魔国農業都市..
トロールが治める地方。都市の周りは膨大に整地されており、水路があって雨が無い日でも水が撒けるようになっているようだった。水路は都市まで続いているほど膨大に入りくんでおり、インフラ整備がしっかりしている。
農場には小麦が植えられ緑の草が生い茂り。トロールの巨体とドレイクがちらほら見えるた。向こうも物珍しいのかこっちを見ては作業に戻っている。
「凄いなここ、農場の広さが帝国よりも広い。壁が無いから自由に広く使えるのか?」
「魔物、大変そう」
「ああ、こりゃ大変だ。拡張がいいが何も守る物がない」
農地を歩きながら緑を眺める。寒いだろうが植物は元気らしい。色んな農地があり、トロールがせっせと働いている。
「トロール族、ギルドあるかなぁ?」
「行ったことがないからなぁ。ネフィア、ちょっと待ってろ。遠視してみる」
トキヤが右目を閉じ短く詠唱する。きっと都市を覗いているんだ。私が拐われた時も使ったらしい。
「痛っ!?」
そしてトキヤが唐突に右目を抑えて痛がる。
「トキヤ、大丈夫!? どうしたの!?」
「まだ、本調子じゃぁないみたいだな。魔力を流したら頭痛と目がな………大魔法の代償だな。体の一部が壊れてる」
「無理しなくていいんだよ!?」
「大丈夫、痛いのは慣れてる。魔法の副作用は続いてるかぁ………護りきれるか?」
「痛いの慣れてるとかじゃぁないんだよ。心配するからね? 目を触れさせて」
立ち止まり、私は右目の瞼を撫でる。痛みを取るだけの魔法を唱えた。治すのは無理そう。
「大丈夫かな?」
「ああ、痛みが引いたよ。見えたけどギルドっぽいのは無いな」
「無いかぁ~お金稼ぎは次の都市かな?」
「だろう」
ゆっくりと歩き、豆粒だった都市が目前まで大きくなり。一応、木の壁の門の前に立っているトロール族に声をかける。考えてみると私はお尋ね者。「入れてくれるのだろうか?」と思うのだ。
「おう!? 珍しいなぁ東門からの客だぁ~」
「向こうから来ました」
来た道に指を差し、トロールの守衛さんを見上げる。
「向こうから? 遠回りしたもんだなぁ……」
「都市に入れてください」
「ああ、人間はダメだ~悪さしか働かねぇ~」
「あのぉ婬魔です。私たち」
「嘘でもダメさぁ~人間は嘘つくだぁ~」
「ええ!? 魔族否定されたんですけど!?」
「宿での休息、ドレイク等が欲しい。魔王城に行くために」
「だめさぁ~」
思った以上に外者に厳しい。私は溜め息一つしたあとに胸を張った。なんでも利用すると決めている。だから、身分をさらけ出す。
「余は魔王なるぞ、通せと言っている」
「おい!? ネフィア!!」
「魔王ぉ? 魔王……………」
「族長の上に立つものだ。たぶん」
トロールの守衛が焦り出す。「魔王」と言う存在を思い出したのか、「アワアワ」と言い出した。近くに置いてある角笛を拾い吹き、大きな音と共に扉が開く。そして数人のトロール族が現れた。各々が相談し合っている。これはもうダメかもしれない。
「トキヤ、もしダメなら次の都市行こ。大丈夫でしょ?」
「ああ、だが遠いぞ?」
「食糧分けてもらおう。だめなら魔物を狩っていこう」
「そうしようか。水は風からいただけるしな」
私達は都市を一つ諦める事も視野に入れる。トキヤとこれからの事を話してると唐突にトロールの一人に声をかけられた。
「俺たちじゃぁわかんねぇ……でも、魔王かも知らねぇ。怒られるのもおっかない。入れるべ。しかし、族長に会うべ」
「はーい。いいでしょう。入れてくれるなら」
「ネフィア。危ないぞやっぱり」
「大丈夫と思う」
「入るど」
トロールが棍棒を掴み都市のなかをそれで差す。巨人が棍棒をもつところを見ると恐ろしいぐらい迫力があった。他のトロールと一緒に入り、監視を含めて案内してもらえる。
「お、おお!?」
「大きいなぁ家が」
家や建物の扉が大きく。一軒一軒が豪邸のような大きさ。トロール族の家は全体的に大きい。一人のトロールが指を差す。
「あそこが唯一の宿屋。悪魔が経営してる。酒場はそこの隣」
「ギルドありますか?」
「知らないな~」
ギルドはやっぱりないらしい、道行くトロールや獣人、悪魔に聞いてみても答えは一緒だった。自分達はよそ者らしくチラチラ見られる。珍しいのもあるが私達が目立つのもあるだろう。
「宿で大人しくしててくれ。族長呼んでくる」
「はーい」
聞き込みを制止され大人しく宿に入る。中は至っては普通の部屋が沢山あるだけの宿。店主は角が生えた悪魔の男性だ。
お金を出して部屋を案内してくれる。一応、婬魔なので部屋は二人で眠れるベットを所望した。部屋に入ると溜め息を一つ。
「ネフィア………店主に変な目で見られたぞ」
「婬魔を連れて宿は売春で良くあるから」
「売春、この都市にあるのかぁ?」
「大体あると思うけど。トキヤの方が詳しいでしょ」
「売春はねぇ………よくわかんねぇ。いかねぇーから。話だけしか知らない。あそこがいいとかな」
「ふーん。ねぇ、トキヤさん。お買い上げありがとうございます。これからも可愛いがってください。なーんてね!!」
「もちろん。全部使って買ったんだ。可愛いがってやる」
「じょ、冗談で言っただけだから!!」
私は自分の体を抱いて睨む。
「冗談なら。婬魔は隠せよ。変な目で見られる」
「………同じベットで眠れるからやだ」
「普通に頼めばいいだろ?」
「別に私は婬魔は悪い種族と思って無いよ? 誇りに思う。夢魔と言ってもいい。例え、虐げられた種族だろうけども」
「そうか。それもそうか………恥ずかしい種族と言って隠すのもあれだな」
「そうだよ‼ それに婬魔はね、最上の種だって思ってる。優れてる」
私は婬魔に誇りを持てる。売春婦の糞母に感謝できるぐらい。
「それより、トキヤ」
「なんだ?」
「個室だから………抱き締めて」
「はいはい。時と場所弁えてるのは良いことだ」
鎧を脱いで、彼の胸に飛び込んだ。本当に安らげる私の場所で少しの時間が経つのだった。
*
悪魔の店主の言伝で私たちは酒場で待つことになる。酒場で商人を探すがこの時期はいないらしいが、都市は農業が主流であり収穫時期には買い付けの商人ばかり来る。その商人にヘルカイトの鱗を転売しようと思っていたのだが悲しい事に収穫時期が春先らしいため。商人はいないのだとか。
「諦めてご飯でも食べよう。ネフィア」
「はーい」
大きな酒場に大きなカウンター。その横にトロール族以外用のカウンターが段差をつけて用意されている。そこに座り、注文したパンを摘まみながら族長を待つことにした。
「間が悪いね」
「いや、忙しい時期じゃなくて良かった。のんびり出来る」
「大好きだね、のんびりすること」
「風の魔法使いだしな」
「魔法使いではなくて魔導師でしょ? そういえば剣士じゃなかったね」
メチャクチャな力業が得意な魔導師と言う変人である。デーモンの斧を弾き返す馬鹿力が売りで技術は力で押し潰す。戦い方が雑な部分を察する。
「まぁ、魔術士は強いのがわかってるからあえて魔法使いを名乗るさ。油断こそつけ入る隙が生まれるし剣士と思ったら魔法使い。魔法使いと思ったら剣士。戦い憎い事を積極的にする事だ」
「へぇ~ミスを誘うんだね」
「そうそう。それにしてもパンうまいなぁ~小麦の風味がいい」
「うーん、うまいけど。ジャム欲しい」
「ん? お客さんごめんなさい!! ブドウジャムあるよ‼」
店番のトロールが瓶を持ってきてカウンターに置いてくれる。私は驚きながらそれをつけてパンを貪る。
「あまぁ~い!! 久しぶりの極甘いもの!! 美味しい!!」
「へへへ、わしらのジャムは美味いだろぉ?」
「苺ジャムありますかぁ!! 分けてください‼ お金を出します買います!!」
「ああ、丁度あるね。小人用の3つ」
小人とは男性のトロール以外の小さい生き物を表す。
「全部!!」
「ネフィアまて!! お金をそこまで持ってない!!」
「全部で銀貨1枚でええで」
「やっす!?」
「へぇ~安いんやねぇ~ここでは普通さねぇ~」
さすが生産者たちこれが原価なのだろう。安い。
「やった!! ジャムが手に入った!! 苺ジャムぅ~」
「良かったね。お嬢さん。許してもらって」
「へへ~うん!!」
「仕方ないな。なんで苺ジャム好きだんだよ?」
「だって、トキヤも苺好きでしょ? それに思い出の味なんだぁ~トキヤが初めてくれた美味しいジャムで、嬉しかったなぁ~私を助けに来てくれたときの苺だしね!!」
「よく、覚えてるね」
「覚えてるよぉートキヤの事は」
「おまえ、馬鹿、アホしか言ってなかった子も覚えてるよ」
「む、昔を掘り返さないでよ」
「ここ、最近だと思うけどなぁ………」
トロールの店長にお金を渡し。小さな瓶を3つ手持ち袋に入れて貰った。旅の楽しみは増える。
「何処かで同じような商品があれば、うちらが作ったものねぇ~きっと」
「へぇ~、そうだ!! ジャムを分けてくださりありがとうございます。これを一枚どうぞ」
私の袋から、売る予定だったヘルカイトの鱗を1枚渡す。掌サイズの紅い鱗だ。トキヤは笑みを浮かべ黙って私の行動を見つめてくれている。
「これはぁ………ドラゴンの鱗!?」
「ヘルカイトと言うドラゴンの鱗です。感謝の印でどうぞお納めください」
「はぁ…………こんな高価なもんをありがとう。こりゃいい。御守りだぁ~」
店長が喜ぶ。喜んでくださると嬉しい限りだった。
「あ、あのぉ!!」
背後で声をかけられ、そちらに向き合う。小さい女の子だが胸の大きさ等でトロールの成人女性とわかる。非常にか弱そうに見えて生命力は強いと思われた。私は本の知識通りで嬉しい。世間知らずじゃないことが知れる。
「なんでしょうか?」
「そ、その………ドラゴンの鱗を譲って貰えないでしょうか?」
「ドラゴンの鱗のあまりは少ないんです。ごめんなさい。これはお金に替えないといけないんです」
「お、おかねなら。出します‼ 1枚ください!!」
必死に懇願する姿に……何かを感じる物がある。
「ドラゴンの鱗を誰かにあげるのですか?」
「はい!! 夫の御守りとして加工して………お渡ししようと思ってます」
「御守り?」
「お嬢さん。ここいらなぁ~ドラゴンの鱗を御守りにするのは普通だねぇ~昔からドラゴンは力の象徴だからねぇ」
「もっと詳しくいいかしら?」
「はい!! 私たち女性は外での作業を手伝えません。そして外では魔物等危険はつきもの。ですから帰って来て欲しいことをお願いするために御守りを作るのです。そのドラゴンの鱗はドラゴンのように逞しく、生命力あふれ、魔物に勝ち元気で帰って欲しいためにいい御守りが出来るのです」
簡単に言えば御守りの最高級の素材らしい。
「そうですか、では………一枚どうぞ」
袋から取り出し、一枚手渡す。
「あ、ありがとうございます。お金にすぐにご用意します!!」
「いいえ、結構です。好きな方に送るのであれば………いりません」
「えっ………しかし………」
「大丈夫ですよ。ね?」
「ああ、大丈夫。鱗は楽に稼ぐだけの方法のひとつだけ。別に稼ぐ方法は他にある。あまり気にするな」
「ありがとうございます!! 魔王さま!!」
「ん………んんんん!?」
鱗を貰った彼女が走って酒場を出る。急いでる彼女に何故、魔王と知っているのか聞こうとしたのだが。行ってしまった。
「あ、ああ………魔王なのを知ってる理由、聞きそびれちゃった」
「ネフィア、田舎だから噂が早いのかも。あとお前は宣言した」
「田舎、怖いです」
「いや……宣言した……」
「すいませーん!!」
酒場に何人かの女の子。もといトロールの女性が駆け込んでくる。
「ドラゴンの鱗をください!!」
「私も!!」
「お願いします!!」
「………あっはい」
トロールの女性はトロールに負けず劣らず屈強なのかもしれないと思ったのだった。
*
「鱗、なくなちゃったね」
「一応、俺らの故郷の道を教えたからそこへ行けば鱗を買えることを言ったが………まぁどうなるだろ」
枚数に限りがあり、一人一人に渡していたら無くなってしまった。無くなってしまったのにまだ来るため。都市ヘルカイトの場所を教え、鱗を譲ってくれる場所と説明した。
「鱗で儲かるなら商路出来そう」
「確かに………それだ!!」
「ん?」
「ネフィア!! ここのトロールさんたちに都市を教え、道を作って貰おう!!」
「…………ああ!! 名案、さすが私の勇者トキヤ!! かっこいいです。感激です‼」
「褒めすぎ」
「褒め足りませんけど?」
「はい、深呼吸」
「すーはー」
「落ち着いた?」
「すーきー」
「一旦黙ってろ」
「へへへ」
照れる彼は好物。魔物でも怯まない強者とのギャップがすごく、声に出してむぅ~っと唸るぐらい好きである。
「お二人、仲がいいですねぇ~~」
「でしょぉ~彼は私だけに優しいんだぁ~」
「そんなことないぞ」
「本当に? 本当に~?」
「ああ、本当に」
「帝国の姫様」
「ああ、ごめん。お前だけに優しいわ」
ちょっと毛嫌いし過ぎな気もする。可哀想だが私の勇者なので仕方がない。
「お待たせしました!! お二人さん。トロール族長です!!」
声をかけられ振り向く。一番初めに鱗を譲ってあげた女性とトロールの中でもまだ一際大きく、横にも大きいトロールが立っていた。その姿を思い出す。変わらない姿。
「あ、あなたは!! あの時の!!」
いつの日か一度だけ監禁生活に脱走を加担してくれたトロールだった。
「オデノコトオボエテル?」
片言でトロールが喋る。そう、このトロールは喋るのが上手くない。
「覚えてます‼ 小さい部屋から少しの間出してくれたのを!!」
「ソウカアノトキノコカァ………オオキクナッタナァ………オンナノコダッタノカ」
「はい!!」
「この人、喋るのと考えるのが苦手だから。私がちょっと探りでここにいたんです。ごめんなさい、魔王さま」
「いいえ!! 私こそ都市に入れていただきありがとうございます」
「オデ、カンシャシテル」
「鱗を譲っていただきありがとうございます」
「ええ、喜んでいただけて光栄ですわ」
変わった出会い方もあるものだと思う。もしかしてとも考えたが、本当に昔から変わらないのに運命を感じる。
「まだ、族長をされていたんですね。てっきり処罰されたと思ってました」
「ええっと、処罰はあったのですが。族長は彼以外務まりません。この都市で一番強いですから」
話を聞くと、族長になる者は都市に籠り女子供を護る役目があるらしい。男は全員、外で農家をするため。手薄な都市を護る重要な役らしい。不在は2番3番と強さ順で護るとの事。
「彼は族長に相応しい強さを持ってるので処罰とは関係ないです」
「オデ、ホカニナニモデキナイ………ダカラ、ズットマモノカラマモル」
「立派なお仕事ですよ‼ 本当に!! まだ、魔王ですから………魔王としてあなたのお仕事に賛辞を贈ります。今は言葉しか贈れるものがございませんことをお許しください」
「そ、そんな!? 勿体ないお言葉を!!」
「オ、オデウレシイゾ!! ホメラレタ!!」
「ふふ、でも。私はもう魔王を辞めますけどね」
「「!?」」
彼らが驚いた顔をする。奥さんの方が聞く。
「なんででしょうか?」
「ここにいる。彼は人間の勇者でトキヤと言います」
「トキヤです。どうも」
彼が頭を下げて挨拶を行う。
「私は彼に惚れ、一生を共にしようと思います。都市ヘルカイトで」
「都市ヘルカイト………あの、鱗を譲っていただいた場所ですか? 皆が行きたがってました。ドラゴンに会えると」
「はい、ここから東にあります。まだ道がなくて大変でした」
「そうですか………あなた」
「ンン?」
「その都市へ道を作ってみませんか?」
「ソウダナマカセル」
「はい!!」
私は驚く。簡単に都市が繋がってしまうかもしれない。
「地図で場所を教えて欲しいです」
「わかりました。地図ございますか?」
店長に聞き、店の奥から一枚の地図を持ってくる。
「はい、これさぁ~」
「ありがとうございます」
貰った地図をテーブルに拡げて書き記す。
「帰ってこられた時までに作っておきましょうね」
「ソレガイイ」
「本当に鱗、ありがとうございました。きっと帰ってくる頃までに完成させます」
「う、うん。ありがとう」
「いいえ!!………それに、皆に御守り行き渡らせたいじゃないですか!!」
族長の奥さんは笑いながら夫にくっつく。私はそれを見たあとにトキヤを見ると。撫でてくれた。それから、族長の奥さんと会話して夕食ごろ別れる。私たちも夕食を済まし宿屋部屋に戻った。
*
次の日はドレイクを買いに来た。ドレイクを生産し売りに出しているトロールに相談する。
「安いのでいいのでください」
「安いのねぇ………」
「安くてそれなりの物で。屈強ならいいが……贅沢は言わない」
「うーむ。ちょっと来てくれ。選んでくれればいい」
「はーい」
販売もとい生産者のトロールについていく。馬小屋と良く似た場所であり、一頭一頭繋がれているが子供なのか、値札がついていない。その小屋の横を通って行く。
「ん? トキヤあれ」
「はん? なんだあれ?」
小屋があり、中を覗くとなんと一頭だけ繋がれていた。まるで一頭だけ隔離されているような小屋があり。その中でドレイクが寝ている。他の子よりも屈強なドレイクで少し体が大きく強そうだ。
「なんですかあれ?」
「ああ、あれねぇ…………あまりの暴れん坊で買い手もつかないし、誰も乗せようとしないしで困ってるんだ。それに恐ろしい程にあそこから動かない。餌をあげなければ脱走し他の小屋まで行って餌を貪る」
「へぇ~飼い慣らしにくいドレイクだな」
「そうなんだよ………困ってる」
トロールがなにもできないとは相当の力持ちだ。
「さぁ、お客さんあの小屋が成人したドレイクの小屋だ」
「ネフィア、行くぞ」
「まって!!」
暴れん坊のドレイクの元へ私は行く。絶対荷物もちでは便利だ。そんな気がする。
「おい!! ネフィアやめろ!! 危ないぞ‼」
「そ、そそうです!! 危ない!!」
「大丈夫、大丈夫。おーい起きろ~」
ドレイクが目を開け、私を睨む。鋭い眼光に何故か既視感があったが気にせず話しかける。トキヤとか芯がある者の目だ。
「お願いがあるの、荷物もちでいいから手伝って欲しい」
「お客さん。ドレイクに言葉は通じませんぜ?」
「………ネフィア。まぁ任せる」
「はーい。ちょっと触ってみる」
私はドレイクに触ろうとし。尻尾で手を叩き落とされる。痛い。
「うーむ。警戒心が強いですねぇ」
「ネフィア。手綱受け取れ」
「お客さん。危ないですって!!」
「大丈夫、大丈夫。俺も挑戦するから」
「…………知りませんよ?」
トキヤが手綱を檻に投げて入れる。これをはめて連れ出せばいいらしいが私は持たない。ドレイクが荒々しい鼻息と共に立ち上がり。威嚇する。
「はい、大丈夫ですよぉ~」
「グルルル」
両手に広げて近付く、すると。
バシン!!
頬に尻尾が強打する。痛いが、そのままゆっくり距離をつめる。
「中々、生きがいいね」
「グルルル……ワンワン!!」
「「えっ?」」
私は振り返り、トキヤと目線が会う。
「ネフィア、ドレイクの鳴き声ってなんだっけ?」
「どうだっけ?」
「お客さん。ドレイクの鳴き声は鳥みたいな野太い声です」
私は「むぅ~」と唸りながら近付く。トキヤも柵を乗り越えて参戦。
「かわいいです!!」
「気持ち分かる。俺も触るの手伝うよ。ブラッシングしようぜ」
「お客さん、ブラッシングですか? 道具を持ってきます!!」
「グルルル…………」
「さぁ!! ドレイク!! 諦めなさい‼ 私に目についたら最後。はなしませんよ!!」
「俺らに目をつけられたら潔く降参しないと俺は我慢強いし。こいつは魔王やぞ」
「「無茶苦茶になるぞ!!」」
「…………………くぅ」
根気にやられたドレイクは人のようにため息を吐いたのちに大人しくなった。ブラッシング後はタダで売ってくれると言うのだ。太っ腹です。
「お客さんありがとうございます」
「お金は本当にいいの?」
「いやぁ~すごく大変なドレイクで困ってたんです」
「名前は?」
「無いですね」
「ネフィア、名前つけるか?」
「うーん。ドレイクらしい名前」
「俺も思い付かないなぁ」
「ワンワン言うし、ワンちゃんでいい?」
「ワンでいいぞ」
「へへ~ワンちゃんよろしく」
ドレイクの顔に私は頬を擦り寄せる。そのあと感謝されながらその場を離れ。宿屋に戻り馬舎にワンちゃんを入れる。ご飯は雑食らしいので家畜のお肉をあげた。
そして、次の都市へ行く準備をその日に済ませたのだった。




