穏やかなで平和な船旅
「暇です。船長」
「船長さん、暇です」
「あぁ、客人。我慢しておくれや」
切り抜けて数日後、最初は海は広いと喜んでいたウィンディーネとアンジュは甲板の上で青空を眺めて愚痴をこぼした。荷物は最小限であり、夜は船員とトランプでも出来るが昼間は多くの船員が仕事に明け暮れ構って貰えず暇なのである。船長に何かないかと近づく二人に船長は頭をかく。なお、追手は全て吹き飛ばし、穏やかな海域を選んで進んでいるため刺激が足りないのだ。
「ああ、晩飯でも釣るか?」
「「釣る?」」
「あんたら、ネフィアちゅう美人の仲間が竿を持ってるぞ。行ってみるとええ」
「ネフィアお姉ちゃんが?」
「そういえば朝からいませんでしたね」
二人は船長に言われ、甲板の後ろで釣りをしてるネフィアを見つけて近付いた。糸を流して釣りをするネフィアは竿先をずっと見てタイミングを計っている。その肩に小さな火のように赤い鳥が留まっており、仲良く様子を見ていた。周りは何故か血なまぐさい。
「あっ……ネフィアお姉ちゃん!!」
「ネフィアさん……釣れますか?」
「……ごめんなさい。今はネフィアさんはこっちの小鳥でヴァルキュリアです」
「えっ? ヴァルキュリアのお姉ちゃんが釣りをしてる?」
「はい。そこの垂らしてるの今日の釣果です」
指差す先を見ると綱で吊り、海に泳がされてる魚がおり、赤い筋が魚から出ていた。
「血が出てる……」
「血抜きです。甲板が血だらけなのはそのせいですよ。血抜きと言って美味しい状態を長く保つことや美味しくするための方法です」
「「へぇ~」」
物知りだなと二人は感心する。
(あっ竿が動いた。釣れた)
「来ましたね!! アタリ……ある!!」
ヴァルキュリアが太い棒のような竿をしならさせて一気に引っ張り太い糸の鉄製のリールを巻く。大男でも苦労する物をいとも簡単に巻き取っていき、竿を魚影が見える程度の所で固定する。そして、彼女は空いた両手で氷の槍を生み出した。
「アイスランス!!」
そのままその生み出した槍を投げ、魚影の尻尾に当たり氷づけとなり身動きが鈍くなった所を竿をもう一度取り引き上げる。大きな大きな魚に大針が口に食い込んでおり逃げることができない。引き上げるとビチビチ暴れるが氷漬けにし動きを制限させた。一連の手際にアンジュとウィンディーネは黙って見て感心する。
「凄いです!? 海の中にこんな大きいのが……」
「これが生き物なんですねぇ~大きい」
「これでも小さいですよ。大きいのは船と同じぐらい大きいです。世界はもっと大きい生き物を隠してます」
ヴァルキュリアはそのまま新たな小さな氷の槍を生み出し、そして……
「えっと、この魚の脳天はここですね。では!!」
ズボォ!! ビチビチビチビチビチビチ!! ビチチチチチ!!
魚は槍を突き入れられた瞬間に氷を壊すほど激しく暴れ次第に反り続けて固まり……だらしなく動かなくなる。その光景にウィンディーネとアンジュが怖くなって抱き締めあう。目に見える痛さを訴え絶命した魚の姿に何故かドキドキする二人にヴァルキュリアは優しく微笑んだ。
「おけ、一思いにやれました。あとは……」
ヴァルキュリアはナイフを取り出し、エラを切って血を出したあと。金属の針金をヴァルキュリアは手に取り魚の目の上、ここだと言う場所に突き刺す。すると……
ビチビチ!! ビチチチ!! ピクピク!!
「うわっ!? 動いた!? なに!? ゾンビ!?」
「お……う、生きてる。生きてます!?」
「いいえ、二人とも。死んでます。神経に触れたので反応してるだけですね」
「そ、そうなんだ……お姉ちゃん……なんか怖い。痛そう」
「痛いでしょうね。神経締めの前に脳天壊してるので痛みはもう感じないでしょうけど」
手際よく魚のエラを切り取り、綱にくくりつけて海水につけて血抜きを行う。船に引っ張られるように血抜きが行われる。
「……二人ともどうしたのですか?」
「ヴァルキュリアお姉ちゃん……ちょっと」
「ええ、ちょっと」
「これが生きる事です。手を合わせるのはもちろんわかりますね」
アンジュは申し訳ない気持ちで後悔をする。今までは見よう見まねで手を合わせていたのだ。だが、目の前で食べ物となる魚を生で見て少し考えが変わる。
「それに、勇者とか倒してます。生きるために我々は他の命を頂いてい生きてます。その感情を大切にしてくださいね?」
「「……はい」」
「では、最初の一匹を捌きます。お昼はお魚をいただきましょう。ネフィアさん、後はお任せします」
ヴァルキュリアの肩に火の鳥が消え失せ、反対の方に氷の鳥が魔力から形作られる。切り替えが終わった事を二人はわかり、そのままネフィアは一匹目の魚を引き上げて調理場まで運ぶのだった。




