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エルフの里


「女王陛下の働いている姿を見たかったです。クビになるとは……」


 クビになった翌日。エルフ族長が何かの話を持ってくると同時に噂の話をする。これはクビになって正解だ事が大きくなりすぎる前の火種だったと私は納得した。


 働くのも一苦労だ。


「エルフ族長、お店教えるからそこに卸している服屋から買い。奥様に着てもらってください」


「女王陛下……それではフィアは嫉妬します。女王陛下の着ていた服をプレゼントでは女心は動きません。そこはスッと黙ってお願いをするのです。すなおに『交尾』したいと……行為に関しては先ずは接客している中で……」


「おい!! てめぇ!! 俺の妻の前でそんなセリフをよく吐いたなぁ!!」


「トキヤどの、女王陛下はそこまで潔癖ですかね? ぐげぇええ」


「その後に続くだろう言葉がダメなんだ!! 背徳感とか交尾内容とかな!! 俺の前でならいいが流石にネフィアの前じゃやめろ!!」


 勇猛果敢なエルフ族長の首を後ろから締めるトキヤに私は笑みを溢す。察するに色々なまぁ大人の話だろう。


「確かに潔癖ではないですけど。『交尾』と口にするには恥ずかしいのが普通ですよ族長」


「ゲホゲホ、知ってます。ただ、まぁいいんです。これを口に出せば愛を示せると思うので」


「婬魔は別にそこまで……婬では……いいえ、そういう物なのかもしれない」


 例えば私の口からフィアにこんなことがあったと言えば、フィアは喜ぶだろう。『愛されている』とね。彼女は奴隷だった故に貪欲に求めていた。家族と愛を。


 だから私の影武者として最高の子になった。


「そんなことより。早く用件を言え」


「おっほん。はい、いいます。実は私はハイエルフかもしれないし、そうじゃないかもしれないのですが。ハイエルフの村に女王陛下を村にお連れしたいと思います」


「ハイエルフの村?」


 私は一人の女性を思い出す。勇敢な女王を。


「確か……エミリア・マクシミリアンの故郷」


「そうです。そして……世間と隔離した所です」


「なぜ?」


「最近忙しく、お便りがないのです。しかし、彼らはそういう者なので気にしてませんでしたが……流石にそろそろ新たな指導者をお伝えに行くぐらいはしなければなりません」


「代々やってきた?」


「やってきました。そして……力を与えた」


「どんな?」


「薬品です。膨大な魔力とかを生む秘薬。力無き者も変えてしまう劇薬です。この人を魔王にするためにも使われた物です」


「あなたは使ってる?」


「死ぬので使ってないです。短命になるので」


 代々魔王が強い理由の一つだろうか。薬で強化し、魔王にすればある程度、協力は出来るだろうし、それを交渉のために使うこともあったのだろう。


「それに強い者が使っても効果は微々たる物ですから」


「なるほどね。私、ひとりでいい?」


「一人しかだめです」


「隔離した族なのね」


「引きこもりですよ。森の……種の進化を悩んだね」


 含んだ言い方に私はエルフ族長の瞳を覗きそれが真実だとわかる。


「含んだ言い方に隠してるなにかを見た」


「女王陛下には秘密に出来ませんか……確かに言えない物もございます。報酬としてお伝えします。トキヤ、これは伝えてもいいですか?」


「いいだろう……臭う危険な事だ知っていると協力的だぞ」


「なら、歩きながらで行きましょう」


 私はトキヤが既に知っているのかとわかり、それが暗い話だと察する。そして……私は驚かされた。エルフ族の像とは違った世界に。





 珍しく飛ばずにドレイクに乗って目印を辿って森を進む。エルフの里への行き方は一部のエルフしかわからない。エルフ族にはダークエルフ、ハイエルフ、エルフと色々な種族がいるが。全てハイエルフの派生だ。


 エルフ族長はハイエルフの里から、罪を犯した者、里と考えの違いからの生き残り子孫らしく。外界のエルフとなっている。ダークエルフはそれに住んでいる場所柄で変わった者であり、私の知るハイエルフの女王。マクシミリアンの子がそれに近いと言う。


 ただ、エミリア・マクシミリアンはハイエルフの中でもずば抜けて珍しい精神と強い体の持ち主らしい。色んな話を彼は語ってくれる。


「では、話ながらエルフ族と言う種族についてお伝えします。エルフ族は実は潔白な、聖なる種族とは遠いです」


「あなたで、すごく納得する」


「お褒めいただきありがとうございます」


「褒めてない。少しは自嘲しなさい」


「女王陛下のお墨付きですね。キラッ!! ははははは」


 このクソジジイ。いっぺんわからせたろか……


「まぁ、女王陛下。落ち着いて剣をお納めください。切っても死ななくなってますから」


「化物め」


「そう、成功した化物です」


 一瞬で口調が重々しく。そして……ぞわっとする粘着のある空気に変貌する。これはエルフ族の暗い話だろう。


「エルフ族は……我々は最強の種族とはと言うのを目指して研究していたんですよ。私もね……そして……ダークエルフ族も。手段は違えど」


「最強の種族……」


 物騒なと私は思う。研究と言う言葉に予想が立つ。


「人体実験」


「察している通り、お薬はそれの一端です」


「魔王が人体実験なんてねぇ……衝撃」


「いい薬です。見てください、最高の奴隷兵士にもこれだけの効果があります」


「……あなたもやってきた口ね」


「もちろんです」


 エルフ族長の瞳が暗い暗い物に変わる。私は処罰すべき事もあったのかもしれないと思う。だが、彼は驚く事を口にした。


「ただ、研究結果はすこぶる悪く。私は種として諦め。郡と軍の強さを求めました。妖精を借金漬けにし私兵を持ち、金持ちとなり。政治を学び。そうして強さを学びました」


「ふむ。それで? あなたが思う結論は?」


「強さは環境、時間、場所で変わる。最強と言うのは全てにおいて……普通からそれ以上の上位者である者。故に神であると。ダークエルフは不浄地の力を取り込み、武の最強をハイエルフは薬と隔離した環境による滅びない最強をそして……それ以外はそれぞれの思う強さを求めた」


「と言う事はもう既に別れてるわけだ。エルフ族で」


「はい、ただし。ダークエルフ族はそういうのを捨ててます。目標に達したと思われるので……武芸者、衛兵が多い理由です。問題はハイエルフとエルフ族。私は一番強いエルフです。マクシミリアンは別でですが、それ以外もいまだに研究してます」


「エルフ族って怖い」


「生き残るためですからね。なお、諦めた私に最強の種族の答えを出した女王陛下には尊敬します。我が子が楽しみだ」


「最強なのかね。婬魔は」


「私の目で見れば不公平です。なので迫害されたと見ていいかと思います。大量に生まれ、異種族と交じり、異種を取り込みながら増えるのは……ただ。面白いことに英魔族全員に言える事ですが……交雑します」


「………それってどういう事です?」


「研究中ですが……昆虫亜人と人間。木の亜人とオーク。色んな種族が同種族外と交じるのはおかしいと思います。それは奇跡です。近縁種族でないとおかしい。魔物のように」


「面白い研究ですね。それは……考察しがいがあります」


「そうです。女王陛下……今は躍起になって調べてます。そして推測ですが……やはり一度我々は交雑しなければならないほどに減ったのでしょう」


「なるほどねぇ」


 エルフ族長曰く、歴史再編が進んでいるらしい。魔王のやった悪行などなども全て真実を残すとの事。


「……娘のサンライトもエルフ族の関係者でした。四肢の技師がエルフ族です。理由はもちろんそういう事です」


「………彼女にその事実は?」


「彼の口から聞けるでしょう」


「わかった。そういえば……帝国と連合国がキナ臭いと聞くけど……」


「連合国内もキナ臭いですよ。まぁ私たち9人は静観で纏まってます。帝国や連合が殺し会おうと私たちの国は関係なく自国強化に努めます。忙しいので勝手にやってろっと言うことです。反女王派も居ますしね」


 エルフ族長と意見を交換する。私に彼が聞かせる理由はなんだろうかと考えて私は答えた。


「私に政治は関わらせないのではなくて?」


「それでも報告の義務がございます。それに……反女王派が少なからず結託しますでしょう」


 平和と言うのは本当短い。仕方がない事ではあるのだけど。エルフ族長は続ける。


「女王陛下が働いてる店の回りでそういう輩が集まって居ましたね。まぁもう居らず。そして……女王陛下の強さを疑い、それは嘘だと思っている愚か者にはいい嫌がらせになりましたね」


「………そ、そうだったんだ」


 あっぶな!! 店に迷惑かける所だったじゃん!! クビになるの本当、ショックだったけど良かったんだ!!


「それより、女王陛下。見えて来ましたあれが里です」


 そういうとエルフ族長は何かに触れて引き剥がすように引っ張り。そして……空間が歪んで木の塀が目に入る。魔法障壁に隠されている里が見え……そして……エルフ族長が静止をかけた。


「女王陛下、怪しいです」


「怪しい?」


「………炊事の煙や、生活の音などが一切ないです」


「待って、音を拾う……」


 私は耳を澄ませる。そして……それは正しいと感じた。そう物音一つないのだ。森の風、魔物の音などの自然音しかない。


「感度上げても音がない」


「これは……気をつけて入りましょう」


 二人でドレイクを木の枝に括り、得物を抜いて開かずの門に手を置きゆっくりと開ける。そして私たちの目に驚く光景が広がっていた。


 エルフ族の括られたドレイクは倒れ死にハエが飛び、生活臭がない石の通路の脇に積まれた袋からもハエが止まり死臭が鼻をつく。袋から見るに火葬するわけでも土葬するわけでもなく積まれ……私はその理由に察する。


「死体の山……そして……それを処分出来ない理由」


「………生存者は居ますかね?」


 私は物音のしない里に首を振った。これは……全滅と見ていい。何かあったことはわからない。


「生存者が居れば事情が……いえ。女王陛下なら」


「わかってる。グレデンデ……周りを見張って。私は夢見します」


 大地の記憶を夢にする。エルフ族長は頷き弓を構える。そして私は目を閉じて深く深く沈むのだった。






「里長……病人が出たのですが……」


「どうした? 治療すればいい」


「それが……治療かい……なく」


「原因は?」


「わかりません」


「………大地の意思か」





「里長……患者が後をたちません!! 外界に助けを!!」


「ならん、外界の者は穢れた奴らだ。我々は幾重にも困難を乗り越えた。これは試練じゃ」


「しかし、薬が……」


「ワシも探す。治療を考えてな」






「里長が倒れた……畜生……動けるエルフも減っている……」


「………里長が、亡くなった」


「そんな……」





「………畜生……俺はどうすれば……ごほ」


「外界と連絡をどうにかして……」


「………森を越えられない。俺達じゃ」


「畜生……畜生……もっと早く助けを求めていれば!! 妻も母さんも……息子も……」




 私は苦しむエルフ族の大地の記憶を見てエルフ族長にも見せる。すると……彼は驚いた表情をする。


「………エルフ族の感染症じゃないですか。最近、流行りの……そうか……里でも流行ったのか……」


「感染症?」


「はい、一時期エルフ族内で感染症が大流行しまして……天使と医療従事者のお陰で助かった事があったのです」


「何ヵ月前に?」


「2ヶ月前に……」


「知らなかった」


「薬としっかりとした処置すればいい風邪でしたからね。風邪が流行るのは珍しかったですので意見を聞いたので何とか……ただ呼吸困難にならない薬はいります。それだけ飲んでればいいんですよ」


 詳しく彼から聞き私は目を細める。


「死体から感染する?」


「わかりません……ですが……もしかしたら感染してるかもしれないので有識者に聞きましょう」


「有識者?」


「はい、女王陛下もご存知あるでしょう」


「……誰?」


「貧乏神です」


 私は思い出そうとし首を傾げたが……手を叩く。そう……一瞬だけ、この前に一度関わった事のある彼女を思い出すのだった。








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