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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
後日談~神を倒し、魔族統一を成した夢魔であり女体化の最強最悪トラブルメーカーの英魔族の魔王様。何故か世界を救う勇者兼白翼の天使と勘違いされて異世界転移してしまう……
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雨宿り先のダンゴムシ~前編~

 空を飛び旅をするのは非常に早く目的地につきやすい。だが、それでも天気に左右される。特に雷雨は空を飛ぶものには危ない現象なのだ。


ゴロゴロ、ピカッ!!


 遠くで大きな大きな積乱雲が空を埋め、大きな音と光を見せつけてくる。それも避けて通るには無理なほど大きく発達した雷雨は私たちに飛行を断念させるには十分だった。


「今日はもう野宿しましょう。雨風しのげそうな所ありますかね?」


 ネフィアお姉ちゃんの提案に私は近付いて聞いてみる。


「山肌とか?」


「アンジュちゃん。大雨で山は崩れる場合があるので……やっぱり岩に穴を開けましょう」


「岩、岩……ないですね」


 周りを見渡しても何も見つからない。そんな中で、私の服の下で胸にくっつきモゾモゾとする土海ちゃんが声を発した。


(近くにいいものがある。あそこだ)


「あそこ? あの大きい木?」


(行ってみるといい)


 そう言われ、ネフィアお姉ちゃんと一緒に木々の間を降り立つ。木々に明かりを全て遮られた空間の下で薄暗い葉っぱの絨毯に大きな大きな黒い塊が木にのめり込んでいた。大きい大きいそれは何かの脱け殻なのがわかる。そしてそこは一際大きな大きな木が生えており、巨木と言うにはもっと大きく。なんとも表現出来ないほど大きかった。


「なんだろう。ダンゴムシの脱け殻? 世界樹みたいに大きい……近付いて初めてわかる大きさね」


「そうだよね。お姉ちゃんと同じ意見。土海ちゃんこれ土海ちゃんの仲間の脱け殻?」


(そうだ。そして……こやつはここで木になった)


「木に?」


(そうだ。我々は誰よりも大きくなると食べられなくなる。子孫を残した後は気持ちのいい場所で動かなくなり。気付けば太陽を目指す木となり、また我々の餌となる葉を落とす)


「……もしかして。これダンゴムシだったの?」


 ネフィアお姉ちゃんが大きい木を見上げながら瓶の蓋を取り、ウィンディーネを解放する。3人で木を眺めた。清らかな空気が流れ、どこか神聖な雰囲気を感じた。


(木の麓に行くがよい。脱け殻がちょうど傘になっている)


 土海ちゃんの言うとおり行くと本当に傘となって雨がしのげそうな場所があり。太い根っこが大地を掴んでいた。その根っこから上がり、改めて巨木の大きさを知る。


「ちょうどいいですね、ここ。アンジュちゃん、ウィンディーネちゃん。ここで野宿しましょ」


「「はい!!」」


 私たちはそのまま脱け殻の傘の下で干し米の準備をする。ネフィア姉ちゃんは魔法で灯し、土海ちゃんはそのまま根っこを上がって行き。途中止まり何か語っているのだろうかそのまま動かなくなった。そして……根っこが少し動きだし、驚くなかで平らになる。


(そこで寝るとよい。客人よ……)


 土海ちゃんの口調と違う囁き声が聞こえた気がして周りを見る。土海ちゃんはそのまま私の頭に落ちてきて着地した。


「アンジュちゃん。おかゆできたよ」


「は、はーい。土海ちゃん喋った?」


(いいや……一言も語りかけてない)


 気のせいだったのだろうか。何か、優しい声が聞こえた気がしたのにもう聞こえない。


「……」


 もしかしたら、この木が語りかけてくれたのかも知れないと思い私は静かに上を見上げたのだった。








ザーザー


 大きな雨音が脱け殻の傘にあたり、バシャバシャと流れ落ちる。滝のように流れ落ちるが一段上に盛り上がって登場した根っこのお陰で濡れずにすんでいた。私とウィンはネフィアお姉ちゃんの羽毛に包まれて雨を眺めつづける。


「大雨ですね。お姉ちゃん」


「大雨ですね。アンジュちゃん」


「すぅ……すぅ……」


 ウィンは既に眠っており。私とお姉ちゃんだけずっと雨音を聞いていた。


「お姉ちゃん。雨音落ち着きますね」


「落ち着きますね。憎たらしいですけど」


「憎たらしい?」


「洗濯物が干せないの。雨音を楽しむ時代はもう失ってしまった」


「ふふ、所帯染みてるぅ」


「いや。結婚してますからね? お家の家事はやってるの知ってるでしょ?」


「知ってる。下着洗濯してくれてるもん」


「……家事教えないといけませんね。そういえば」


「えっ……遠慮します」


「絶対必要なりますよ? 女の子なら」


「男に任せます」


「ああ、専業主夫ね」


 正直、必要になるイメージがない。なぜなら……


「う~ん、全て終わったら……私はまた寝るのかもしれません」


「そういえば寝てたと言ってましたね。寝すぎて全て忘れちゃったのかわいいですね」


「そうですねぇかわいいでしょ!!」


「つねってい~い?」


「だ~め~」


 雨音の中で私はネフィアお姉ちゃんの腕の中でうずくまる。話をしながらゆっくりゆっくりと眠気がやって来る。仄かな灯りだけをネフィアお姉ちゃんは用意し、暖かい羽毛で私をくるんでくれた。


「……そろそろ眠りましょう」


「うん……」


 目を閉じると雨音だけがよく聞こえ……ゆっくりとそれも遠ざかり、知らぬうちに私は夢と堕ちる。そして何故か草原にいる夢をみるのだった。

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