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お義父様のご乱心


 その夜、私の夢にお義父様が笑顔で笑う出していると言う報告が上がった。報告主はお義母様で、近くで見ていたのだ。夢魔の私たちはそれを共有するが異様な空気に包まれる。


「ふふふ、見ているか? 諸君……これが『女王陛下』だ。これが夢魔の力だ。わかるな?」


「……」


 お義母様は答えない。ただ、お義父様に侮蔑の視線を向けるだけである。


「くくく、すまないすまない。我が想いの成就に胸が張り裂けそうなほどに歓喜している。歪んでいるのは知っている。抑えこむ事が一番だ……だが。笑えるだろう? おかしいだろう? 一人の背丈も小さな少女のような女王陛下一人でこれだけの大惨事を起こせる。それもなんだ? 唱える準備はいらない。私の弓のように魔法を高める道具も女王陛下には翼があり、わざわざ用意する必要はない。大規模な魔方陣や法による下拵えもいらない。魔法の成就を願う事もしない。一瞬!! 右手を振るうだけで焼け野原となり。力を出せば空から厄災を降らせる。さぁ、これを私たちはどうするべきだ? 封じ込めれるか? ふふふはははははは!! 世界は理不尽であり、だが破滅は皆に平等にある。それは女王陛下の膝元で……証明された」


 長い長い演説。妄信的だが、具体的な事象が伴った問いである。


「……私は真実英雄譚に着色し嘘を入れた。都市を焼ける炎を瞬唱し、6枚から成るその白い翼は一瞬で大地を焦土として終わらせる事が出来ると。夢魔の……いいや、女王陛下ご自身の強い『相手の理想を具現化』する能力を反逆の英雄トキヤと言う者を通じて私は信じた。その成就が今日、成った。嬉しくて嬉しくて……私自身おかしくなる。嘘からでた真なり」


 お義父様の昔から封じていた物が溢れるよう、吐露する。そう、私たちは記憶の証人となった。


「……私の目的は達した。これを8人の族長と共有し。我々は女王陛下の元で平等になる。等しい滅びを避けるため。あがない、英魔族の血族が絶えないよう。争い戦い生き残りをかけて生きていく。我々の暴力は女王陛下に捧げることになる」


 夢の中の空気は非常に重々しい。あの映像に私の映像も交じり怖さが先立つ。その中でお義母様は声を上げた。きっと勇気づけるために。


「皆さん顔を上げてください。これが真実です。私たちは恐ろしい生き物です。ですが……それが何かいけないことでしょうか? 私達は生きています。私達は『家族』になった。それでいいではないですか? 女王陛下の元で私たちに飲食住。そして文字や多くの物が手にすることが出来ました。護って行きましょう。英魔族夢魔族として。英魔族として……生きていきましょう」


 お義母様はそれはまるでネフィア女王陛下のように明るく。前向きだった。昔からのお義母様らしいお姿だ。


 そう、本当に女王陛下を写したような時がある。今でこそ女王陛下の元にいるからこそ私はお義母様に対する尊敬の念を再確認する。私はこの人の娘だ。故に私は夢の中で声を上げた。


「そうですね。お義母様。皆さんご存知でしょうが私に機械仕掛けの翼が具現化しました。理由はもちろん、私には心に決めた恩人がおります。怖い以上に私たちにはある感情が力になるのです。皆で見つけましょう『愛』を……愛されたい……本当に」


 吐露……私は……私の想いを吐露する。すると、至る所から会議とはそっちのけで私の話で溢れんばかりになる。『姉さんかわいい』『姉さん、どんな人?』『姉さんがんばれ』『お姉ちゃんの話が聞きたい』などなど、全くもって関係ない話の流れとなる。


 そう、まるで餓えているように。そう、餓えている。長い長い迫害の歴史が私たちを餓えさした。そう私たちの本質は……非常に分かりやすい。


「昔話でもしましょうか?」


 私は私のお話を彼女らにする。私の義手義足を含めて。





「おはようございます。女王陛下」


「おはよう、ふぁあああああ………もう昼ね」


「申し訳ございません……」


「いいえ、かわいいかわいい話だったわ。無表情で取り繕ってもだめ。全て……私は知っている」


「………」


 女王陛下に私は敵わないと察する。そして……本質を見る。誰よりも貪欲で誰よりも深く。そして……誰よりも熱い。『愛』の持ち主に。


「あと、あなたのお義父様。発狂してましたね」


「……お恥ずかしいお姿をお見せして申し訳ありません」


「ふふ、血の繋がりのないのに慕うのですね」


「はい」


 女王陛下は小さく『そういうところがエルフ族長なのよね……』と溢す。私の知らないお義父様をきっと思い浮かべながら私は問う。


「あの、女王陛下……女王陛下の視点でお義父様のお話をお伺いしてもよろしいですか?」


「いいわ。席にすわりなさい。中々、覚悟のいる話よ」


 私は女王陛下の目線でお義父様を知るのだった。












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