エルフ族長の隠れた4本腕
数日前、マオウ殿は『嘘の情報』を持って一足先に世界へ帰って行った。私は族長として、部隊を用意できる範囲を考え通達した。
異世界へ向かわせるのは屈強な戦士だけ。故に私が有する聖歌隊の一部を出すつもりだ。9人の族長が持つ精鋭部隊の一部。大広間にあの大戦を生き延びた精鋭が集まるだろう。故に切り札という物を用意する。
「お義父様。ただいま到着しました」
「お疲れ様」
私は私の右腕となる義娘に声をかけた。赤い瞳に金色の髪の婬魔である。娘のイチと言う女騎士である。愛するが故に非常に女王陛下に似てしまったがそれでも私はイチと言う娘がわかる。
「お義父様、緊急召集の号令ですが一体なんでしょうか?」
「それは他に3人が来てから話そう。椅子に座っていなさい」
「はい」
軽装に、剣を携えた娘が剣を置く。そのまま、椅子に座った瞬間にまたドアが開く。女王陛下の似姿に青い瞳の美女が槍を持って登場する。槍はそのまま壁に立て掛けて息を整える。
「遅くなりました!! お義父様!!」
「ニィ、大丈夫。サンもシィも来ていない」
「いえ……申し訳ありません」
「時間指定したかな?」
「はい」
「……すまない。急かした」
どうやら私も落ち着いてないようだ。忙しい彼女達の事を気にしていないのだから。
「ワン姉さん。他は?」
「まだ」
「シィを呼んできます」
「私はここにいる」
「ふぁ!? しぃ!?」
煙の中から登場するように姿を部屋の隅から現れる。ニコニコと悪戯ぽい笑みを向ける四女に私は首を傾げた。
「いつからシィはそこに?」
「お義父様が帰って来る前に。学者なので暇が取れるのお義父様」
そう言いながら、私は金色の瞳を覗き込む。ローブを来ている魔法使いの少女はそのまま席に座り、私が用意しておいたクッキーを一口含む。
「あっお義母様のクッキーだ」
「シィ!? 本当に!? あっ本当だ」
「ニィ、シィ……はしたない。もう子供じゃないんだぞ?」
「いらないの? ワン姉ちゃん?」
「いる」
娘達がフィアのクッキーをほうばる。私よりも美味しそうに食べる姿に癒されながら私は最後の子をまつ。ワンは聖歌隊の婬魔族だけで組んだ中隊長であり。ワンは剣と槍の白兵、ニィは個人戦略部隊員。シィは学者兼魔術中隊長である。そして……最後に来るだろう冒険者の婬魔がおり。この4人は私の義娘である。
トントン
戸の叩く音がする。優しい戸を叩く音に最後の娘が帰って来たことを知る。
「入っていいぞ。サン」
「はい、失礼します。お義父様」
物腰の柔らかい娘。そしてオッドアイであり。右目はアクアマリンの宝石の義眼は茜色に染まり、緑色の左目と相まって人形のような表情だ。四肢も義足義手の重々しい形にそう思ってしまうほど。女王陛下の姿に似ながら異形な姿の彼女の名前はサンと言う。
そう、三女だからサン。そして……太陽を意味した名前であり。彼女を元に夢魔の名前を決めた。
「お義父様、そして、ワン姉様。ニィ姉様。シィ。お久しぶりですね」
そう、三女は冒険者である。使用人服をお洒落にした服装で彼女は旅をしている。彼女の想い人を探して。
「「久しぶりサン」」
「久しぶり!! サン姉ちゃん!!」
「久しぶり、サン。帰って来て早々だが席に座って話を聞いてほしい」
「はい、お義父様」
一番大人な雰囲気の彼女は静かに義手の音だけを鳴らして座る。そして……静かに私の言葉を待つ。
「女王陛下の号令があった。それも、秘密裏に」
3人のクッキーを食べようとする手が止まり静かに置く。3人の面構えが変わり、あまりの変貌に嬉しさが込み上げる。いい面だ。可愛く、それでいて鋭い目。女王陛下の切替のような変貌。すばらしい。
「内容は追って細かい説明がある。そういう事で集めた。作戦内容は侵略行為だ」
「侵略!? お義父様!! それは本当ですか!!」
「ワン、静かに。侵略と言っても偽装侵略だ。侵略後、敵方の逆襲によって我々が敗北。その後、敵方が一致団結し抵抗を見せる。一致団結させるために石を投げる作戦だ」
「……見返りは?」
「団結後の大国との同盟。すでに向こう側と裏取引はすんでいる。女王陛下の命令であり、褒美もある。まず、女王陛下の城が売りに出されて私たち族長の物になる。私からも君たちに報酬をあげなければならないが。今回は慈善事業みたいな物であまりあげられそうにない」
「なるほどです」
「……」
サンが無表情ながらも瞳を揺らす。私はその小さい仕草を読み解く。何が質問があるのだろう。
「今の所で質問は? サン、あるだろう?」
「はい お義父様。報酬に女王陛下へ個人的な謁見はあるのでしょうか?」
「わかった。お願いしよう。お願いするだけになるかもしれない」
「ありがとうございます。私からは以上です」
「他には?」
「部隊予算出ます?」
「ワン、訓練として予算が出る。そう、これは訓練になる。そして……女王陛下を間近で見れる。目に焼き付けなさい。一体、この英魔国魔王の恐ろしさを」
私は彼女達を紹介しようと決める。私の隠れた戦力である彼女達を。そして……驚かれるかもしれない。
女王陛下の影武者になれそうな娘たちを私が秘密裏で用意していたことを。




