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おかえりなさい旦那様


 私は女王として宣言後は部屋に籠った。何もする必要がなく、ただただ伝令が持ってくる族長の報告だけを聞いているだけの存在となる。必要な妖精紙の書類にはサインし、ただただ。怠惰を貪る存在として。


 いつしか、声を拾えば。私の部屋を鳥籠と言い、閉じ込めているなどの話もしていた。鳥籠にしては覗き穴もないし、私を監視するような衛兵はおらず。精々、一人が扉の前で立っているだけだった。


「……トキヤは今どうだろう?」


 一人で座り、一人で貰い物の将棋の駒を転がして手を動かす。婬魔……夢魔にトキヤの夢に繋げるために助力もしてもらったが繋がりはしなかった。何もしないと……寂しい寂しい気持ちが溢れてしまう。


「はぁ、今は動けない。飛んでいけるならトキヤに逢いに行きたい。でも……今は皆のために。トキヤのために動けない」


 女王がそこに居る。それだけで……ここの都市は安心を持つ。私が居るだけで効果がある。故に動けない。私の名前を使い。復興の仕事をするために。


「……はぁ。トキヤの傷は深かった。大丈夫かなぁ」


コンコン


「ん?」


「すまん、開けてくれ!!」


「!?」


 扉の叩く音の次に旦那の声が聞こえ慌てて鍵を開けて扉を開く。すると目の前に軽装の武装をしたトキヤが立っており、両手に鞄の手荷物を持っていた。両手はふさがり……そのまま部屋に入って荷物を彼は置く。


「よし、お前の下着も全部持って帰ってきたぞ。ネフィア」


「おかえりなさい……トキヤぁ!!」


「ただいま」


 私は扉に鍵をかけ直し、トキヤに飛び付き手を回す。彼の汗の匂いが鼻腔をくすぐり、本物の彼であると体が教えてくれた。


「あぁ!! 怪我は大丈夫?」


 私は慌てて距離を取る。すると、苦笑いするトキヤが首を振る。


「大丈夫。筋肉痛で痛いだけだから。まだまだ筋肉痛になるんだと驚いた」


「そっか……マッサージしよう」


「まぁまて。汗と汚れを流すからまて……」


「あっお湯作るね」


「ああ、頼む」


 そう言い、私は急いで浴室にある魔法炉を稼働させてお湯を作る。魔石は使わず自信の魔力を熱へと変換させ、そしてバルブを開き。暖まったお湯を浴室のバスタブに貯める。そのまま水を足して温度を調整したあとに浴室から出る。


「お湯出来た」


「そうか、わかった。すまんがこれ洗濯に出してくれ」


「はい、洗濯籠に入れて」


 伝えに行くと装備を脱ぎ。衣類だけになったトキヤが今度はそれを脱ぎ出す。洗濯籠を近くに用意してそれに汚れた衣類を彼は入れていく。私はその彼の背中を見続け、すり傷だらけの彼の背中にゆっくり近づく。


「いっぱい傷……あるね」


「まぁ、あるだろう。なに背中を撫でるんだ?」


 私は彼の傷をなぞる。


「……ちょっと。触ってみたいだけ」


「傷跡治すかと思った」


「嫌よ。こんな立派な傷跡なんて治せないよ。この傷跡だらけの体が好きなの……カッコいいし、触ると勇ましい日々が脳裏に焼き付けられるの。夢魔だから……触れて詠むの好きなの」


「……傷フェチ」


「……否定しない。それに……雄って思えて好き。私にない傷だからね。雄らしい」


「傷を消してるだろネフィアは?」


「だって、傷なんて体につけたくない。綺麗な体で大切に抱き締められて……今夜は……いや、なんでもない」


「ネフィア。発情してね?」


「……ちょっと時間がたったからね。ごめん……疲れてるのに。誘ってしまって」


「いや。男なんだからそれは応えてあげたい」


「ありがとうトキヤ」


 ちょっと火照った体を我慢し、彼と離れる。


「そうそう。ネフィア……エルフ族長から聞いているだろうが教えてくれ……今の状況を」


「うん。わかった……トキヤ、明日から頑張ってね。私の代わりに」


「……はぁ、多忙な日々が続くかな」


 体を流すために浴室に入る。トキヤに私は扉の前で立つ。


「生きてる間。ずっと続く……さぁ演じましょう。王様」


「王配だ。王はお前だよ」


「はい。そうですね……そうなんです。背中をお流ししますね。お勤めご苦労様」


「……ああ、そうだな」


 返事に小さく私は笑い。そして……浴室に入り体を洗うトキヤに対して背中を流した。







 結局、私も風呂に入り。一通り落ち着いた時。二人で対面に椅子に座り。真面目な雰囲気で見つめ合う。


「都市オペラハウスの被害は尋常じゃないが……復興のめどは立ち。精力的に頑張っている。ついでに壊れた壁を修復せずそのまま壊れたままの所から壁を延長。都市を大きくする事業も始まった。お金は……族長のポケットマネーらしい」


「金持ち~」


 エリック族長の演劇だけでそこまで資産を増やしてたのだろう。すごい事である。


「使って来なかったんだろうな。ただ、無一文になると言っており。それからは……募金を募るそうだ」


「募金ですか? 税金ですか?」


「ネフィア。募金も税金も一緒にすると言ったよな」


 税金と言う言葉は英魔では募金、納付金、支援金など。悪いイメージのため使われなくなりつつあった。なお、強制力は前よりも弱いようで強いと聞く。この都市にも集まってきているらしい。


「まぁ……建前でしょうね。税金廃止だけど廃止したのは言葉だけと」


「気にするな、ネフィア。政治家どもに任せるんだ。以上かな」


 ある程度、トキヤの話を聞くとなんとか都市機能は復活しつつあるらしい。胸を撫で下ろして次に私が知る話をする。同じように首都でも復興作業が始まり。都市開発も大きく動き出しているらしい。


 族長がここに地区ごとで進出しているとも聞き。多くの生活環境の事件も生まれつつある。


 ただ、私には解決に出向く事なく。報告だけであるが。


「あまり、首都で大きい事件があったけど。終息も早かったから……なんとかなるでしょ」


「人間より、強いな英魔は……復興動きも早い」


「個々が強いですからね~」


 本当に……よくやってると思う。


「でっ、クイーンは何者かはわかったのか?」


 トキヤが一番私にとって重要な事を口にする。私は言葉に出さず。用意した書面を見せる。トキヤだけには伝えておこうと思ってだ。


 受け止ったトキヤは目を細め……そして。大きいため息を吐き。紙を折り畳み。机の上の皿で燃やす。


「死ぬまで墓まで持っていこう」


「ええ、お願い。予想だけど……そうだと私は思う」


「ああ、俺もそうかもしれないと思う。だいたいわかった。じゃぁ……あとは俺らがする事もないな」


「そうですね」


 私は立ち上がり、保冷庫で冷やしていた麦酒を用意する。瓶のコルクを抜き。トキヤの前に用意したジョッキに泡が立たないように注ぐ。私は葡萄酒を用意し、ワイングラスに注ぐ。


「まだ日も明るいけど。飲むのか?」


「明るいけど。乾杯して勝利を謳歌しましょう。結局、私達二人は個人で……国をどうこう出来る力なんてないんだから。のんびりしましょ」


「本当にか? 俺は……一つ二つ都市を壊せる。それで脅したりもできる」


「私も一つ二つ壊せる。だけど……破壊するのは誰だって出来る。族長たちでも、クイーンでも。維持し護る方が難しい。国を壊すのは本当に一瞬。だけど動かすのは皆がいるから動かせる。護ろうとする人がいるから脅しも負ける場合もある」


「……」


「これからどうなるか……わからないけど。その時、その時で皆で対処しましょ」


「本当に王になったなネフィア」


「……皆が王にしたのよ。私を」


 そういい、私は葡萄酒を飲み込む。これからの事を考える。逃げずに考える時期が来たのだと考えて。


「そういえばネフィア。緊急族長女王会議を明後日に開くらしいぞ。なんか講話考えとけよ」


「えっ……まじぃ」


「まじぃ~」


「……聞いてない」


「俺が帰って来て、今日決まった」


「……はぁ……ぽけぇ~ってしたい」


「高貴さは義務を強制する。仕方ない事だ。女王会議だけだから、大分楽だろう」


「わかった。考えておく……」


 私は果たしてありがたい事を言えるのだろうか? 不安が募るのだった。









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