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お城追放予定者


 ダークエルフ族長バルバトスは城の会議室を出た後にエルフ族長の元へと足を運ぶ。廊下で会い、そして開口一番に文句を言うため近づき肩を小突く。


「……義兄さん。この前、夢魔たちに彼女、彼らの可能性を説いたらしいね」


「ああ、そうだが?」


「彼女たちが謀反、反乱、自由に暴れる恐れがあったでしょう?」


「信じた。それがなにか?」


「甘い」


「甘くない。何故なら絶対そうならないと私と夢魔自身が考えたからだ。絶対にそれはダメだと道徳を教育した。バルバトス……女王陛下を見て思わないのか?」


「……もしもの話です」


「もしもなら全員。女王陛下に処刑される。それも圧倒的な力で……彼女らにそんな力はない。女王陛下は別格だ」


 バルバトスは言葉につまる。簡単に処刑を口にした義兄さんに昔を思い出させる。非情な族長だった敵だった日々を。反旗を翻すエルフ族を粛清する姿を思い出す。


「怒る事もわかってる。だが……信じたいじゃないか。で、裏切られたら泣いて斬ればいい……私がするつもりだった」


 だが、バルバトスにはわかった。昔ではわからなかった事も。安堵している表情なども見えるようになった。彼らは相手を知るようになったゆえに。


「まぁこれで立派に離れていても言葉が届く。夢魔を分散させて彼女らを使い連絡が取れるようになった。この方法の実験に持ってこいだ」


「なぁ。何故そこまで補強を考える? 確かに戦争が変わるかもしれないが……帝国があの様では……」


 ダークエルフ族長は帝国内からの報告を思い出す。よく言えば変わらない強権。悪く言えば成長がない。皇帝もお飾り。帝国の元追放者に紛れた英魔の諜報員も普通に暮らせているのだ。


「帝国が相手なのもだが。我々は勘違いしてはいけない。英魔国に新たな驚異が生まれた事を」


「……その驚異とは?」


「異世界からの侵略者。世界が違う事が証明された。さぁここから考える事が出来るなら。世界ごとで侵略する者がいないと言えないだろう。我々が女王陛下ではなく前々回の魔王なら……どうだ? 昔の私ならどうする?」


 エルフ族長は考える。もしもの事を。


「強くならないといけない理由がある。100年、数千年先を見据えてな」


「……わかった。わかった。恐ろしい考えだ。そうだな……今回はよかった。次回はわからない」


「ああ、夢魔が見てきた事を英魔女王陛下冒険譚に書き込もう。それで、空想の侵略者に危機感をもってもらおう」


「あれは教科書でもなんでもないんだがな……過剰評価しているし……」


「読み物として人気なら利用するまで。それと……ちょっと話が変わるがサンに技師の事は?」


「秘密のままだ……」


「ありがとう」


 二人は少し申し訳なさそうな顔をしたまま、彼女の探し人を思い出す。


「いや、俺も取引してるからな。それに女王陛下がバラすだろう。それを止める事は出来ない」


「ああ、そうだな……さぁ、頑張ろう。悪役を……」


「ああ悪役は得意だろ? 義兄さん」


「それはもちろん。では会議室で皆が待っている……」


 エルフの義兄弟はそのまま笑いながら廊下を進むのだった。






「ええ……9人全員族長が集まっていただけた事感謝します。そのぉ……」


「ネフィア……単刀直入に」


「こんにちは」


「「「「「こんにちは~」」」」」


 城の中にある会議室に9人の長とそれに従う者数名が集められる。緊急のためにドラゴンなどが飛び回り大陸中から集められた。緩い空気の中でネフィアは申し訳なさそうに話をする。


「聞いていると思うが……兵を借りる。異論はないな」


 沈黙。批判はない。


「何かないのか? では、以上」


 すでの動き出しているのでネフィアの同意はすでに成立している。だが異様に重々しい空気が漂う。その中で獣人族。リザード族長が声を出す。


「はぁ、ネフィア女王陛下。褒美の話をしましょう」


「う、うぬ。一応、金などは異世界の魔王から届けられており。一部分配。一部は功に応じてとする」


「では……足りませんねぇ」


「金は結構潤沢だったぞ」


「金よりも……ワシはこの城が欲しい。オーク豚屋商会に取られなかったでしょう?」


 一瞬でざわつく。しかし、ざわつき方が変なざわつき方にネフィアは気が付いた。若き筋肉隆々としたオーク族長が立ち上がり叫ぶ。もちろん後ろに立っているお控えの人間の元騎士の助言だ。


「俺も城がいい!!」


 その声に賛同する声が多く。極めつけは城の地図を取り出し、区画の取り分を決めだす。ネフィアも気付き王配トキヤにアイコンタクトをすると。王配は満面の笑みで答えた。


「ネフィア、家没収な」


「えええええええええええええ!?」


「ネフィア。お前がここに居ると首都が色々危ないしトラブルばっかりになるから。放逐だ」


「トキヤ!? えっ!? 家なし!?」


「いや、新しい場所を天使族が用意する。衛兵も天使がするらしい」


「よかった……」


「さすがに女王を野ざらしは皆が危ないからな」


「すごくトゲのある言い方ね」


「まぁ、会議前にすでに話は終わってる。問題は……」


 エルフ族長が中庭噴水に丸をする。


「ここは既に先約がある。この近くの一室も人が住むと思われる」


「誰だよ」


「本当に!? スキャラ族として水場が欲しかった」


「まて、水は大切だ。水関係は誰が管理する?」


「………クローディア後は任せた」


「オーク族長として議論参加しろ」


「わかんねぇ……」


 ネフィアはそのまま立ち上がり、声をかける。


「区分を募って選び取る。選抜会議します。トキヤくじ引き用意して」


「わかった。箱にアタリでいいか?」


「いいよ」


 そのまま、区分けを行い。黒板を用意し、9人がそれぞれ欲しい場所を言っていく方式になった。被れば抽選。そして会議は大いに盛り上がりを見せて進行したのだった。






「トキヤ、なんで族長は城を欲しがったの?」


「城を改築して、族長の考える方法を実行するんだってさ」


「何が……出来るの?」


「秘密らしい、まぁ……オーク商会が色々動き回ってると聞いている」


「……」


「まぁ、勝手にするさ……」


「そうですね」


 ネフィアはそのまま、自室へと入り眠っているアンジュを考える。


「眠れる姫がいぬ間に荒らしましょ」


 そう、今は……やることがあると。












 



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