目覚めた陽魔王
私は夢を見た。初々しくも情けない夢を。そして……怒りも思い出す。だから、満身創痍のマオウの顔面が大きな青アザの後に何発も入れて起こした。
「なんて私が怒ってるかわかるか?」
「……」
「わからないのだろうな? わかってたらこうはならない。マオウ、なんで彼女の恋に答えてやらなかった?」
「………」
「いいわ。断言してあげる。自分に自信がない。それが招いた結果なのよ」
マオウは顔を背ける。何も言わない根性なしをこれ以上殴るのはやめ手を離す。
「……私が性根叩き直してあげるわ」
「ネフィア!! どうしたんだそんなに怒って……大丈夫か?」
トキヤが手を出して彼を起き上がらせホコリを払う。
「すいません……」
「いや。こちらこそ嫁が暴力ふるって……」
「いえ、私が怒られる理由を持っていたのです。本当に魔王らしく接していれば、こんなことにはならなかったのでしょう」
「ネフィア……あのさ。この子起きないけど?」
「な!?」
マオウが口の血を拭い、アンジュを抱き寄せる。スヤスヤと眠っている姫に私は言う。
「王のキスで起きるわ。そう、王のね。それまでずっと眠っている」
「……」
「さぁ、選ぶといい」
「………わかりました」
そう、マオウは迷いなく幼い姿の彼女の唇を奪った。その迷いない行為に私は察し、そのまま笑みを溢す。もちろん彼女は目を醒まさない。
「目を醒さない……何故ですか!!」
「何故と思う? 私が封じています。さぁ、その子を安全な場所に置き。私の世界へ案内します」
「ネフィア? 何をするつもりだ?」
「……あとで説明します」
私はトキヤさんに帰る方法を聞き、魔方陣を描く。ぶわっと水が溢れ私達を包み込み。水の……世界の海へと落ち。そして……見知った場所へ足がつく。
そう、城の寝室へと繋がった。繋がり、多くの魔導師と書が転がり。腰を抜かしていた。まぁ、一言、言うならば。
「ただいま。皆の衆……エルフ族長呼んでくれないか?」
「おかえりなさいませ。私なら既に予言し帰って来ました!!」
私の寝室の扉の裏で彼は現れ、得意気に胸を張る。
「帰って来るのを信じてました……が。その方は誰でしょうか?」
「異世界の魔王。名前はマオウといいます」
「初めましてマオウといいます」
周りがざわつく中で私は『静かに』と囁く。周りの状況から異世界へと繋ぐために多くの努力が見え、私は笑みを溢す。
「ご苦労様。君たちは素晴らしい魔導師だ。私は帰って来たぞ。私は、君たちが作った魔方陣で帰って来たぞ」
素直に私は褒めた。そして……エルフ族長などが片付けを命じ、私はそのまま彼に伝える。
「一室、フィアさんに異世界の魔王に用意してあげてほしい。そこで、異世界の魔王を含めてこれからの話がしたい」
「わかりました。妻に用意をお願いします。用意が出来ましたらご案内します」
「ええ、では。マオウ、こんな散らかった場所ですが椅子をご用意します」
「ありがとうございます……彼は幹部ですね?」
「ええ。地方を治める王です。族長と言います」
「……」
「まぁ、ゆっくりとお話します。私の居る世界を……」
エルフ族長の部下が呼びに来るまでトキヤと私は私達の事を説明するのだった。彼はそれを聞き驚きと共に、少しづつ顔付きが変わるのだった。
*
客室を用意し、そこの椅子に座り。マオウと私。エルフ族長、ダークエルフ族長、トキヤで会議を行う。最初は私が置かれた環境を説明し、その後に1つ契約を提示する。
「私達は『異世界』を認識した。その場所は島のようで国も人も住んでいる。たまたま友好的だったが、これからもそうとは限らないわ。故に軍縮は全く無くなりそうね」
エルフ族長は私の顔をひきつる表情を見せる。
「一般に知らせる訳には……」
「知るべきよ。知らせるべき。『異世界』があり、次元の海がある。そこは得体が知れない事をゆっくりと流しなさい。護るのは国民ですから」
「わかりました。今回の事は広めます。はぁ、仕事増えたな。ダークエルフ族長」
「なに、やる気が出るって物だ。それに……友好国となってくださるのでしょう?」
ダークエルフ族長の問いにマオウは頷く。
「ええ、我々も戦おうとは思いません。ご安心ください……あなた方よりも数世代遅れている世界です」
「私とマオウ両名の存命中の同盟をここに静かに宣言します。ネフィア・ネロリリスとして。そして……マオウ」
「はい。ご命令でしょうか?」
そう、同盟の貢ぎ物と言うニュアンスだ。まぁ確かに貢ぎ物だ。それは私からだが。
「ええ、命令です。あなたの世界を私に貸しなさい」
「「「!?」」」
「ネフィア!? どういう事だ!?」
皆の驚きの中でトキヤが問う。私はそれに静かに答えた。
「私を魔王として女王として絶対に必要だと認めさせた者の真似事を私がします。私は……魔王になります」
私の言葉に……皆が理解を示さない。なので私は静かに考えを丁寧に説明するのだった。




