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やっと訪れた平穏


 私は女王陛下であるが何もするなと言うちょっと不思議な状態で一人紅茶を淹れて啜る。そんな優雅な朝。


「……暇ですねぇ」


 本を読むかと考えたが暇であり、暇であり、どうしようかと考えていた。そんな中で、扉にノック音と大きい声が響いた。


「「ネフィアねえぇさーん、野球しよぉおおおおお!!」」


「……」


 声の主は異世界の女神とこの世界の泉からこんにちはの女神ウィンディーネだろう。まったく、私は優雅な女王陛下である。ここは空中庭園の鳥籠。わざわざ飛んで来たのだろうがお帰り願う。


ガチャ


「おはよう。なに、私。女王陛下なのよ。そんな野蛮な遊びしないわ。わかる? 眼下は私の庇護下、如何なる時も女帝としての姿が……」


「「ネフィア姉さん野球しよ」」


「……」


「……」


「うん、しまーしょ」


 私は扉を開ける。もちろん、ユニフォームにユグドラシルのバットを携えて準備は出来ている。まるで知ってましたと言う表情で二人は手を広げて出迎えられた。


「ネフィア姉さんもやっぱ暇してたんですね」


「アンジュ……貴方はどうなの?」


「マオウが頑張ってるので……」


「ウィンディーネは知ってる。チーム入ったんでしょ? エルフ族長の」


「はい。ですが……その前に選抜試験合格しないといけないので」


 選抜、複数のチームの勝ち抜き戦。最近ルールブックが配布され。それについて近々大会をするらしい。


「ネフィア姉さん選抜受けないの?」


 アンジュの言う事は確かに興味はある。ただ私は女王でそんなのはあまり興味がない。


「受けてどうするのよ。ウィンは誘われたの?」


「私はまだチーム決めてません。族長全員同じチームですし、女王陛下は誘われたのでは?」


「いいえ。初耳。族長が出るの?」


「はい。族長自身が強さと仲の良さを示さないと意味がないとエルフ族長は言ってました。逆にエルフ族長チーム倒せば金塊と選抜特約がいただけるそうです。族長チームに女王陛下の名前見た気がします。トキヤさま出ますよ?」


 仲の良さを見せる。それは遊ぶ事を見せて魔国民に時代の切り替えを促す方法の一つだろう。突貫工事で球場作ってるのはそういうことなのだろう。


「へぇ~トキヤさん出る……なら、出ようかしらね」


「ネフィア姉さん。凄いですね。ここの国。私の世界より熱量が感じ取れます。今にも爆発しそうな勢いです」


「……私には感じれないけど。女神として見れる物があるんだね。不思議……」


「はい、こう。グッと力が出る感じです。本当に良かった侵略してこなくて」


「フフフ。貴方の世界? いるぅ? いらないでしょ」


「ああああああ!! 姉さんばかにしましたねぇ!! 今に見ててください!! 奪いたくなる世界にしてやります!!」


「期待してます。張り合いないとたぶん纏まらないので」


 強大な敵がいれば一致団結せざる得ない状況が好ましい。そして……双方にダメージがある故に手が出せない関係性が大事だ。狂人が生まれない限り。


「でっ、何処でやるんです?」


「ウィンディーネが天使の広場借りたそうです。飛んで移動しましょ」


 空に住む天使の陸を借りるわけだ。宮殿から、目印を見つけて飛び移った場所は皿を逆さまにしたような形の浮遊する島であり。自然芝の運動場で貸切と書かれた札が立っている。魔法障壁があり物が落ちないようになっており、色々と整備されていた。既に魔法、薬の強化などが出来ないように魔方陣による呪詛さえある。


 己の真の強さのみがここでは頼りになる。


「よく貸切に出来ましたね……ここ」


「エルフ族長の持ち物です」


「えっ、ウィン。ここあの族長の?」


「そうです。地上はダークエルフ族長が空はエルフ族長が担当です。ダークエルフ族長は庶民、騎士団が商い出来るように女王陛下の膝元、エルフ族長は女王陛下の目の前にと言うことです。工事まだらしいですがトイレはあちらに」


 私が知らない所でそんな事がトイレ……トイレそういえばどうなってるのだろうか? 宮殿のトイレも。


「トイレ……どうなってるの?」


「さぁ……」


 謎である。肥溜めなのかな。


「トイレとかどうでもよくない? ウィン、ネフィア姉さん」


「私は死活問題です。一応、生きてます」


「「……」」


 まぁ、二人には実感がわかないだろう。女神なのだから。変な友である。サボり仲間か。


「あれ、ウィンちゃん。泉の女神としてがんばらないの?」


「はい、しっかりと。ネフィアお姉さん。ゴミ処理、水源汚染、不法投棄の禁止で泉の女神として活動禁止されました。許されてる泉のみ活動です。お城の泉だけです。それに銭投げが主流で……嘘つくので出なくなりました。あとは海側で私が信仰され始めました。昔より強くなってますし、落とし物はまとめて泉から外に投げ込んでます」


 なんとも泉の女神としては活動しているようで安心した。成功して良かった良かった。


「まぁ、今は野球の練習してます。楽しいですからね」


「ふーん。じゃぁ、捕球手、投球手、打球手の3人ローテーションで遊ぼう。私、投球手」


 手を上げて決める。打球手にウィンディーネ。捕球手にアンジュがつく。マウンドは少し高めであり、投げ下ろす感じだが。非常に遠い。


「人型だから……ストライクゾーンせっま」


 離れてみるが狭く感じる。種族の大きさで決まるストライクゾーンは。ウィンディーネは人型、最小のゾーンになる。だが、弱点もある。


 魔法の力がないため、素朴な力が強さになる。故に……


「1球優しく投げるね」


「はーい」


 私は軽めに真ん中に投げ込む。なお、真ん中には行かない。


ガツゥ!!


「くっ……」


 軽めに投げた球にウィンディーネが合わせたが唇を歪ませて打ち返すがボテボテのファーストゴロになる。


 そう、パワー負けするのだ。


「あれれれ~軽めに投げたのにぃ」


「……今のはお試しです」(軽め……流石姉さん。球が重い)


(ウィンの雰囲気が変わった? ネフィア姉さんはいつも通り……)


 私はもう一球やさしめに投げる。すると今度は見間違うほどに鋭い打球が私の顔に帰って来る。それをグローブで受け取ると……ウィンディーネの表情に悪い笑みが張り付いた。


「ごめんなさい。お姉さま……わざとです」


「……」(狙って顔に打ち返すなんて芸当……バットコントロールは一級品ね)


 パワーも女神である故にある方だと今さっきの捕球でわかった。スイッチ入ったみたいだ。


(ウィン、ネフィア姉さんから湯気が? オーラ? えっ、私が捕球してるの余所に熱くなってない?)


「ふぅ……カウントしましょうか」


「いいですね。ネフィア姉さん。昔の私ではない事をその面に刻んでやるよ」


「いいますねぇ? 英魔族のスライム以下の女神様」


「……」


(えっ、挑発!?)


 空気がピリピリする。なめてると殺される。私は背中を向け大きく背中から前へと回転をかけ、腕を大きくしなやかに振る。球がブレるが、勢いはある。


「……!?」


 かぁん……


 私の球はバットの上がわに当たり、ファールになる。感覚は十分。


「1」


「……くぅ」(球の回転が遅くてぶれるんだ。ノビはないけど速度パワーはあって打ちにくい!!)


(私……これ捕球できなくない? えっ、どこに来るの球)


 私は深呼吸し、もう一球投げる。スパーンと高い音が響き笑みを浮かべる。ヴァルキュリアの特訓が体の芯に染み付いている。


「2」


「……」


「ウィン……」


「アンジュは黙ってろ。三球三振なんかさせない。絶対に……一球みた。コントロールはない、いける」(外角低めに来い)


「う、うん」


 覚悟は決まった。私はマウンドから足を上げて全身全霊を込める。行けると信じて。


 ダァ!!


 しなる腕から手からボールが離れ、低めに球が進む。だが、外角低めのボール球になるそこに……


「おおおおりゃあああああああああああ」


 ウィンディーネのバットの芯が捉える。体勢を流しながらも、体の芯を保ったままバットを力任せに振り抜く。私は頭上を見上げ……そして目を見開いた。長い長い滞空時間、風はない空を泳ぎ。


「……ふふ」


 ごり押しの打球は結界に当たるのだった。打ったウィンディーネはそのまま、バットを投げて吠える。女性であることを忘れたような咆哮とともに。アンジュは立ち尽くした。


「……えっ。これ遊びだよね」


 呆れと驚いた表情で。


「ええ、遊びです……ふふ……」


 穏やかな空に平穏が比較的長く続きますようにと願うばかりだった。








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