英雄の駒②
商品名は『英雄の駒』として販売され、魔国内でたちまち広まって行き。駒での多くの遊びをする事が出来た。想像力豊かな者たちにより、駒遊びは精練され……トキヤに至ってはチェス盤を野球場にして駒を用意したルール『野球』でのチェスを流行らせていた。
駒は有名騎士や、衛兵など、多岐に渡り。駒の無制限、販売駒のみのスタンダードなど駒かな枠組みも出来た。そして私の模倣したカードの駒はなんとボス戦と言う私を倒す為に複数のプレイヤーが仲間での遊びも開発された。なお、どうやら私など一部の駒は弱体化修正されているらしい。
そんな画期的な、高級玩具が魔国に流行り、多くのルールの中で遊ばれる中で不振な意見を耳にする。
『誰一人、開発者が誰なのかわからない』
私はその噂が大きくなっていくのに危機感を覚える。皆が思うのだ開発者が伏せられていると。学園発祥だが学園の誰が開発したのかはわかっておらず。操作だけが始まり……エルフ族長も私も勘が鋭いためにボールを追いかけるのをやめている。
そして……報告が上がった。相手は四肢をもがれ、四肢を義手義足としたサンと言う名の婬魔の娘である。冒険者としても、スパイとしても、黒騎士であることも……知ってい人は知っている。だが、それでも彼女は最近よく事件に巻き込まれる。
まるで……昔の私みたいに巻き込まれる。故に今回も彼女は巻き込まれた。
「報告あげます。カードによる魔法攻撃は確かに有能であり……カードを極めた先は不完全ですが、召喚術になり得ると私が知り得る知識人は答えました。また、開発には初の魔方陣、魔石を混ぜ込んだカードに魂の記憶を複製する術は高度であり……1日で出来る物ではないと思われるそうです。そして……驚くべきことなんですが」
「何ですか?」
「誰でも扱えるのですが。人によっては……いいえ。私は女王陛下を少しの間だけ模倣する事が出来ました。膨大な魔力を使い。10001枚目のカードで私は一瞬だけ『女王陛下の紛い物』になれたのです」
「………危なくない?」
「危ないです。ですが……個人差と女王陛下の意思が見えたので……悪用する場合はカードの意思により使えないそうです。私は女王陛下に気に入られているようですね。そのため、危ない可能性だけの話です。逆に……悪魔、クイーンカードが生まれたら……それは危険でしょう」
なるほど、立派な人ならいいがバーサーカーなどはそれはそれは力を貸しやすいため危ないと言える。納得したが、大変な物を生んでしまったようだ。
「女王陛下以上でよろしいでしょうか? 製作者は引き続き夢見で追います。私の片手間ですが」
「もちろん、色んな市民生活とか貧乏から来る事件など、英魔国内の暗部を見れるのですから。信頼を置いてますから。じっくり探してください」
「………」
「照れない照れない。信頼してるで照れない」
「は、はい……ありがとうございます。素直に……嬉しく思うので……はい……」
彼女の可愛いらしく照れる無表情が目に浮かぶ。恥ずかしくて言葉が詰まるのだろう。
「では……相談をしてもよろしいですか?」
「ええ、大丈夫。対価よね」
「はい……その、重要な事なんですが」
「わかった。聞きましょう」
「女王陛下……エッチなお誘いはどうすれば………いいんですか?」
「ぶふぅ!?」
私は紅茶を吹き出し、慌てて雑巾でテーブルを吹く。
「女王陛下?」
「ご、ごめんなさい。取り乱しました。エッチですか?」
「あ、はい……その……しぇんせぇいとその……キスとか……を」
「あ、ああ……えっと。キスはまだ?」
「い、一回」
うぶすぎる。うぶすぎて心が熱く感じる。でも、逆にきっかけがあれば雪崩のように求め合うのも察した。彼女の先生と言う悪魔は義手などの名工だ。才能は素晴らしく職人気質で一回打ち込むと周りを見ない。故に誘いづらいし、そっちに興味を示し難い。
では、どうするかと言うと。
「言葉で出すべきですね。相手に投げ、それを捕球して貰い。その球をどう投げ返すかを考えさせればいいでしょう」
「言葉にする……ですか……それが難しいのですが」
「では、待つだけになります」
「………」
「あなた、手紙とか配送も請け負ってますよね。ならば、手紙を残して旅に出る事も大切でしょう」
そう、名工はアトリエから出ず。彼女は冒険者として世界を移動している。故に月に何回かしか一緒に居ないのだ。
「………はい」
「手紙とは想いを残すには十分な物です。言葉はその場だけに成り下がる事もありますが、手紙は一生になり得ます」
「わかりました。ありがとうございました」
「良かった良かった……では、大丈夫ですね」
「あ、あの!! お待ちください」
頭に彼女の言葉と共にイメージが送られる。あまりに破廉恥な内容に紅茶を吹き出しそうになる。
「その、性教育は受けてるのですが……やり方とか……わからないです」
「………それ、先生に言いなさい」
流石に私はそれは男性に任せるべきと言うのだった。理由はもちろん……夫婦となるならそういうのも二人で歩めばいいと思うからだ。そして、懐かしく感じる……何も知らなかった私が初めて彼と寝た日を思い出す。
初々しいあの日のことを……
*
「そろそろ、いいかな」
私の夢の中、ある声が響く。夢魔として、自由に夢を見せる私自身の力が及ばない場所に立っていた。自由意思のない夢に落ち、私は身を引き締めて目の前の景色へと歩を進める。場所は知らない真っ白な薔薇の園。ガゼボが一つあり、良くある貴族たちの庭園風情にヘドを吐く。
そう、私は呼ばれたのだ。目の前の男に……目の前の物に。服装は執事服であり、如何にも気品を見せつける座り姿に……ある族長を思い出す。悪魔、夢魔の族長。エリック族長だ。そう、演技である。
「……ん」
剣をイメージで出そうとするがイメージが消え去る。強力な支配力に私はフェイクとしてフライパンとして出す。武器のイメージではなく調理器具として。
「ほほう、そうやって武器のイメージではない物を出し、武器とするのですか。流石は夢魔の女王。夢では中々大変だ」
「………女王ネフィア・ネロリリス。名を問おう……異人よ」
「名前ですか。そうですね……ロイと言いましょうか」
「偽名」
「本名はございません。ただ、名称は数多にのぼります」
そういう物に私は心当たりがある。他人が呼ぶ名前がそれに成るのだ。そう、それは生まれ方が違う故に。母親の名付けのように。多くの人がつける名前。
「………英魔族亜神族の誰かってことですか?」
「そうやって神を型にはめて具現化し、英魔族の一員と変容させ弱体化、触れさせる事が出来る。魔法のような枷、それでいて合理的な『神を統べる方法』を編み出したのは族長の誰かでしょうね。神以下が奢るな」
「今は神ではない。でも、数百を時を超えて……親族は昇華されるのもあるでしょう。我々が祖となればね……」
「みだりに神を作ってはバランスが悪くなるでしょう。女王陛下、そこにお座りください」
私は対面に座る。顔を見ると……右顔に刺青が浮き上がる。紋章に似た何かの力を生んでいる気がした。
「ロイさん。バランスは悪くて当然、自然にバランスを良くしようと国が神が動く日が来るでしょうね。みだりに神をと言いますが……神さえ自然の偶発的発生に過ぎません。もっと言えば……天然です。この世界はそういう世界ですよ………異世界のロイさん」
「ふむ、バレてますか?」
「夢見で表面を……異世界の光景が目に」
「どんな世界でしたか?」
「海の中に都市が」
「光はありましたか?」
私は首を振った。顔はそれを見ながら笑みを溢す。
「ふふふ、なるほど。ただ、長く話すと全てをバラされてしまいますね。なので……目的だけを言います。あなたを倒しに来ました」
「………」
いきなりの宣戦布告に私は眉を歪ませる。だが、目の前の男は笑みを浮かべるだけ。
「そう、身構えないでください。別に剣で殴り会おうじゃないんです。そう……私はゲームをしに来たのです」
「ゲーム?」
「そう、このカード達でね」
私の目の前で彼はカードを広げ、机に並べた。見たことのあるカード郡に私は察する。
「やはり、察しますね。そうです……学園での開発者は私です。これで戦うために」
私は……どうやら狙われていたらしい。




