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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1章~始まりは一人の狂人の連れ去り~
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刀身研磨..


 次の夢の記憶の場所は決闘場、騎士同士の訓練場だった。円形の訓練場であり、非常に広く、黒騎士団の重役が並んでいる。トキヤが試験を受けた日と同じ面々である。期待していたのだろう。


 そして、反対側に白騎士ランスロットが見に来てくれていた。「恥ずかしい所は見せられない」とトキヤが思う。そして向き直った相手は3番隊の同僚。剣と盾を持つオーソドックスの剣士だ。非常に堅牢な戦い方をする。名前は誰だったかをトキヤは忘れている。いや、覚えないようにしていた。


「今から、再試験を始める。先に一本取った方の勝ちとする」


 3番隊長の槍使いが声を出し、再試験が始まった。「別に憧れた黒騎士に入り続けようと思わない」とトキヤの心情が変わっている。強くなるためにはここを越えないといけない。もう、夢がすり変わっていた。


「こんにちは。魔法使いトキヤ殿。トラビスと申します。お戯れはこれで終わりです」


 トキヤが思い出した。嫌な感情が混じるので思い出したくない名前らしい。


「ああ、終わりですね。トキヤさん」


「始め!!」


 私は「がんばれーっ」と叫ぶ。過去の記憶なのを忘れて応援をした。


 声と共に背中のクレイモアを構えず。相手の出方を見る。木の剣を振り上げ、切りかかるのを半歩で避けた。剣撃を眺めて、トキヤは気付かされる。「友の剣の方が鋭い」と、避けることが出来た結果。トキヤに余裕が生まれる。


「避けてばっかり。背中の剣を抜かないのか?」


「今から、抜く」


 距離をとって背中のクレイモアを抜き、そして力一杯投げつけた。


「えっ?」


 盾でクレイモアを防ごうとし、身構え。クレイモアの木剣を弾く。その後、トキヤが右手に盾らしいので左に廻り、ナイフを腰から抜き首に触れる。


「このやろう‼」


「ぐへ!?」


 トキヤはそのまま殴られ吹き飛ばされる。剣を握った拳で殴られたのだ。体が少し浮き少し耐える。


 魔法使いだが訓練で殴られ続けたため痛みに耐性が出来た。踏ん張っていた。そこに盾で殴りつけ、つい膝をついてしまい、肩に剣を乗せられる。


「これで1本だ!! 自分の武器を投げるなんて奇抜な戦法を!!」


「………ふむ。3番隊長」


「ええ、わかりました」


 黒騎士団長が訓練所を後にし、3番隊長がトキヤに近付いた。


「トキヤ君を3番隊に配属が決まった。これからよろしく。そして早く鎧を着ろ。今日から剣士だ」


「隊長!? こいつは武器を捨てたんですよ!!」


「ナイフの剣先は首に届いていた。それに剣を避けられていただろう? 十分だ」


「くっ………」


 気付いてたのだろう。幹部の目を誤魔化せたわけじゃなかった。そう、負けている。


「けっ………魔法使い風情が」


「トキヤ!! 素晴らしいじゃないか!!」


 愚痴は親友の声にかきけされる。


「ランスロット!! ありがとう!! やったぜ!!」


 ランスロットが見ていたところから飛び降りてトキヤの元に走り、彼に手を伸ばした。本当に嬉しそうである。


「…………白騎士のランスロット君かね」


「はい!! 白騎士団所属ランスロットです!!」


「君が彼の友人かい?」


「はい!! 僕の友人です!!」


 自信満々に3番隊長と応答するランスさんは可愛いかった。


「友人………恥ずかしいなぁ~なんか」


「わかった。では、最初の任務は白騎士団の監視をトキヤ君に命じよう。頼んだよ」


「隊長、了解しました」


 一人、蚊帳の外に追いやられたトラビスが少し。私は可哀想に思った。トキヤはそのままトントン拍子に成長していった。






 記憶の中の行きつけの酒場。私がトキヤと一度も行ったことの無い酒場。友人のランスロットと祝杯を上げている。


「僕が思った通り。君はしっかり戦えたね」


「お前の『ナイフを持て』て言うのが効いたね。これからはゆっくり。大きい剣に馴れていくよ」


「頑張れる。君なら出来ると信じている。何度も何度も立ち上がってきた精神は騎士道に通じる物だったよ」


「やったぜ!! 騎士だぁ!!」


「しかし、いいのかい? 魔法使いを辞めて」


「ああ、その事なんだけど。お前だけには理由を話そうと思ってる。絶対誰にも話さないでくれると約束してほしい」


「…………わかったよ。騎士道に誓って。でも先ずは僕の話を聞いて貰おう。絶対の秘密として、お願いだ」


「ああ、わかった。騎士道に誓って」


 二人で仲良く笑い合う。全く違う二人なのだが。全く違うから気が合うのだろう。


「では僕の秘密は聖剣エクスカリバーを持っている事」


「聖剣エクスカリバー?」


「知らないのかい?」


「知らない」


「聖剣エクスカリバーとは。王宮で王しか持てない剣と言われていた物だ。宝剣だ」


「聖剣?」


「王宮に刺さっていたのを抜いたから、剣を持たせて貰っている。そう、後継者だ」


 話を聞くと複雑だった。後継者争いの日々。剣を抜ける者はまだランスと義姉の姫だけらしい。ランスの家は血縁の名家だが。直系ではない。故に荒れているとのこと。


「最初は偽物を渡したのかと思ったけど僕はわかったよ。本物のエクスカリバーだって。理由はわからない。だけど、聖剣を厄介に思っている者もいるらしい」


「へ~」


「さぁ次は君だ」


「はーい」


 トキヤが胸のロケットペンダントを机に置く。


「さぁどうぞ」


「見てもいいんだね」


「ああ」


 中身をランスロットは確認をした。


「綺麗な女性だね」


「ああ、綺麗な女性だ」


 記憶を見てる私が照れてしまう。褒められてる気がして恥ずかしい。


「彼女はどこの姫様かな?」


「魔王」


「!?」


「彼女は魔王になる。すぐ暗殺されて辞めるだろうけど。簒奪が起きる」


「魔王ですか!?」


「占い師に未来を占って貰ったんだ。出会う女性の一人で見たんだ。しかし彼女は殺される。政略で殺される。それまでに護れる力が欲しい」


「君は帝国の敵になると言うんだね」


「彼女を護るためなら何だってする。それだけだ。惚れた弱味だよ」


「しかし、それは占いです。世迷い事でしょう?」


「いいや、俺にとっては全てだ。夢を見た理由を知りたい」


 ランスロットが想像以上の話で困惑する。


「君は諦めない。立ち上がって行く」


「ああ、もちろん。彼女のために」


「わかった。僕だけの秘密にしよう。変人だね君は」


「変人だぞ。俺は」


 ランスロットがトキヤの親友になった日の記憶だった。







 それから、月日がたち。トキヤは貪欲に強さを求めた。毎日欠かさず剣を振る。毎日欠かさず魔法を修練する。修練する中で才が開いていく。気付けばクレイモアを難なく振り回し、休日は冒険者ギルドでランスロットと魔物を狩りに出る日々が彼を強くする。


 目的が高い。それしか出来ない事を信じて何度も何度もやり続けた。


 そして、ある日。3番隊での仕事振りも評価された時期に彼は休暇を執務室にいる騎士団長に頼む。


「黒騎士団長!! アクアマリンの鍛冶屋が凄いと聞き行きたいので休暇を下さい」


「ノックして入れと何度言えばわかる!!」


「1番隊長はノックしてませんよね?」


「たまにするがな。でっ!! アクアマリンに旅行へ行きたいと言うのか?」


「ええ」


「………アクアマリン。お前はあの噂を?」


「ああ、勿論。戦争でしょう」


 帝国が領土拡大を目指す。魔国ではない東へ。トキヤが言い切った。すでにトキヤは黒騎士団の黒い部分をしっかりとこなして信頼を勝ち取っている。


「戦争はあると言えるのだろうか?」


「それが一番わかっているのは黒騎士団長様でしょう。そうですね。私はあると思われる風向きです」


「…………地図は用意した。何人いる?」


「都市偵察でしたら。数人で一人づつ分けて分散させましょう」


「帰ってこない可能性は?」


「黒騎士団員にそんな愚かな弱い者はいません。私は先に遊んできます。冒険者なので、便利ですよ。冒険者は」


「わかった。休暇を出そう。冒険者として登録が役に立つ。ああ、それと………お前は最近、禁術書を漁っていると聞いた。女難の相もあると」


「占い師から本を買っているだけです」


「忠告する。禁術書に喰われる。あれはやめとけ」


「わかりました。実はもう危ないと思いやめたんです」


「そうか、ならいい。報告期待している」


 禁術を読んでも彼は狂わなかった。そして、彼は見つける。望んだ禁術を。禁術にも手を出す。私のために強くなるために。全ての敵を倒すために。


 人間を辞める術を見つけ出してしまった。







 トキヤがアクアマリンの鍛冶屋に会ったのはこの日が初めてである。トキヤは飛び込んで頭を下げる。


「名前を伺っています。ボルボ殿、何卒。武器を作ってください」


「はん? 帰れ帰れ。忙しいんだ。剣と刀をつくらなぁいかん」


「…………ここでずっと待ちます。気は長い方なので」


「ふん。変な奴め、話を聞いてやろう。お前の求む武器はなんだ?」


「『人間』『魔物』『魔族』『ドラゴン』を倒しても折れない大きく長い剣を一本。全ての敵を屠っても戦える剣を求めます」


「!?」


 底冷えする声でトキヤは武器を頼んだ。正直に答えている。


「全部敵に!?」


「全部敵になる。生半可な武器はいらないです」


「お前………何が? そこまで?」


「護るべき女性が全ての敵から殺されるかもしれない。必要なんです」


「…………わかった。形は?」


「これです。装飾はいらないです」


 図面を渡す。見たことのある彼の背負う武器。両手剣だ。


「あーこれかぁ。簡単な作りの両手剣だな。金属は?」


「プラチナとミスリルの合金。袋で持ってきたのを玄関に置いてあります。金は?」


「作ったあと、貰おう。また2ヶ月たったら来い」


「ありがとうございます」


「ああ、一つ聞きたい。剣を持って何を為す?」


「魔王の女性を盗みだす」


 嘘ついたトキヤ。


「な………な………!? お前は正気か!?」


「正気ですよ。大真面目です。だから黙っていて下さい。あと色々作ってください。彼女は何がいいのかわかりません。プレゼント用に」


「わかった、ああわかった。剣を作ってやろう。なんかわからんが………変な奴だ」


 それから、トキヤが通い出し。彼に幾多の武器を作って貰うのだった。彼はボルボの手伝いをしながら仲を深める。


 そして作って貰った武器。今、私があのとき貰った剣を思い出す。


 こんなに古い時から私のために用意されていた剣だったのを深く深く。私の記憶に刻んだ。
































































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