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若作りな私


 子を孕んだ事のある、経産婦の私は大人になったと思ったが。まだまだ体は若く、鏡の前で頷く。


「まだ、若く見える……若いけど」


 人より苦労が精神を鍛えぬき過ぎた結果、短いスカートの仕事服とツインテールにした髪に悩み出す。あまりにはっちゃけすぎだと思うのだ。昔は踊り子の服を難なく着れたのに今は旦那の前だけしか恥ずかしくて着れない。


「……ああ、大人になったなぁ」


 そう、染々する。


「リリ、私は今日、厨房入るからよろしく」


「先輩が厨房なんですねぇ。忙しいのに人いれてよね。店主」


「……すいません。女王陛下」


「それ禁句。ここでは誰も知らない」


 働き、時間が立って皆が慣れ出す。慣れは怖いもので結構、ズカズカと物を言う。罵声もある。だけど、それが等身大の一般市民の日常なのだ。合理的な商路もあり、店の裏は全て運搬通路となっていたし。ゴミなどの回収は農地へ運ばれるし、私が思っていた以上に進んでいる。


「いらっしゃいま……せ?」


 そう、充実していた時に問題が起きる。もう一人は黒い鞘から見るに黒騎士の一人か、暗部の一人だろう。暗部と言うが一般にわからせるために黒い武器を持たしている故に秘密と言うわけではない。


「……えっ?」


「トキヤ、何か? あっ」


 ダークエルフの誰かと、トキヤが入店。これは危機。


「お二人ですね。こちらです」


「……いや。気のせいだ。席に座ろう」


「そ、そうですね。いやぁ、うん。奥様に良く似ていて綺麗な方だ」


「そうだなぁ。間違える訳がないのにな」


 私は許された。一瞬でバレたが……トキヤは優しい瞳で私の案内を受ける。そして……何事もなく去ったのだった。





「ネフィア……今日、君に良く似た人を見かけたよ」


「そ、そう」


 家での夜に寝付く前の会話で、鋭い切り口に私はたどたどしくしていたのだが……トキヤは飄々として語る。


「ネフィアが初めて働いた店で、あった時を思い出したよ。あれから何年もたったな。スカートに慣れてなくていつもいつも怒ってばっかで……愛おしい子だった」


「そ、そそうですか」


 私は思い出したら恥ずかしくて燃えそうな思い出ですけどね!!


「変わった髪型で新鮮だったなぁ。それに……服装も若くて年相応に見えた」


「……」


 年相応と言ってくれた彼に私は考えの違いに驚く。私は子供ぽい。彼は年相応。ふと、そんな言葉に私は何処かで背伸びしてたのかもしれない事を考えさせられる。


「ネフィア……君は君のままで居てくれるのが本当にありがたい」


「トキヤ……」


 何かあったのかもしれないしないのかもしれない。私は不思議と笑みをこぼして彼に背中から抱きつく。


「……また、あの店に行こうかな?」


「あっ、それは恥ずかしいので行かないで」


「……」


 私はトキヤが悪い悪い笑みを溢すのを察して……今さっきの愛おしいから、嫌がらせの匂いがし、私は身震いするのだった。





「ごめん……女王陛下。もう働かせる事が出来なくなった……」


「そ、そんな!! どうして!!」


「『生の女王陛下』に会えるお店で噂が流れて……如何わしい輩が……来るようになってしまう。女王陛下を利用する者も……賄賂をな。置いてく奴も居た」


「……潮時ですね。ごめんなさい……いいえ。働かせてもらい、ありがとうございました」


「いや、こちらこそ……大変ありがとうございました」


 私はクビをなった。






 

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