異世界の魔王と勇者
ネフィアとトキヤはひとしきりに抱きつき、確かめ合った後にベンチに座る。刀をベンチに置き、ネフィアはトキヤの足に手を置く。
「トキヤはいつからこっちへ?」
置いた手をそのままグイグイとネフィアは詰め寄る。
「まぁ、まて……説明するから。来たのは数日も前だ。英魔国内の偉い魔法使いや学者がこぞって研究した結果。一人だけ寄越す事ができたんだ。そして……その一人に俺が適任と選ばれて迎えに来た。帰る術は一応術式を脳ミソに入れてある。禁術になるからな」
「なるほどです。でっ、すぐに帰らないの?」
「残念だが。こっちの魔王に恩があり、魔王の手を貸すことになった。その前金にこの刀を貰ったよ。『童子切り』と言う名刀らしい。だから、依頼を受けてる間は帰れないんだ」
「そうなんだ……英魔の皆は元気?」
「元気だな。お前が居ない事を公表しているし、異世界がある事だけ伏せているな。特殊事案として説明すると……まぁ皆が『そうだろうねぇ』と反応する。トラブルメーカーであった事がよかった。心配はするが平和なもんだ。反乱者でると思ったが拍子抜けたよ」
「そっか……ああ。でもトキヤが来るならそうかもね。なーんもないんだ。よかったよかった」
「気にしてたのか?」
「もちろん。9人全員が私の縁で集まってる。居なくなれば変わると思ったよ」
「その縁はもう9人全員が結んでいる。杞憂だな」
「杞憂だったね。英魔は本当魔族?」
「血の気は鳴りを潜め。ただただ戦後や色んな事に挑戦を始めてる。変わったさ」
「……隠居する?」
「ダメだ。連れ戻しに来いと言われてる。やっぱり女王がほしい寂しがり屋が多いんだ」
「ふふ、なら……帰れるように頑張らないとね。トキヤ……私も今……大切な部分がある」
「わかってる。女神だろ……この世界のマオウが待っている」
「ええ、送り届けなくてはいけない」
「……ネフィア。マオウはただ待つ。四天王の二人に生まれ変わったもう一人を合わせて3人が防衛線を引いている。わかるか? 何も指示せず黙って待ち、女神を試している」
「激戦があるんですね……」
「それも一人は死霊術士。兵隊は多いぞ」
「それを3人で乗り越えろと言うのですか?」
「もちろん、ネフィア。おれはマオウの元で待つ。お前が居れば安心だろ」
「……重たいお守りですこと」
「仕方ない。巻き込まれたんだ。関わったんだから責任はもとう」
ネフィアとトキヤは見つめ合い。そして……ゆっくりと顔を近づける。
「……秘密にしとかないといけないね」
「ああ、口を滑らせるな」
「口を塞いでください……あなたの方法で」
「もちろん、俺しか出来ない方法でな」
二人は何度目か数えるのを止めた唇との触れ合いを深く深く行い。そして……トキヤはそのまま刀を持って離れる。
「あーあ、私はなんて……トキヤ本位なんでしょうね。ごめんなさい、アンジュちゃん。これが『私』なんですよ」
ネフィアはそう言い。唇に触れる。熱い熱い名残をそのままに。教会の天井を見上げるのだった。




