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女王陛下は動かない


 女王陛下はあの大災害以降全く動かず。ただただ私の報告を聞くだけでなにもせず、一人城の個室でお過ごしになる。鎧も着ず、ただ目を閉じているだけであり。優雅に昼寝もする。


 上がってくる報告は大体が女王陛下を恐れた無血開城、流血後の占拠。破壊工作の成功など。心が痛む報告が上がってくるが女王陛下は異も介せず。続々と世界が悪い方向へと向かう。


 暴力で全て奪って行く。暴力で全ての自由を奪っていく。暴力で秩序が失われる。


 たった数日で地域の主が消え、2番3番の実力者が喧嘩をする。細分化され、世界は荒れる。賊などが力を使う……なんというか。私の知る地獄の過去を思い起こさせた。


「世界はなんと脆く。弱いのでしょうね。そして……これをまた私の世界で行えるのです」


「女王陛下……動きならないのですか?」


「報告が上がってるのを聞いてるだけでいいわ。私が出る幕は終幕のみ」


「……」


「わかってない表情ね」


「はい、ご教授お願いします」


「……影武者と言うのはご存知?」


「遠い国からの言葉です。権力者が敵や味方を欺くための手段と教えていただいてます」


「そう。私の影武者としてあなたのお義母様がいる。そして……もっと多くの夢魔が私の姿を模倣している。同じようにな顔に髪、差異はあれどね」


「はい。女王陛下の留守を預かれるようにです」


「そう、そして……それは非常に便利な広報手段となる。元々は私の偽物を処刑し、覇を唱えようとした者の着想を奪い。エルフ族長が利用した。私はそれをまた利用してる。そう、私の顔を広めるために……私の大災害を私の顔と共に広めるために」


「……」


 私は顎に手をやり、腕を組む。そして……顔を上げた。


「なるほど。私たちは『女王陛下』と言う仮面をつけているわけですね」


「そう。劇場でも最初から最後まで同じ人が演じる事もある。だけど……劇を演じる人は本当に本人ではない。物語の中の主人公を『演じる』だけ」


「……一つよろしいですか?」


「なに?」


「その仮面……仮面の悪魔は嫌われます」


「……」


「女王陛下は……嫌われます」


「……そう。きっとそれを良しとは思わない人も女神もいるでしょうね。だけど……嫌われるのは慣れてるし、これからもっと嫌われると思うわ。全員が好意的ではない。損得だけの関係もある。それでも私は私。私はそれを良しとします。革命は戦いでもあるの。責任を取れと刃を向ける者もいよう。その時はよろしく」


「……はい」


 女王陛下は全てを背負う気である。これが上に立つ者である。座して待つのも上に立つ者に必要なのだ。女王陛下が窓辺により、髪を下ろす。そして……笑みを浮かべる。その表情は非常に甘く。年頃の乙女のように輝いている。


「……」


 誰を見ているかを私は知っている。窓の外できっとその手腕を使い。判断する。その人を眺めている。


「一生懸命。仕事してる」


「はい。頼りにしております」


「……ええ、いつだって頼りになる。体力有りすぎで無理しちゃう。だから、注意しないといけない」


「王配は……この行為をどう思われてるのですか?」


「……私と彼は一つ。彼は昔から『私』ばかり。私はそんな『彼』を…………………独占する」


 それは素直なワガママを口にする女王陛下に私は自身の胸を当てる。強く共感してしまい、その意見は非常にドロドロとしておりよろしくないと思うが。我慢出来ない物なのだ。


「……あの。しぇんせいは浮気……してますか?」


「してないと思う。信じても。信じきれないよね。嫉妬する?」


「……………します。女王陛下の事を非常にしぇんせいは好いてましたから」


「うん。でしょうね……あなたの姿はエルフ族長ではなく。その先生が願った姿だからね」


「……はい」


 私はしぇんせいの想う。女王陛下のような女性になれただろうか? 


「……そろそろ仕事しましょうか。大体、もういいでしょう。お願いできる?」


「はい」


 私は葛藤を胸に秘めたまま、返事を返すのだった。










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