殺意を持つ魔王
土海竜が連れてきた場所、布を2重にしたテントが草木で何個も隠されている森の中だった。隠れ家のようなテントが立ち並ぶ場所に土海竜が降り立つ。多くの難民だろうか……人々が隠れて過ごしていた。
「お帰り、遅かったね土海竜」
降り立つ場所にはすでにマオウが立っており、元気に迎えてくれる。土海竜に咥えられている私はそのままマオウの下におとされて受け止めてもらった。
「えっと……大丈夫だった?」
「逃げるのは得意なんです。昔から……追跡はないようですね」
「追いかける兵は少ないのじゃ。賞金稼ぎのみじゃろうて。向こうは人手不足じゃ」
「アンジュ立てますか?」
「……立てる」
「ショックでしょうが……あれが今の彼女です」
私は一人で立ち、皆が見護る中で……首を振る。
「……お姉さんの事です。何かあるに決まってます」
「そうとも言えないわね」
頭の中でヴァルキュリア姉さんが囁く。全否定するように。
「私を追い出したの、それにアンジュちゃんを隠し続けたけど。夢追いが激しかった。明確な敵意がある」
「……」
私はどうも納得できない。そんな私の肩にマオウが手を置く。
「起きたばかりです。テントを用意します。休みにくいですが……」
「……」
「考えをまとめてみてはどうでしょうか?」
「……わかった」
私は頷くことしか出来なかった。そして……直接聞く決意を再度固める。
*
納得できないまま私は夢へと落ちた。明確なはっきりした明晰夢にネフィア姉さんの力を感じる。故に願えば……ネフィア姉さんに会えると私は考えた結果。
「アンジュちゃん。お久しぶり」
ネフィア姉さんに出会えた。場所はどこの場所にもない草原。太陽が照らし、風が吹く中で出会う。
「ネフィア姉さま……」
「あら? 浮かない顔をしてるわね。どうしたの?」
「……」
いつものお姉さんがそこにいる。優しい雰囲気で私に近付いて来るが私の直感が危機感を知らせジリジリと離れる。
「あら? どうしたの? 会いたかったのでしょう? 私を呼んでたじゃない?」
「ネフィア姉さん……皆が言ってる事は本当ですか?」
「私を疑うの? 変な話を……私は皆を思って……マオウに騙されたのね」
「……」
信じたい。だけど……私はあの教会の事がつっかえる。
「さぁ、そんなに警戒しない……!?」
ネフィア姉さんがその場から避ける。その場にネフィア姉さんによく似た姿の人が地面を踏みつけており、霜が走り草が凍る。その背中に見覚えがあり、私は叫ぶ。
「ヴァルキュリア姉さん!?」
「目を覚ましなさい。夢であなたを始末する気よ」
「ヴァルキュリア……そっちにつくのね」
二人の姿が鏡合わせのように向かい合う。しかし、持っている武器が違いを生む。ネフィア姉さんは剣を抜き、ヴァルキュリア姉さんは手甲を打ち鳴らす。
「そこの穴から逃げなさい。アンジュ」
私は後ろを向くと遠くに黒い穴が開いており、慌ててその穴へ向けて走り出す。
「アンジュ待ちなさい!!」
「ネフィア……相手は私よ!!」
「くっ!? 溶かし尽くしてやろう……雪女!!」
「うるさい。この熱女」
私の背後で激しい金属音と共に魔力のぶつかり合いを感じたまま。黒い穴に飛び込み……そしてテントの中で目覚める。かかない筈の汗とともに。




