魔王の聖剣
私たちは鍛冶屋へ立ち寄ったネフィア姉ちゃんについていく。最近、何事もネフィア姉ちゃんを中心に物事が進んでいく気がしていた。それにヴァルキュリア姉ちゃんは訓練の先生でネフィア姉ちゃんは女神の手本の先生みたいな所があり、女性とは思えぬほどに逞しく、パーティーのリーダーみたいな感じですぐに判断をしてくれる。何か色々と考えているのだ。
だからこそ『武器が必要』と言っていたのだが、買ったのは武器ではなく。鉄の塊を姉さんは買い取った。理由があるはずだと私は思い静かにその様子を見ており。その大きい塊を台車に乗せて郊外へと歩きだした。その大きな鉄塊を見ながら私は質問する。何度みてもただの鉄であり武器ではない。
「ネフィア姉ちゃん、これなに? 鉄だよね。ただの」
「そうです、鋼です。それも上質な物を少し割高で買いました。まぁ、これを見ると……製鉄技術は並みですね。普通の感じです」
姉さんの国はもっと上質な鋼があるのだろうか?
「ネフィア姉さん。これだけ買って不思議がられてましたね。泉に落としますか?」
ウィンディーネの提案に姉さんは首を振った。
「そんなもったいないことしない。まぁ不思議に思われるのは仕方なくて……私に作る技術もないと思われてますから」
「でっ、結局。何をするんですか? こんな都市郊外にまでこれを持って来させて」
そう、鉄の塊をここまで持って来てもらったのだ。わざわざ、余計に不思議に思っただろう。ネフィア姉ちゃんはこれを儀式といい。余計な事を聞くなと突き返した。賃金は多いから文句はないようで、運び終わったらすぐ帰っていった。関わらないように逃げるように。
「では、創るよ。あなたの剣を……今、ここで」
「作る?」
「創る」
姉ちゃんから白い翼が生え、大きな大きな炎が舞う。それが鳥の形を作り、鉄に絡み付く。鉄は赤く融解し、ドロドロとなったあとに火鳥の羽根に包まれ、赤い赤い球体となり熱を発する。そのまま火鳥が大きくなり、炎が飲み込むように鉄を包んだ。熱された鉄が溶鉄へと変貌し炎の球体に飲まれたようになる。
「そろそろいいかしらね」
その、球体にネフィア姉ちゃんは右手を突っ込んだ。腕が焦げることなく、ゆっくりとなにかを掴み引き抜いていく。
最初は鍔が見え、そして大きな大きな剣身が現れた。炎の中からそれを大きく引き抜き。右手の炎がまとわりついている大剣を振り払って炎の球とまとわりついていた炎を消し飛ばす。生み出された剣は私の身長並みに大きく長い。刀身は銀白色の輝きを持ち、鍛冶屋からいただいた木の握り部分が嵌め込まれ、トントンとネフィア姉ちゃんが剣を形を作る。
私たちはそれをただただ静かに見守り。用意した布をその剣に巻き鞘の変わりとしてゆっくりとネフィア姉ちゃんは私の前にやってくる。
「出来た。これ、あなたが夢で触れた剣に近いと思う。うまく出来たかわからないけど」
姉さんは大きな剣を私に差し出し、私はそれを両手で受け取りズッシリした重みを感じながらネフィア姉ちゃんを驚いた表情で見つめた。
「すごい……夢で使ってた剣です」
そう、しっくりくる重さだった。柄は手に吸い付くほどで……まるで今まで一緒にいたような感触だった。
「鍛冶屋の真似事をした夢で見た物の贋作ですけどね。いつかあなた自身が本物を創造出来る日が来ると思う。それまでの繋ぎとして使いなさい。鉄はこの世界にあった物で一から作るよりも遥かに手間をかけてないし。世界から邪魔者とされないと思う」
「ありがとうございます」
感謝の言葉を口にし……手が震えた。
「うん、練習してよかった」
「練習?」
「そ、私も出来ないかなと思って何度も手を焦がして、何度も腕を吹き飛ばしながら夢で鍛練したんだよ」
熾烈な練習の成果だったのかと私は剣を見る。すんなり作って見せたのに……簡単に作ったかと思えば実は私のために何度も挑戦してくれた。その、行為が胸に暖かく染みていき、余計に嬉しくなり顔がにやけてしまう。
「えへへへ」
「いきましょう。明日に備えてもう休みます。頑張って勝ちましょう!!」
「はい!!」
強く剣を抱きしめて返事を返した。
「いいなぁ、アンジュに剣……」
「ウィンディーネちゃんは弓とか使うでしょ」
「そうですけど~」
「はぁ、じゃぁ。何が欲しいですか?」
「えっいいんですか!?」
ウィンディーネがワクワクした表情で姉ちゃんを見て姉ちゃんはうなずいた。
「簡単な物なら。金属余りましたし」
確かにまだ鉄は剣一本分は余っていた。
「じゃぁ……金属バットお願いします!!」
「「……」」
「素振りの練習したいんです!!」
「わかった……その、意外ですね」
「その、ちょっと運動するの好きになちゃって~」
ウィンディーネが照れながら頭を掻き、ネフィア姉ちゃんはクスクスお上品に笑ったあとに余った金属で棍棒のようなバットを作りそれを手渡した。それをウィンディーネは構えて『おおっ』と目を輝かしていた。ウィンディーネはグリップに布を巻きつけ滑り止めをつける。
「うぁあああ!! すごいですね!! 重たい!!」
喜ぶウィンディーネにその同じ気持ちなのだと感じた。
「凄く簡単に作れたね。じゃぁ帰ろっか」
「「はい!!」」
私たちは思いがけない贈り物に宿屋で私は剣の手入れにいそしみ。ウィンディーネは素振りを続けるほどに明日の事をすっかり忘れてしまったのだった。なお、ヴァルキュリア姉さんに二人で自慢したほどに。
*
早朝、軽快な素振り音と共に目が覚める。窓の外を覗くとウィンちゃんが素振りを行っていた。同じように大剣の素振りをするアンジュちゃんにそんなに嬉しかったのかと感じて朝食食べにいきましょうと呼びに外へ私は出る。
ブォンブォンブォン!!
早くから起きて、素振りをする二人を見ると無心に素振りを行い。汗を流していた。キラキラと朝日に輝く汗に……水浴びもしなくちゃねとも思う。ヴァルキュリアは夢でお疲れか黙りであるが。
「おはよう」
「おはよう!!」
「おはようございます」
元気のいい挨拶に布を渡すと彼女らはそれで汗を拭く。生き物のように水が出るのは何かと不思議だった。女神なのに生きているようなそんな感じである。
「そんなに素振りして……四天王の前に疲れますよ?」
「へぅ? 四天王……あっ!?」
「そうですぅ。四天王ですぅ」
「忘れたの? 今日よ」
「はは、準備運動。よねウィンディーネ」
「ええ!! 準備運動!!」
「士気も十分ねぇ……水浴びして朝食を食べていきましょう」
私はまぁかわいいと思い。これだけ喜んでくれると努力した甲斐があるものだと考える。
「はい」
「うん」
「まぁ、私が何とかするから。ウィンちゃんもアンジュちゃんも危なくなったら逃げていいからね」
まぁ、なんとかしなくちゃいけない。私が……
「そんな事しません。女神ですから」
「そうそう、女神ですから」
「魔王は見捨てていいのよ?」
「魔王? ウィンディーネ。変な事言ってるね」
「そうですね魔王ってなんでしょうか?」
「……ふぅ。魔王は魔王です。それは譲らない。さぁさぁ、早く浴びてきなさい」
「「はーい」」
本当に子供ぽいと思うがまぁ、私も人のこと言えないなと思う。
「ウィンディーネ、朝食なに食べる?」
「卵焼きにする。アンジュは?」
「同じものにする!!」
仲良く二人で朝食の話をしながら水浴びしに行くのを見届け、私は剣を抜く。そしてその剣を見つめた。名もない炎の名剣をただただ見続けて思い出を呼び起こす。
「……そうね。私も貰った物をずっと使ってるもんね。大切に大切に。勇者である彼との想い出と共に」
古い古い、私の懐かしい思い出。勇者が私のプレゼントで多くの武具を用意し。その中で選んだこの剣を私はいまだに使い続ける。たとえ、新しい剣や新しい武器のが強いとしても。私は思い出の詰まったこの剣を愛用する。
「ああああああ、冷たい!? ウィンディーネ冷たい!!」
「アンジュが熱いだけ。気持ちいいじゃん」
「……もう。風呂場から外に声が漏れてるじゃない」
私は静かにしなさいと注意しに剣を納めて叱りにいくのだった。二人の幼くない女神に対して……




