親友との再会とクモの糸..
冒険者の身分証明書で私たちは都市に入った。全く疑われずに潜入できたので冒険者の身分証明書は凄いことを再認識する。
都市内部を見渡すと雪が無く。冬で寒いはずなのに人だかりと行商、色んな種族が行き交い活気に溢れていた。出店は無いが建物の中でしっかりと商いを行っているのがガラス越しで見え、店の中は魔法のカンテラと魔力石のストーブで暖かそうだった。
「ネフィア……人間より、いい生活してそうだな」
「魔力石ストーブって便利だよね~」
「魔力を入れて炎を産み出し続けるから管理が楽だろう。ただしっかりと換気しないと空気が薄くなるな」
行き交う人々の中に人間もいるので怪しまれず。トキヤは目立たない。しかし、私は目立つらしく目線が集中する。なのでフードをかぶり直した。
「皆、見てる。美しいからね。美少女はつらいよ」
「自分で言うな」
「だって、トキヤ。誉める事が少ないもん」
「はいはい。綺麗ですよ、お嬢様」
「違う~もっと心を込めて」
ドレイクの手綱を離して彼の腕を掴む。嬉しくて顔が緩んでしまう。
「おい、手綱!!」
「大丈夫、ついてきてね」
「ワン!!」
「ああ、くそ。くっつくな!!」
「やーだーくっつくの~」
「はぁ……周りの視線を気にしろよ」
「大丈夫、愛し合ってることを見せつけてるだけだから」
トキヤが溜め息を吐きながら冒険者御用達の宿屋へ行く。前に泊まっていたらしい場所に馬舎と一緒に借りて旅の疲れ等々落とす予定だ。早速、部屋に荷物を置きに来た。ベットはもちろん。
「ベットがひとつ。予備のシーツも用意してもらわなきゃ!!」
「予備のシーツ?」
「うん。いるよね? いるよね? 私の種族知ってるよね? 久しぶりだからワクワクする。夫婦での営みはさぞ愛が深いでしょうね!!」
「あーはいはい。落ち着こうな? 発情するな……」
「はーい。今日は寝かさないでね?」
「ド婬魔」
「婬魔だけど? だって………婬魔とか関係なくて。抱かれるの好きだから。夫の力強い抱擁は私を蕩けさせるのです~あああ~」
「はぁ……まぁ……あのな限度を知ると言えば……」
「へへ、相思相愛」
「だぁ!! こっぱずかしい!! 早く荷物を置いて、皮を売りに行くぞ‼」
「はーい」
荷物を運搬し置き。冒険者ギルドに熊の素材を持って出向くつもりだ。そのまま荷物だけ整理して着替えずに向かい、大通りから冒険者ギルドに入って魔物の物を早く売りさばく。いいお金になった。ギルドは他と同じ酒場と並列しているタイプで、大きさもそこまで変わらない。だが、トキヤが一つ。受付にお願いした。
「賞金首の用紙を全部貰おうか」
「トキヤなんでそんなことを?」
「お前を狙ってくる奴を仕留めていれば賞金首に出会うかもしれない」
「へぇ~………んんんん? それって私を餌に釣るってこと」
「見てみろ。お前の値段」
私の賞金首の値段が驚く金額になっている。
「うわぁ~すっごーい。もちろん知ってる。まぁ別に気にしないけど」
「あ、あの。その巨額の賞金首は取り下げられました」
獣人族の猫耳がついた亞人の店員が賞金首リストを持って現れる。
「へぇ~どうして?」
「見つかったらしいので。替え玉でしょうけど」
「ふ~ん」
「良かったなネフィア。賞金首じゃなくなって」
「そうだね。まぁでも~あんまり気にしてなかったから」
「俺が護るからか?」
「そうです。優しい強い夫さまが私を助けてくださいます。トキヤ!! デートしたいです‼」
「仕事して、金を稼いで、借金返すまでお預け!! ちっとは自制という言葉を覚えろ!! 何度も言うぞ!!」
「え~こんな体にしたのは何処の誰よ」
「それを言うと……何も言えんけど……」
「あっ、この冒険者バカップルだ」
「すいません。連れがあれで……」
私たちはそのまま賞金首の紙を貰い。それとは別に依頼の掲示板を覗く。魔物討伐等や護衛。雑用等だ。あとは祭りの用意。
「祭りの用意?」
「年末だな」
「年が変わるんだ‼」
「そそ。年が変わる日は重要なイベントだ」
「今年は一人で年を越さない!! 暗い部屋で越さない!!」
「あー明るく言ってるけど。なんと言えばいいか………今年は俺がいるから寂しい思いはさせないぞ」
「うん!! やっと、一人ぼっち卒業かな」
「す、すみません。他の冒険者が掲示板見たいのですが………その。イチャつかれましたら中々割って入れないので………えっと」
店員がまた。注意しにきてくれた。オドオドしたかわいい女の子だ。尻尾がピョコピョコしている。
「すまない。掲示板から離れるから」
「ごめんなさい。ついね」
「あ、ありがとうございます!!」
「仕方ない、ギルド長に挨拶でも行くか。仕事くれってな。後は恩が少しとお前に会わせてもいいかもしれない」
「職権乱用では?」
「大丈夫。知り合いだ」
「交友関係広いなぁトキヤは」
「勝手に広くなってしまうんだ。情報の取引で」
「知ってる。トキヤって強いから適当に助けて適当に恩を売ってサヨナラする人だもんね」
「恩を売っていれば少なからず、いつかは益になるからな」
「皇女」
「やめてくれ、あれは大失敗だった。忘れろ」
「は~い」
そんな話をしながら、ギルド長の部屋へ向かう、酒場の後ろからギルドの通路に入れるのはどこも同じであり、衛兵の悪魔に身分証明書を見せてお通し願った。そのまま案内してくれて入った部屋は煙臭く、奥に大きな天蓋付きの椅子とカーテンがあり、そこでパイプを咥えた女性が腰かけていた。
「………誰だい」
妖艶な婬魔のようなきわどい服を着た女性。鋭い瞳と丸い羊の角。種族は悪魔だろう。綺麗な女性やエロい人は全員婬魔と判断する。軽率だが……淫魔ぽい人だ。
「ああ、人間。久しぶりだ」
「久しぶり。悪魔ファウストさん」
「えっ? えっ? 悪魔?」
同族に見えた。
「そうだぞ。冒険者ギルド長で、お前の遠い遠い親戚だな」
「ん………そこの女は悪魔? 角が生えてないねぇ」
「婬魔とハーフです」
「婬魔とハーフ。もしや、お前は魔王ネファリウスかい?」
「いいえ、ネファリウスは死にました。ネフィア・ネロリリスです」
「そうかい………くそったれな父と母から生まれたわりには、まともそうだね」
「彼がいますので」
「んん? そうかいそうかい。まぁ彼は強いから。それで何のようだ? 人間」
「城の地図ありがとうございました」
「ああ、報酬はもらった。それ以上はお礼を言われる筋合いはないよ」
「まぁ儀礼的な物で御礼を述べただけです。『お仕事でなにかあれば下さい』と思ったのですが………どうでしょうか?」
「ふーん。お前が仕事をくれとな」
「まぁ早急ではなくていいのですが」
「………そっちは魔王と言ったか?」
「ええ、そうですね」
「なら、報酬は後でやろう。今日は帰るんだ」
「わかりました」
そのまま部屋を出る。ちょっと服が煙の臭いがついてしまう。
「あーあ。やっちまったか?」
「ん? どうして?」
「情報をあげてしまった……軽率だった………いや、何でもない。それより、珍しいだろ? 悪魔の冒険者」
「婬魔みたいな人だね」
「婬魔のように男を漁ってるから間違いじゃないな。満足出来ないだとさ色々。まぁ金でヤラせてくれるから人気な冒険者さ」
「へぇ~娼婦みたい」
「まぁ、人それぞれ」
「私が……娼婦したら儲かるかな?」
「ネフィア!!」
「冗談だよ。その反応、ありがとう嬉しい」
「………小悪魔」
「はい、悪魔です」
「悪魔は朝と寝る前にお祈りを捧げないぞ?」
「悪魔でも優しい女神様は大好きですよ」
その日は、仲良く駄弁ったあと深くドロドロに愛し合うだけで1日が終るのだった。
*
次の日。昨晩雪が降ったのか外では魔法によって除雪が進んでいた。私は袋からビンを取り出し蓋を開けスプーンで中身を掬おうとする。
シュ
だが瓶をトキヤに奪われる。
「ネフィア。朝からこれを朝食にしない!!」
「ジャムは朝から食べるものだ‼」
「直接食べるものじゃない!! 何か塗れ!!」
「パンが無くても食べられるじゃないか!!」
「お前!! 一瓶丸々食べきっただろ!! この前!!」
「大丈夫。半分で抑えるから」
「半分でも多いわ!! 糖分過剰接種は体に悪いんだぞ!!」
「嫌だ‼ そのまま食べる!!」
イチゴジャムの瓶を奪い返そうと手を伸ばす。
「ダメだ!!」
「嫌だ‼」
「食べ過ぎ!!」
「美味しい!!」
トキヤが瓶に蓋をし、抱えて逃げる。
「うぅ………どうしてダメなの?」
「一気に食うだろ‼」
「はは、そんなこと………ない……かな?」
「自信がないからダメだな。何度も言うぞ、過剰摂取だ」
「うぅぅぅ!!」
トキヤに抱きつく。
「お願いします!! 朝に食べないと元気がでないんです‼」
「いっつも元気だ!!」
「ううぅ。一口だけ一口だけ」
「………一口だけだぞ」
「わーい」
トキヤが瓶蓋を開け私に向ける。もちろんスプーンでごっそり持っていこうと思う。
「あっ………お前」
瓶に蓋をされる。
「ごっそり取る気だな」
「はは………なんでわかるの?」
「なんとなく」
「そっか、なんとなくかぁ」
少しだけ嬉しいかもしれない。以心伝心だ。
「スプーン貸せ」
「はい」
蓋を開け、一口分だけ掬い。それを私は口に含む。甘い。
「美味しい~」
「これで我慢しろ。食べに行くぞ朝食」
「はーい」
いつもより幸せと甘さを感じる。一口だった。
*
ギルドの隣の酒場でトーストを頼む。他の冒険者等も朝食を食べに来ている。私はイチゴジャムをトーストに塗り朝食をいただく。
「いただきまーす」
「本当に病気になるぞ?」
「看病してね」
「なる前提で話をしない。で、面白い情報ある?」
「私が今、酒場で噂を拾うと。何処かの族長と魔王軍で紛争がある噂と、魔王が見つかった噂と、帝国がまた連合国と戦争する話かな」
音拾いの魔法で手に入れた情報。お金稼ぎ出来そうな物はない。
「んん? お金稼ぎ出来そうな物があるな傭兵だ」
「傭兵?」
「そう、戦争に参加。兵士をな募集してるだろうからな。冒険者でもお金稼ぎで戦争参加を行うのはある」
「そうなんだぁ」
「そうそう………」
ガチャン!!
「大変だ‼ 魔物が現れた!! 至急応援を!!」
ギルド内にただらなぬ雰囲気でトカゲの獣人の衛兵が現れてギルドの受付に助けを求める。その騒ぎを聞いたのか奥の扉から赤い恥女のギルド長が顔を出した。パイプタバコを咥えたまま。妖艶な姿で登場する。
「なんだい? いきなり叫んでさぁ。確かにここは冒険者ギルド。何でも屋で揉め事等も請け負う。落ち着いて依頼の話をすればいい。叫ぶことないさね」
「ギルド長!! 至急、兵をお貸しください!!」
「ああ、報酬は後でいいね。そこのお二方。行ってあげな。お望みのお仕事だよ」
パイプを自分達に向け、「行って来い」と言う。私たちは顔を見合せ、席を立った。
「人間二人だと!? 他に居ないのか?」
「あん? あんたの目は節穴かい? まぁいいたっぷり請求してあげる。一体、誰を寄越したかをね」
「他を所望する!!」
「ネフィア、勝手に行こうぜ」
「音拾うと………騒ぎは西門だね。屋根登って行こう」
「店主。お代はあの衛兵の元締めから取ってくれ」
「はいよ!!」
「ま、まて!! 人間!!」
「さぁ、あんたはお金の話をしないといけないから待ちな‼」
トキヤと私は依頼を受けて酒場を後にした。
*
西門、屋根上だが到着するとトカゲの衛兵に魔物ぽい者を取り囲んで口論していた。特徴的な姿で下半身は蜘蛛の形を持ち8本の足に上半身は裸体の女性がくっついている姿だ。口論は「買い物させろ」と「ダメだ入って来るな」だけの押し問答だ。
「ネフィア、あれって」
「ええっと。珍しいね魔物のアラクネだよ……アラクネ」
人の姿をしているようで実は魔物のアラクネ族。何故なら彼らは私ら魔族を餌としか見ていない。四天王の一人もアラクネ族だが、あれも魔物のままであり、側近の戦力で多大な影響を持っている。そう、捕食者。生態系の上に位置する種族だ。
「アラクネって魔物だよな」
「言葉を喋れる魔物だね。魔族と敵対してる。食べられちゃうからね」
「………それより。いい胸だな」
裸体の女性を指差したので叩く。
スパーン!!
「い、いたい。ネフィア、すまんって!!」
「バカ!! どこ見てるの!!」
「胸、腰、顔」
「………人間ってけっこうアホなの?」
「男は皆、アホだよ。だから薬で抑えるんだ。俺はな」
「うん、理解できた。確かに下半身を目を瞑れば綺麗だね」
実際、上半身は美少女。顔に複眼がついてるのを気にしなければ素晴らしい女性だろう。トキヤが私を姫さま抱っこで持ち上げ屋根から降り、私を石畳みの道路へ下ろす。
「何故だ!! 入れさせろ‼」
「ダメだ!! 魔物を入れたら混乱が起きる。それに信用できるか!! アラクネの魔物め!!」
「あああ!! 全員始末するぞ!!」
「お、脅しに屈しない!!」
「もう!! 入れさせろ‼」
パチーン!!
「「!?」」
私は指を鳴らすと指を鳴らした音が周りに響き渡る。そして、喧騒が無くなり私の声が通るようになった。
やったことは音を奪うことと私の出す音を伝えやすくすることだけである。だがそれで皆に私を注目させる。
「音魔法、音奪いと音渡し」
衛兵とアラクネが何かを喋ろうとするが何も音を出さない。驚いて私を見続ける。
「初めまして。ネフィア・ネロリリスと言います。何か騒ぎがあったようですが? なんでしょうか? どうぞ、あなたからお聞きします」
アラクネの方向に手を差し伸ばし話を促す。
「あ、あ……声が出る。都市に入りたいんだ‼ 頼む!!」
「なんで入りたいのでしょう?」
「ふ、服とその………人間の食料を分けてもらおうと……」
「そうですか。衛兵さん。ダメでしょうか?」
次は衛兵に話を促す。
「どこの馬とも知れない奴が仲裁に入ってくるな‼ 余所者だろう!!」
「…………余所者?」
「そうだ!! 人間の癖に」
「人間………はぁ………」
ダンッ!!
地面を踏みつけて大きな重たい音を響かせ衛兵を睨み黙らせる。話が進まないので仕方がない。
「我は魔王ネファリウス。余所者ではない!!」
「ま、魔王さま!?」
「もう一度言う。彼女を都市に入れさせるのは是か非か!!」
「あ、えっと!! 混乱が乗じます。アラクネどのには申し訳ないのですがお引き取りお願いしたいと思います。魔王さまのご命令でもそこだけは譲れません!!」
「くぅ!! 認めない!! 魔王!! そこをどけ!!」
「……………そうですか。落ち着いてください、アラクネさん。必要なものを私たちがご用意します。それで手を打つのでよろしいでしょうか? ダメでしたら貴女を今ここで狩り取らないといけません」
「えっいいのか? お願いしよう。物が手に入ればいいからな」
「よかった!! では、次に衛兵さん。彼女をここで待たせることは許してもらえますね?」
「それぐらいであれば大丈夫です……」
私はうまく仲裁が出来た。トキヤが控えて大きな剣に嵐を纏わせて威嚇し、様子を見ていてくれたのも大きい。荒事も視野にいれていたので一番の平和な解決で良かった。
「あ、あの。魔王さま。生きておられたのですね」
「私を魔王と思いますか? 嘘ですよ」
「えっ?」
「ネフィア・ネロリリス。駆け出し冒険者です。衛兵さん、立派なお仕事ぶりでした。まぁ魔王を知らない人が多いので嘘もつけるんです」
衛兵に一礼をし、アラクネの元へ行く。周りが騒がしくなり、口々に自分の事を噂した。
「ええっと。何が必要でしたか?」
「人間のたべものと………そのぉ……わ、わたしの服が欲しい」
「わかりました。ちょっと体を測らせてください」
「はかる?」
「体に合った服を探します。あと魔物だからでしょうが裸は感心しませんね」
彼女の背中に乗り、体のサイズを大体測る。そして驚くのは胸が大きいこと。これはゆったりした服がいい筈だ。
「そ、そうか………あいつにもそう言われて買いに来たんだ」
「では、行ってきます」
「ネフィア。俺はどうしようか?」
「トキヤは衛兵の監視をお願いします」
「へーい」
「い、いつのまに!?」
トキヤがアラクネの背後に立つ。私も見逃すほどに動きが速かった。
「アラクネさん。嫁が帰ってくる前に色々話をしよう。大丈夫。あんたは俺が衛兵から守る」
「………人間は格好いい生き物なんだな……彼と同じように」
「お金は後で貰いますからね」
私は買い物をするべく商店へ出向く。そして変な感じがした。胸につけているメダルが震えたのだ。だから、私は察した。あの必死さはきっと彼女は誰かに恋をしてたのだとメダルから伝わる熱でわかる。そう思うと助けてあげようと自然に思えた。愛の宣教師として、女神を崇拝する者として。
*
アラクネの買い物を済ませ、彼女に服を着せる。白のワンピースでゆったりしたものを着せた。非常に胸の辺りが膨らみ、お腹が太っているように見えるところを大きなリボンで結び引き締めて腰と胸ののメリハリをつける。
とにかく服を着て貰わないと目に毒だった。門の前に男が見に来ている程に注目を集めていた。ドレイクのワンちゃんを呼んで、多くのご飯を乗せてアラクネについていく。
「すまない。わざわざ危ない里までついてきてくれて」
「いや、そのね。心当たりがある人だから」
「そうそう。すっごーく心当たりがあるんだ」
最初は買い物だけで済まそうと思っていたのだが。捕らえられている人の話を聞くとどうしても確認したくなったのだ。トキヤの知り合いぽく、私も夢で見たことがある人だ。
「そ、そうか!! ご友人か!! はぁ安心した。人間だからどうしたらいいかわからなかったんだ」
「へぇ~」
「ご飯も何をあげたらいいかを知らないから」
「………いつから? 捕らえたの?」
「1、2週間?」
「ネフィア!! アラクネ!! 早く行くぞ!!」
「うん!! これはいけない!! 餓死をする!!」
「えっ!? そ、そんな!! 一月は大丈夫なのでは?」
「「お前だけだ!!」」
「しゅん………」
「は、早く帰ろう!! あの人が死んでしまう!!」
「ワン………ワン………」
ドレイクが呆れて唸っていた。そのまま駆け足でアラクネの里へ入るのだった。
*
アラクネの里の手前にドレイクを隠し、アラクネはそのまま素通りする。自分達は後ろを隠密でついていく。高い木々に蜘蛛の糸で作られた足場と家らしき物が点々とし、テントのようになって雪が遮られていた。アラクネ族がカサカサ動いているが全員裸である。
里の中では魔物が吊るされ、それを他のアラクネがお食事中だろう、かぶりついている横を通ったりもした。音を立てずに一つの蜘蛛の巣に潜り込む。
「はぁ、魔物の巣窟だねここ」
「アラクネ族は魔王の傘下じゃぁ無いんだな? 知らなかったぞ」
「トキヤ。パン、お米に忠誠誓う?」
「つかないな」
巣の奥で誰かが蜘蛛の糸で縛られている。隣に白い鎧と高価そうな剣が置いてあった。
「………ん、帰って……来たんだね」
奥で憔悴しきった男が顔をあげる。見たことがあった。そしてわかる。危ない状態なのを。
「ネフィア回復魔法だ!!」
「無理だよ‼ 飢餓は癒せない!!」
「とにかく何かを入れないと!!」
「………誰か………いるのか………」
目が空いていない。これは本当に危ない。
「ど、ど、どうしたらいい?」
「えっと、自分で食べる事が出来ないから。これを砕いて細かくして飲み込ませるんだ‼ 一番は口移しがいいけど………覚悟がいる。私はやだ」
「口移しだな!!」
アラクネがパンを噛み千切り。そして咀嚼。憔悴しきった男にそのまま口から流し込んだ。彼から飲み込む音が聞こえた。
「水は飲ませてたの?」
「もちろん。だが………ご飯はどうすればいいかわからなかった。都市に行けばあると思ったんだ。殺されるかもしれないが………どうしたらいいか本当に分からなかったから」
「解放すれば良かったじゃないか?」
「……………それは、嫌だ」
「トキヤ、わかってないね。まぁそんな鈍感さんも好きですけど」
「お、おう」
「……………………本当はそうすべきだったのか」
ある程度、口移しを見守ったあと。私は外傷を調べたが無事そうで安心し、今日は帰ることにする。
「ランスロット。変な所で出会うとは……」
「本当ですね。屈強な王子さまもこうなればただの餌ですね。早く帰りましょう。お邪魔ですし」
「お邪魔?」
「はい、お邪魔です。吊り橋効果って知ってますか?」
「………知らないけど?」
「まぁ、元気になるまで待ちましょう」
私たちはアラクネにどうすればいいかを伝えて里を後にした。




