我が主の異常性
飛んで移動するだけで3日ほど要した。寝ずに飛ぶ事の危なさなど、飛行移動に関する物事を女王陛下から私は教わり、無理のない行程で移動する。夢では夢魔たちで集まり情報交換を行い、私の見たことを写し出して共有する。翼が生える女王陛下に憧れ、同じようになりたいと願う者もいたがそれは叶わない。
翼の真なる魔法式は私には伝える事が出来なかった。伝えても無理な物なのだ。人を想うという鍵が必要。それも非常に重い物が必要だった。それを伝えるには私では無理だった。
そんな悶々とする数日を過ごし、女王陛下はある一個の都市に到着する。だれもいない砦壁に私は降り立つと、エルフ族などがゆっくりと顔を出す。
「避難勧告と誘導は行いました。女王陛下、あとは……」
「わかった。何もいないと思っておこう」
「はい」
全て目を瞑る。全て……運のない都市は人影もなくそして……城壁の外で様子をうかがっていた。私は多くの視線を感じ、女王陛下からスッと離れる。魔力が高まり、危機感からエルフ族などが逃げ出す。
「10分、逃げ出す時間設けるわ」
耳元に声が聞こえ私は空へ退避し、都市を見渡せる高度で宝石の右目に触れた。ピリピリする右目通して記憶を始める。一生に一度の女王陛下の戦い。もぬけの殻だろうと思われる都市一つを相手だ。私は報告をするために感じている事を言葉にする。
「魔力の高まりを感じます。白翼が6枚が正規のお姿です。今、手から何か振り払いましたが視認できませ……」
私は言葉がつまる。一切、魔法陣を描くことも唱えることもせず。一瞬でそれは起こった。熱い、陽射しに顔を隠して眩い光球に私は眉を歪めた。
「光球……これは……なんなんですか?」
問いは帰ってこない。ただ、わかるのは都市の上に光る球が堕ちていき……都市の建物から炎が上がりそして……眩い中で女王陛下が手を下げるのが見えた。その瞬間に球は落ち、女王陛下が壁から後ろへステップを踏み出し、都市から離れた。
そのまま私の前に飛ぶ。
「女王陛下!?」
「退避しなさいと言ったわ。少し、来るわよ」
「?」
女王陛下が私を抱きしめ翼で包む。全く見えなかったがその一瞬、都市の壁が空へ舞う瞬間が見え、多くの瓦礫が炎にまみれて飛び散る。
「耳塞ぎなさい」
「ん!!」
慌てて耳を塞ぐと激しい爆発音と共に体が振動する。女王陛下の鎧が揺れ、私の義手義足が震え、心臓の鼓動が速くなり。そして……落ち着いたのか女王陛下の翼が広がり、白い羽根が舞い。
都市に降る。都市だったと思う大きな陥没した大地と舞い上げられた瓦礫が降り注ぎ土埃が風で流れていく。
チラチラ、ポツポツと残り火が可燃物を燃やし続ける。
残った物は……それは破壊つくされた都市だった物。瓦礫が散乱するなにかだった。そして……私はお義父様の声が耳元に届いた。何処かで見ていたお義父様の声が私たち夢魔通じて届いた。
「くくく……はははははは!! はははははは!!」
大きな笑い。大きな大きな歪んだ笑いに私は『狂信者』と言うお義父様の二番名を思い出す。その声を聞いているだろう女王陛下は物静かに私を見つめる。
「私の仕事はだいたい終わった。部隊と合流しましょう」
「女王陛下?」
「ん?」
「いいえ……なにもございません」
女王陛下の表情が少し固く感じながら私は右目に触れて記録をやめる。放心することはない。お義父様の声も切りただただ現実を受け止める。
これが私達の女王陛下なのだ。私達が育てた女王陛下なのだ。これが……私たち夢魔の頂点なのだ。




