは説明してあげましょう。貴方が死ぬと世界も死に直結しやすい理由を。何度も何度も同じ会話をしてますのでね。無敗のため……ジンクスになってしまいました」


 驕り、絶対強者の余裕が口を軽くして話をしてくれる。無敗であると自慢したからこそ、自信を伴って説明してくれる。強者らしいと言えばそうだが……今は助かる。


「色んな呼び方をしてます。『特異点』『特別な存在』『特殊な人』『世界の一』『全の一』等々……観測出来た者達はそれを好きに呼びます。まぁ、特異点と便宜上……呼びましょう」


「特異点……なにそれ?」


 特異点と言う言葉の意味は理解できるが彼の言う物が予想できない。知らない考え方だ。


「ふふ、それはですね。歴史を紡ぐ知能ある者の事です。では、その能力はと言うとその個人が観測者であり、時間軸上に存在する一番初めの軸です。その観測者が観測する事で、観測された全ての物、人が観測し、そして同じように連鎖し、世界が広がるのです。そう、特異点とは世界を写す最初の人物でそこから世界が広がっているのです」


「はい? えっと……難しい……えっと……グラウンドを作る人でいいの?」


 製作者みたいなニュアンスだ。そんな作ったなんて思えない。私自身は……


「………」


 彼から驚きと呆れた表情が見える。


「グラウンドで例えるの難しい……まぁ、あれです。貴方が死ぬと世界が乱れて新たな特異点を作るか探して付与するのです。私は特異点の貴方によって邪魔されずに時間軸が歪み、タイムスリップ、歴史改変をし放題になるのですよ。そう、世界の時間軸は一本なのでね……実は……選択の数だけ運命がと言うのは間違いです。パワレルワールドは有っても、細かな選択は違うのです」


 私は自身が益々、化物なのだと悩む。そんな立派な柱に私は成れているのかも本当に悩む所だが。彼の言うことを嘘と断ずるには無知であり、異世界を知る故に私個人で判断つかない分野なのだと考える。お偉いさんが考える事だ……


「ごめんなさい……納得したような……しないような。わからないです」


「………ほほう、この世界の特異点は聡明ですね。敵対意識を浮かべる野蛮でもなく。無知を知り、判断をするには個人で考えれないと結論を出す。人らしい神です」


「魔王です」


「くくく、殻を破れない愚か者でもありましたか……まぁ良いでしょう。負けたら……」


 ドン!!


 机に大きいカード入れのファイルが置かれて開かれる。


「コレクションの一つとなります。コレクションしてから……本当に強い貴方を私がカードゲームで使って行きましょう」


「拒否権は?」


「………都市一つ壊すのは楽です。ええ、私も傷を負うでしょうがね」


「………国民を人質にして私が靡くとでも?」


「靡くでしょう。歴代で一番優しい魔王様でしょう? 見捨てないでしょう?」


「………………ゲス」


 唇を噛む。相手の得意な物で戦わされる。それに関して……私は仕方なく赴くしかない。だが……引けもしない。そして……すでに切り札は使った。


「わかった、受けてたちましょう。ただし、私が勝てば呪います。お分かりですね?」


「ええ、いいでしょう」


 丁寧な言葉でバカにしたような表情の私にカードが渡される。それを受け取り、確認のため聞く。


「選手カード登録は何人まで?」


「………そのルールは勝手に広まったのですけど」


「野球カードでしょ? これ」


 フィールド球場カードをランダムで1枚、スタメン最低9枚のカードをセットし、エクストラベンチ3枚で戦うルールだ。デッキに同じカードは2枚で手札は5枚まで上限、2枚引ければ強化出来る。他にサポートカードもあるが、同じカードがでの強化が出来ない。活躍するのはランダム性が強い。カードにはやる気さえあり、その日でデッキ変えなくちゃいけない場合もある。カード資本が物を言う。


「はぁ、本当に歪んでますね貴方たちは……元々はチェス駒を使用してました。8×8マスでチェス駒に英雄を憑依させ、王を殺す指示するだけでした。しかし、カードよりも広まり方が弱く。カード化させました。ついでにカードを含みルールを複雑化させ面白くし、流行らせる方法を行ってますが今回は……無規制スタンダードにします」


「スタンダード?」


 奴が手を叩き、その場にチェス盤を出す。すでに奴の駒は並ばれており……一人一人が静かに命令を待つ兵士のように立っていた。ただ、その日は……悲しみを含んでいる。


「生きてる……」


「ええ、そうですね。では、どうぞ駒に貴方が思う英雄を入れてください。カードは要りません簡単なルールでしょう。英雄を戦わせる疑似の聖戦です」


「なるほどね。駒に相性もあるわけね」


「ええ、クイーンは最強の者を用意します。キングは次点でもいいですがクイーン並みでも問題ないです」


「……わかった」


 私はポーンに8人の族長を当てる。王にはエルフ族長、クイーンに族長の妻を当て、ナイトにトキヤとランスさんを含め。ルークにはパンジャンドラム、ビショップにはユグドラシルを当てる。これで親和性もあるだろう。


「ほう、中々の布陣」


「英魔国内の英雄たちです」


「くく、良いでしょう、では……デュエル!!」


 彼の一言で私はチェス盤のような場面が変わり広がりを見みせ夢見の世界が戦場へと大変化をするのだった。











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