魔王の計画
「ここに降りましょう。アンジュちゃん」
「お姉さん? どうしてここに降りるんですか?」
「もちろん理由があってよ。ウィンちゃん出て来て」
ネフィア以下、3人と2匹は魔王が住む城の前までやってくる。城下町などなく、質素な城に対し城壁。兵士などが多く配置され物々しい空気を醸し出す場所となっていた。そんな場所を遠くから見れる場所で小鳥が小枝に止まるように降り、身を隠した。ウィンディーネが小瓶から体を出す。ネフィアは鞄を置き地面に地図を広げる。
「夜まで待とうと思います。正面からあの軍を突破するのは骨が折れます。忍び込むのも無理です。この土地には多くの呪文が張り巡らされてます。空も同じように魔王が結界を張ってるそうです。完全に手の内を見られているような防御方法です」
地面に地図に似た地図を作り、ネフィアはそれに指で情報を加えていく。
「飛んで四周確認したけど、兵士は均等に配分されてたわね」
「はい、そうですね」
「ネフィア姉さんに何か手が?」
「もちろん……皆でこの正面の門から突っ込みます」
「「……」」
ウィンディーネとアンジュが嫌な顔をする。正面から戦いたくないと言う気持ちを表に出す。
「仕方ないでしょ。向こうは立ち向かうつもりなんだから。強い者を欲してるのよ」
「……その先で魔王と戦わないといけないんですよね」
「どうでしょうね。向こうの意思は出会うのが目的みたいな物です。まぁ、何が目的なのかを聞けばいいんですけどね」
「ネフィア姉さん、会えばわかる?」
「……さぁ、わからないわそこまで。それよりも、魔法を強く制限する術式が張り巡らせてあり。魔法での遠隔攻撃は無理ね。白兵戦がメインになる」
「ネフィアさん、白兵戦ってあの兵隊全部倒すんですか?」
「あれは全部、ネクロマンサーの人形。どこまで強いかわからないわ。ただ、隠れながらでも……バラバラでとにかく門を目指しましょ。門を誰かがぶち抜くから、そこを抜けること」
「別れるんですか?」
「そう、別れる。1ヶ所を集中して狙い、3人で別れる事で3分割されるでしょう。他の場所からの増援がくる前に電撃戦をします。そして……その行動を夜中にします」
「……夜中ですか? ネフィアさん」
「夜中です」
「姉さんどうして?」
「夜中と言うのは視界も悪く。大部隊での統制は非常に厳しく。訓練を要してなんとか運用が出来る非常に難しい時間帯です。劣勢を覆せる時間でもありますがリスクも高いです」
「なら……尚更難しいのでは? ネフィアさん」
「3人で統制も糞もないでしょう。それに二人ともヴァルキュリアに夜中の戦いを仕込まれてるでしょ。視界が制限される中での戦いを」
ネフィアは地図に一方向の矢印を描き、言葉を締めくくる。
「夜中の戦い。私が囮になれる絶好の機会です。目立ちますからね。扉まで競争です。質問は?」
「「なし!!」」
「よろしい。ならばご飯にして休みましょう。決行は深夜です」
反応した二人に気を良くしたネフィアはそのまま鞄から城の前にある最後の町で仕込んだホットサンドを布から取り出し、二人に手渡す。ポットに紅茶の葉を入れて水を用意して沸かす。
「夜中まで万全で行きましょう。仮眠もすればいいと思います。二人とも」
「「はい!!」」
二人はサンドイッチを頬張り、アンジュは千切ってペットに与える。深夜までの時間、英気を養う間。ネフィアはこれが最後の戦いにならないと心のどこかで感じながら空を仰ぐ。城で待っているだろう彼を思い出しながら。
*
「来ましたね。ネクロマンサー」
「マオウ……」
一人の幼女の部屋にマオウが現れ、彼女に対して報告する。ぬいぐるみが集まった部屋に大きい熊のぬいぐるみが幼女を抱き締めており、鋭い作り物の眼光をマオウに向ける。
「私の部屋に勝手に入っちゃだめ……ぬいぐるみ動いて襲っちゃう」
「その時はその時です。今、客人の口から近くにいると報告が上がりました。不思議な縁ですね。客人とあの異世界の魔王さんは」
「……客人と仲良くしてる」
「すいません。中々、物腰柔らかく。いい方なんです」
「……マオウは殺されるの待つの?」
「……それが計画ですから」
「私は嫌だよ。この世界に来て……助けてくれて……毎日楽しかった」
「……それはよかった。私も不労で色々と楽できました」
「私は負けない」
熊から少女は降りてマオウに抱きつく。
「負けない……」
そんな幼女にマオウは頭を撫でる。
「……体が大きくならないのは不便でしょう」
「死んでるので。もう大きくなれないの」
「すいません。では、私は庭で待たせてもらいます」
マオウはそのまま、彼女から離れ部屋を出る。残されたネクロマンサーの少女は顔を外に向け、兵士に命令を下す。
「恩師を殺させない……絶対に」
自身の思うがままに。




