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終幕


 王配とともに状況を眺めるなかで一人の少女が現れり。身の丈に合わない大剣を持ち、重々しい雰囲気の少女に私は覚悟を見受けた。


「フィナーレまでいけるかな?」


「王配様? その言葉の意味は?」


「……手加減できるタマと思うかい? 全力さ、欺瞞ない全力」


 トキヤ様の言葉同時に大きい剣劇音に戦慄し、慌てて女王の姿を見やる。突風に髪が靡き、私は目を細めて戦いを見やるが……動きが速く捕らえきれず、目を擦る。


「シィ……しっかり皆に見せてるか?」


「はい、王配様……」


「……来るぞ。世界壊す」


「!?」


 戦いの中で女王陛下の爆激が激しさを増し、上空に飛び上がり。恐ろしい魔力の高鳴りを感じる。地上に太陽が出来たとしか形容できない世界。背筋が冷える中でも王配は涼しい顔をする。


「……あれ、防がなければここら辺は抹消される。おれも君も」


「え!?」


「あの、剣を携えた勇者が立ち向かわなければ終わる」


「あの!? その!?」


 唐突な死刑宣告に私はたじろく。


「エルフ族長の娘の中でも表情が硬いと言われる君がそこまで慌てるのは面白いな」


 非常にいま言うべきことではないと私は思う。いつも鏡で……笑みを練習している。


「……」


「ははは。手加減はしないが、なんとかなる。仕舞いをつけるから、よろしく」


「王配様……はい」


 狼狽えるな、私。私はまだやることがある。死ねない。王配様の余裕が私を冷静にしてくれる。頼りになる。


「あれは……マオウ様」


 女王陛下の魔法に対し、この世界の人々が現れ対抗する。マオウ様の魔法によって膨大な魔力が一切消える。いいや、他の場所へ移した事で完全に防いだ結果となり、女王陛下に隙が生じた。


 私は決着が近いと感じ、砂埃を払い、見届ける準備をする。女王陛下は地面の落とされ、女神の剣が電光石火の如く切り払われる。その瞬間に女王陛下の元へ王配は動いた。


 一瞬だった。決着に止めをささないように現れる刺客としてマオウの前に立つ王配。


 庇うように後から出た王配様の名演を私は見続け、女王陛下が姿を消す。気付いた時にはそのまま私の元に女王陛下が倒れており、意識を失った女王陛下の重症な症状に慌てて魔法で手当てを行う。


 血濡れた所が燃え、魔力となって霧散するため綺麗な切り口で中身が見えるのはゾッとするが、四の五の言ってられない。『よろしく』と王配が言ったのはこの事だ。


「皆さん!! 目を通して見ているなら今の状況は知ってますでしょう!! 医療班!! すぐに!!」


 私は妹たちに呼び掛ける。応急処置だけでは不十分だからだ。呼び掛けに答えたのか、空から昆虫亜人族が数人を連れて現れ、女王陛下の服を剥いで治療に当たる。そのまま私の肩に王配様が手を置き、ゆっくりと私はそれに答えるように女王陛下から離れた。


「女王陛下は……」


「死なないと思う……これだけの者が生かそうとしているんだからな。治療が終わり次第、城へ戻る。そう、女王陛下がこの状態であり、俺が指揮をする。『全軍、帰城。終幕』以上を伝達だ」


「……はい」


 私は復唱し、妹たちに目を閉じ夢を通じて伝える。終わりだと。


「王配様……これから。この世界はどうなるでしょうか?」


「これからはこの世界の住人が決める。それはもう恐怖によってな」


 私は歴史の中心に居ることを自覚しながら宝石の右目を撫でる。終わった結果、私には始まりとなる。私のこの体を作った行方不明の先生へ、私は先生の想像を越える世界にいます。逢いに行きます。絶対に。




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