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鋼の翼


 もぬけの殻になっている異世界の魔王城に私たちは入城する。物資がそのままであり、あえて活動出来るように準備が施され、炊き出し部隊など忙しく動き出し、多くの英魔人は情報を収集する。私と言えば使用人として女王陛下の寝室の準備を行い。物のありかを把握し、使用人として身なりを整える。


 私が一人が女王陛下のお付きとなる。そう、監視である。目標、目的はひとつ。英魔婬魔族、元婬魔族へ伝えるために。歴史の証人となるために。


 エルフ族長の密命。それとお義父様のご好意によって、私が会いたい人へのために。推薦してくれたのだ。


 客室であろう豪華な部屋にお一人で座り、報を待つ女王陛下に私は対面に座る。そう命じられたからだ。


「詳しい自己紹介まだだったわね。始めまして、英魔共栄圏英魔国初代女王ネフィア・ネロリリスと言えばいいかしら?」


「お伺いしております。女王陛下」


 私は座りながら胸に手を当てて伝える。


「エルフ族長の三女、サンライト・エルフでございます。使用人として家事などを担当させていただきます。よろしくお願いします」


「はい。少しお堅いけど。元々お堅い感じの子だと聞いてるわ。愛娘の中で一番自立心が強く。ダークエルフ族長のお墨付き。容姿に似合わず武道派であり、婬魔解放戦線では多くの大将首を上げたとか」


「お恥ずかしながら……事実でございます」


「その義手義足で頑張ってますね。見せてほしい。気になってる」


 隠している長い手袋を私は外す。恥ずかしいと思うのは何故だろう。


「照れてますね。表情に出にくいですが、わかります。冷たい」


 私の義手を女王陛下が触る。触れた瞬間に人肌を直接触られているような錯覚と暖かみを感じ、困惑した。直接何かを触られているようなそんなよく分からない感覚が私を緊張させる。


「義手は冷たいけど……でも、この義手は熱い。あなたのその想いもこれを作った細工師も。等しい熱を持ってる。それが奇跡を生むんですね」


「……」


「ありがとう。見せてくれて」


「いいえ……その……何を感じてたのでしょうか?」


「愛」


「ん!?」


 言葉が詰まり、息を飲み、心臓が跳ねる。


「かわいい。無表情の上にも感情がある。その口をすぼめる姿かわいい」


「お義母………女王陛下」


「……間違えた?」


「申し訳ありません!!」


 火が出るほど恥ずかしい。お義母様もよく似てらっしゃるので素で間違えてしまった。しかし、そんな私を女王陛下は暖かい瞳で見てくださる。悪役になろうとする人の瞳ではない。


「あなたのお義母様は影武者ですものね。まぁ影武者ですが……騙せるのは一部だけでしょう。異世界ぐらいは」


「女王陛下?」


「……エルフ族長から。娘を預かって欲しいと言われてます。働きに見合った報酬も用意をお願いされています。そして……すでにその報酬による。この義手で夢を追う準備も出来ました。あなたの愛の力で道しるべが生まれた。誇りなさい、夢魔として」


「……生きてらっしゃるのですか?」


「…………ええ。あなたのこの手足を作りし者は生きてます。あなたの働きに期待しますよ」


「はい……はい……」


「我慢しなくていい……」


「はい……」


 私は生きていると言う言葉を聞き、目から涙が溢れる。止めどなく流れる涙を押さえる事が出来ずそのまま女王陛下の手前で泣きじゃくった。






 私が大泣きした後。数日間女王陛下は動かずにいた、その中で私の元に報告があり、私は部屋に籠る女王陛下に謁見する。


「……女王陛下。ご報告です都市が一つ占拠できました」


「わかった。支度しましょ。7日、上出来ですね」


「はい、ご用意は出来ております」


 馬は用意しない。私にも今は飛べる翼が生まれた。ただ女王陛下よりも小さく、女王陛下のように枚数も少ない2翼であり。到底、飛べるような翼ではなかった。何故飛べるかと言われれば魔法と言う物らしい。夢魔、悪魔は昔から飛べる者も居たらしい。そして……夢魔は女王陛下には『翼がある。6枚もある』と言う事が事実化し、私のは『夢魔には翼がある。私にもある』と言うのが想像し、信じた結果である。


 ただそれは特別な物であり、発現には夢魔にあるものがいる。それを私は手に入れていた。私たちには非常に重い物であり、そして危険な物である。


「うまく飛べる?」


「はい、行けます。原理を理解しております。少し違和感がありますが」


「優秀、私はなんで飛べるかも全くわからないのにね」


「それに関しては予測しかできません。魔法ではありますが非常に不安定な物です」


「ふーん。そういえば私は自分の魔法を気にした事がなかった……飛べるのは便利。ただフヨフヨ浮いて滑るような状態だから、本当の空の者たちには劣るので気をつけましょう」


「はい。わかりました」


 私の旅に非常に強い助けとなるだろうと思われる。だからこそ教えてくださったのだろう。問題はスカートの中にズボンを履かないといけない事である。そして……鋼の翼……機械仕掛けのように歯車と板金の鋭い翼を鏡で見る。


「非常に格好いいわ。サン」


「本当に、こんな翼で飛べるのですね……」


「ええ。それはただの心象。世界に嘘をつく物の具現化だから、翼であればなんでもいい……はず」


 女王陛下の言葉にそれが魔法、奇跡なのだろうと私は納得し、自分の鋼の翼を広げる。歯車が唸り、金属の擦れる音に慣れ親しんだ義手義足の感覚が結ばれる。体の一部のように動かせ、世界のルールを無視して私の体が浮く。


「では、行きましょう。サン」


「……はい、女王陛下」


 私は白翼の黒い鎧に身を包んだ女王陛下を追って飛び立った。彼女の知る都市へと導かれて……私の目に女王陛下の姿を目に焼き付ける。使命のために。











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